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「富岳NEXT」プロジェクト始動 最大10倍の実効性能
2025年1月22日 19:17
理化学研究所は、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となるフラッグシップシステムの開発・整備を開始した。開発コードネームは「富岳NEXT」(英語名:FugakuNEXT)。
「富岳NEXT」では、CPUに加えて、GPUなどの加速部導入や、電力性能を大幅に向上させた計算環境を提供。既存の富岳でのシミュレーションに対して、5~10倍以上の実効性能を達成する。また、AIの学習・推論における性能としては、世界最高水準の利用環境(実効性能50EFLOPS以上)を実現する方針。
日本の科学技術が世界をリードし、社会や産業を発展させるためには、従来のシミュレーションとAIの両者において正解最高水準の性能を達成しながら、シミュレーションとAIが連携して、科学上の仮説生成や実証を含むサイエンスを自動化・高度化する「AI for Science」を実現するための計算基盤が必要とされている。
「富岳NEXT」のシステム構成は、「AI for Science」の発展を見据えつつ、既存HPCアプリケーションで現行の5~10倍以上の実効計算性能、AI処理でゼッタ(Zetta)スケールのピーク性能を念頭に50EFLOPS以上の実行性能を実現するシステムの開発・整備を目指す。さらに、シミュレーションとAIの融合により、総合的に5~10倍の実効計算性能向上を超える数十倍のアプリケーション実行高速化を達成することを目標とする。
アプリケーションの実行性能を最優先として開発・整備する「アプリケーションファースト」を理念としながら、電力制約下でも目標を達成するために、「富岳」で培ったアプリケーションソフトウェアなどの資産を有効活用。電力効率の高いCPU部と、帯域重視の演算処理加速部を組み合わせ、高帯域かつヘテロジニアスなノードアーキテクチャを基本構成としたシステムを想定する。
また、「富岳NEXT」の運用開始直後から科学的な成果を創出していくためには、既存アプリケーションコードをあらかじめ加速部へと移植し準備を進めていく必要がある。そのため、演算処理加速部には、ユーザーが扱いやすく、ベースとなる加速部アーキテクチャが現状で広く利用可能であることを重視して、システム検討を進める。
プロジェクトの事業地については、フラッグシップシステムの運用の「端境期」がなく、適時・柔軟に入れ替えや拡張が可能で、現在、運用している「富岳」との連携や、既存設備の有効利用等の観点を踏まえながら検討する。
現在は、理研とともに基本設計を行なう民間企業(ベンダー)の選定プロセスを進めており、1月23日から意見招請を開始する。開発推進組織については、4月1日に「次世代計算基盤開発部門」をR-CCS(理化学研究所計算科学研究センター)に設置し、理研内や国内外の研究者・企業と連携してプロジェクトを推進する。