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リクルート、給与デジタル払いを開始 「即払い」は採用に効く

リクルートは、給与支払いサービス「Air ワーク給与支払」で、1月16日から賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払)への対応を開始する。これにより、「Air ワーク 給与支払」を利用する企業の従業員は、企業が労使協定を締結すれば、スマホアプリ「エアウォレット」で給与の一部を好きなタイミングで受け取れるようになる。

賃金のデジタル払い(給与デジタル払い)は、働いた分の給与を銀行口座ではなく、キャッシュレス決済サービスなど資金移動業者のウォレットで即日受け取り可能とする仕組み。サービス展開には厚労省の指定が必要だが、リクルートと三菱UFJ銀行が共同出資するリクルートMUFGビジネス(RMB)は12月に指定を受理している。RMBの指定取得はPayPayに続き2社目となる。

即払いに対応
エアウォレット上で「COIN+」で給与受取

「Air ワーク 給与支払」における給与即払いは、決済ブランド「COIN+(コインプラス)」を組み込んだスマホアプリ「エアウォレット」で給与を受け取れる仕組み。COIN+はAirペイ加盟店や無印良品、ローソンなど40万店舗以上での決済が可能なほか、1円単位で銀行口座への出金が無料で行なえる。

また、複数の銀行口座の紐づけにも対応し、銀行間の資金移動もCOIN+上で無料で行なえるほか、営業日当日午前10時までなら当日中に銀行出金できる。エアウォレットにCOIN+で入金しておけば、銀行に預けるよりも移動しやすく、出金もかんたんな“デジタルマネー”として管理できる。

また、三菱UFJ銀行と保証委託契約を締結しており、RMBの破綻時などの緊急時もCOIN+アカウントの保有給与相当額が保証される仕組み。

今回の「即払い」サービスでは、最短10分で30万円を残高上限額とした受け取りが可能。ただし、COIN+での受取手数料として110円/回が必要。手数料を事業者と従業員のどちらが負担するかについては、導入企業が労使協定で取り決めて選択する。

リクルートの賃金デジタル払いの概要
三菱UFJダイレクトへのCOIN+組み込みも2025年春に予定

求職側で先行する即払いニーズ 採用に効くリクルートの強み

リクルートでは、業務支援サービスとして「Airビジネスツールズ」を展開している。「Airワーク 給与支払」はその中の1つで、給与の支払いに関するサービスとして23年4月から開始。ここに給与の即払い機能を搭載した形となる。

給与即払いでは、働いた分の給与をすぐに受け取れる反面、受取手数料110円などのコストも発生する。しかし、リクルートの求人サービスにおいても「日払い」は検索キーワードの上位に入っており、求職者からの給与即払いニーズは高いという。

リクルート ペイロールプロダクト部 部長 渡辺 和樹氏

また、同社の求人媒体「タウンワーク」においても、「給与即払い」を求人時に訴求すると、応募数が約19%増加。「人材採用が売上に連動する業種においては、すごく重要な数字。求人側のメリットも大きい」(リクルート ペイロールプロダクト部 部長 渡辺 和樹氏)という。また、給与即払いを導入することで継続的な就業が高まることもメリットで、従業員の満足度向上と採用力向上の双方が見込めるとする。

市場ニーズとしても、15~19歳は31%、20代は18.6%と若年層を中心に高い利用意向があり、今後デジタルマネーでの給与受取が増えていくと見込む。

現在のAirワーク給与支払い導入企業数は非公開で、今後の即払い導入目標についても公表していない。しかし、飲食業、小売業のほか、IT系のシステム企業など幅広い利用状況であり、即払いのニーズは高いとする。

即払いだと、スポットワークでの導入も想定されるが、「スポットワークはすでにその日払いが“あたりまえ”になっている。スポットワークも今後伸びるはずだが、スポットワークに馴染んだ人が、『なぜこちらの会社では即払いできないのだろう』と実感しているのが現状。サービスを広げていく機会がある」(リクルート渡辺氏)とした。

導入にあたってのハードルとなるのは、導入企業と従業員との間で結ぶ労使協定の締結。「デジタルマネーで給与を受け取る体験について、しっかり説明する仕組みを整備する必要がある」とする。エアウォレットの画面などでも仕組みの説明をわかりやすく紹介していく。

なおCOIN+での受取は、厚労省の指定では即払いに限定しており、月1払いなどは通常の銀行振込となる。「デジタル給与払いの使われ方やメリットを考えると、何度も手軽に早く給与をもらえるのが特徴。そこに特化した形」(リクルート 渡辺氏)とする。

また、給与デジタル払いで先行する「PayPay」に対する強みとして、「給与支払い業務と紐づいていること」と説明。即払い対応により、Airワーク給与支払いやAirビジネスツールズ全体の競争力強化を図っていく。