ニュース

東京臨海副都心の公道で無料の自動運転移動サービス 最高時速40km

MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)は、東京臨海副都心(有明・台場・青海地区)の公道で、自動運転技術を用いた移動サービスを1月22日から3月中旬まで提供する。「MONET」アプリを利用し、一般の人が無料で利用できる。

自動運転MaaSの社会実装を目指す取り組み。オンデマンド交通として運用されるサービスで、乗降場所は、国際展示場駅、東京テレポート駅、東京ビッグサイトおよびシティサーキット東京ベイの4カ所。それぞれの場所をつなぐ12のルートから乗りたいルートを「MONET」アプリで予約して利用する。タクシーのように貸切りではなく、複数の利用者が乗り合いで利用し、それぞれ希望する乗降場所に移動できる。

ルート概要

車両はトヨタが米国で販売するミニバン「シエナ」をベースに、自動運転技術を開発する米May Mobilityの自動運転システムを搭載。ユーザーが予約を行なうための「MONET」アプリや、自動運転車両の運行支援システム等をMONET Technologiesが開発する。運行支援システムは、将来的に複数の車両を1人のオペレーターが管理できる「マルチ遠隔監視システム」を開発し、APIとして既存の運行システムに組み込める形態で提供する予定。

トヨタが米国で販売するミニバン「シエナ」をベースとした車両

運用エリア内には、交通量の多い東京湾岸道路を含むことから、自動運転の最大速度は時速40kmに設定。公道での自動運転車両としては国内最速となり、これにより交通の激しい道路でも他の車両と極端な速度差が生まれにくくなる。

交通量の多い湾岸道路も走る
車内の様子

今回の実証実験では、自動運転レベル2での運用となることから、セイフティードライバーも乗車。要所要所でドライバーが自動運転に介入し、安全な運行を行なう。例えば、現状では合流車線や路上駐車の車両への対応は自動で行なえず、手動での対応となる。これ以外にも、危険が予想されるシーンでは適宜ドライバーが介入する。

基本的にドライバーは、ハンドルをいつでも握れる姿勢で手放し運転を行なう
ドライバーの右サイドには、自動運転のスタート操作などをするボタンを搭載

こうした課題の解決は25年度を目処に行なう予定だが、実際にドライバーが乗車しない自動運転レベル4の運行を行なうのは29年度を予定している。

また、乗車中には、車両のセンサーが捉えた周囲の状況をリアルタイムで表示。歩行者や車両が移動する様子や、車両が進む予定のルートを利用者も確認できる。情報を見える化することで、いま自動運転車両が何をしているのか理解してもらい、社会受容性を高める狙いもある。

車内のモニターには、自動運転車両が認識している情報を表示。赤い小さな四角は歩行者で、紫色の大きな四角は車両

自動運転とともに地域課題の解決へ

MONET Technologies代表取締役社長兼CEOの清水 繁氏は今回の実証実験について、「単に走らせることだけを目的にしていない。運行を行なう地域毎に課題を見つけてそれを解決するための運行を行ないながら、自動運転への地域の受容性も高めて行きたい」とし、地域の課題を解決しながらドライバーの人材不足や、高齢者の移動手段の確保なども実現していくのが狙い。将来的には、行政手続を移動車両で提供する「行政MaaS」や、移動車両で医療を提供する「医療MaaS」へも展開していく。

MONET Technologies代表取締役社長兼CEOの清水 繁氏

また、会見で挨拶した江東区の大久保朋果区長は「江東区は、東西の交通インフラとして鉄道が発達しているが、南北が弱い。今は都営バスがその役割を担っているが人材が不足している」とし、現在移動手段が不足しているエリアでのオンデマンド交通の普及へ期待を見せた。

江東区 大久保朋果区長

同じく江東区の清家 愛区長は、「港区でもバスの運転手不足など、地域交通課題がある。地域の移動手段として小型バスの運行も行なっているが、難しいところもある。特に高齢者の移動手段確保が課題で、技術革新だけでなく自動運転への受容性を高めることも重要だと考えている」などとコメントし、今後も東京都や港区、江東区らと連携しながら協力していくと語った。

江東区 清家 愛区長

会見では、May Mobilityが、独自の自動運転アルゴリズム「MPDM(Multi-Policy Decision Making)についても解説。ルールベースではなく、LiDARやレーダー、カメラなどのセンサーが収集した情報から想定される状況をシミュレートすることで車両の行動を決定するのが特徴。歩行者や他の車両などが取り合える行動をシミュレートし、一番安全な選択肢を選ぶことができる。

ディープラーニングなどによる自動運転では、学習した事象にしか対応できないが、MPDMでは、人間の運転手が行なっている判断プロセスに類似した判断が可能とし、想定外の状況にも対応しやすいことを特徴としている。また、認知に必要な計算量も少なく、低消費電力で低コストとし、新しい交通環境に対応するための追加データ量も少ないため迅速なサービス展開が可能になる。