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急拡大する「BeReal.」 Z世代"以外"は使うのか? ビジネス展開の手応え
2025年3月25日 08:20
写真共有アプリ「BeReal.」といえば、Z世代からの人気が高いSNSというイメージが強いでしょう。実際に、国内ユーザーにおけるZ世代の割合は83%を占めるという、驚きの若者特化型SNSです。そのBeRealが、2024年から急速にビジネス展開を進めています。
BeRealの始まりは2020年1月、フランス・パリで開発されました。その後、2024年6月にフランスのゲーム会社Voodooに買収され、新CEOとしてアイメリック・ロフェ氏が就任しています。
BeRealは2024年2月に、企業や著名人が参加する「公式アカウント」機能を開始したものの、収益に結び付く取り組みは行なわれていませんでした。そこでロフェ氏は、就任間もなく広告事業を開始し、日本市場に力を入れるために日本での社員登用も行なっています。
現在、企業はBeRealのユーザーに対し、広告出稿と公式アカウントの2つのアプローチを利用できるようになっています。
このたび、来日したアイメリック・ロフェ氏にインタビューする機会を得たので、BeRealのビジネス活用や今後についてお話を伺いました。
日本のBeRealユーザーはクリエイティビティ
ロフェ氏は日本市場を「急成長しているマーケット」と認識しています。
BeRealは現在、グローバルでのMAU(Monthly Active Users)は4,000万人、日本のMAUは450万人超。日本については、MAUでは世界で2位、DAU(Daily active users)では1位となっており、熱心に使うユーザーが多いという特徴があります。
「日本のユーザーはアプリに対してエンゲージメントが高く、アプリをよく使いますし、クリエイティビティを持って使ってくださっています。通知がなくてもたくさん写真を撮ってくれますし、通知をきっかけに複数人で集まって撮影することも、他の国より多く見られます。また、メモリーズという過去の投稿をカレンダー形式で見られる機能を、日記のような感じで使っているユーザーも多いです」(ロフェ氏)
ロフェ氏は来日中に日本のユーザーに直接インタビューを行ない、こうした特徴を掴んだそうです。日本のユーザーはBeRealの撮影の仕組みをよく理解していて、フロントカメラとバックカメラの撮影の間に1~2秒空くことを利用し、スマホを回転してどちらも自撮りにするなどの工夫を凝らした撮影をしています。動画も撮影できるので、スマホを投げて動画を撮影する「投げリアル」も流行しました。
一方、Z世代とSNSといえば、オーストラリアでの16才未満SNS禁止法案が成立するなど、リスクを問題視するムードが高まっています。こうした動きについてもロフェ氏に尋ねてみました。
「BeRealはクローズドなSNSなので、危険性に関しては元々影響を受けないと考えています。若い世代への安全性は重要視しており、コンテンツのモデレーションを行なっています。24時間365日、自動化システムと専門チームによる目視によってチェックしています」(ロフェ氏)
コンテンツモデレーションは広告主やブランドが安心して使えるプラットフォーム作りにも繋がるため、最優先で取り組んでいるそうです。
芸能人やスポーツ選手、企業による「公式アカウント」
BeRealは親しい友人とリアルを共有する場です。そこに企業やブランド、有名人の投稿や広告がどのように溶け込めばいいのかは難しい課題のひとつです。
「公式アカウントでは、有名人がリアルを届けることにより、真実のエンゲージメントが達成できていると思っています。フォロワーやファンの方との関係性を深めていってほしいと思っています」
公式アカウントは、40以上の芸能事務所と100名近くのタレントや芸能人などが運用しているとのこと。安田サーカス クロちゃんさん、髙木悠未さん、丸山礼さんなどが公式アカウントを始動。また、JリーグやBリーグの各チーム、スポーツ団体も運用しています。
広告については、当初ネットワーク型広告の掲載から始めました。今は、BeRealの世界観に合わせた、独自フォーマットの広告が配信が増えています。国内初の広告主は「Netflix」で、オリジナル学園ドラマ「恋愛バトルロワイヤル」のプロモーションをBeRealで行ないました。
ロフェ氏は、日本の広告市場に力を入れる理由をこう説明します。
「日本には大きなユーザーベースができあがっていて、さらに増えるスピードも圧倒的に速い。広告を始めたのは昨年7月なのですが、その時点で多数の広告主やブランドから引き合いをいただいておりました。その成長を支えるためには、日本の広告主と直接話をするとか、背景をきちんと理解している人材が必要だと考え、日本に拠点を置くことにしました」(ロフェ氏)
現在BeRealの日本チームは約10名で活動していて、独自フォーマットのクリエイティブを使用したブランドだけで200社以上の広告主と直接取引しているのだそうです。
BeReal 日本広告責任者の笹川明人氏によると、高校生と大学生を獲得したい広告主が多く、カテゴリーはゲームやコミック、エンタメ、飲料メーカーなどが多いそうです。スポーツ用品メーカー「アシックス」、ネット通販「Qoo10」などの大手ブランドも広告出稿を行っています。
海外の広告事例では、ビューティやファッション、エンタメなどが好調とのこと。成功事例のひとつに、「イカゲーム×バーガーキング」のキャンペーンが挙げられます。イカゲームのキャラクターがバーガーキングの新作「ミステリーバーガー」を楽しむ内容で、ターゲット層の間で600万以上のインプレッションと3%のクリック率を記録しました。
他にも、「ガルニエ」がビタミンC配合のコスメの広告を、「ニナ・リッチ」が香水を映した広告を出稿し。好評を得ています。これらは、美容・スキンケア業界で知られるブランドインフルエンサーが起用されています。このようなキャンペーンでは、実際に製品を使用しているリアルな人物を起用することが成功の秘訣だそうです。
ロフェ氏は広告事業について、「かなり好評をいただいている」と話し、「2025年もこのまま加速していければ」と今後の展望を述べました。
イベントとBeRealの掛け合わせで熱狂を作れる
BeRealには、「RealEvents」というイベント機能があり、イベント実施時に特設ページを開設できます。2025年3月2日に行われた「KANSAI COLLECTION 2025 SPRING&SUMMER」はBeRealのイベント機能を利用し、バックステージの様子やタレントのBeRealなどを投稿しました。
イベントについて、ロフェ氏に尋ねました。
「イベントとBeRealはとても相性がいいと考えています。BeRealの特徴である、瞬間を友達と共有することができます。また、自分の記録としてイベントを残しておくという面でも良いシナジーがあると思います。KANSAI COLLECTIONのような取り組みは今後も続けていきたいと考えています」(ロフェ氏)
笹川氏はイベントとの親和性について、「熱狂を作れるところが大きい」と説明します。
「他のSNSではイベントに行なった後に投稿しますが、BeRealは本当にその瞬間に投稿するため、デジタルの場であるBeRealにもその熱狂が伝わります。KANSAI COLLECTIONでは、観客席の方がステージを撮っている投稿でもリアルを感じました。BeRealを見て、"自分も同じように楽しめるかも"とか、"イベントでもっとその熱を感じたい"と感じ、イベントに足を向けるかもしれません。イベントとのシナジーは相当高いと考えています」(笹川氏)
Z世代以外へ広げる施策
前述したように、BeRealの国内ユーザーは14~27歳(Z世代)が83%以上を占めています。現在のユーザーである学生たちが就職していくと、通知にすぐ反応するような使い方はできなくなり、ユーザー離れが起きるかもしれません。その点についても尋ねてみました。
「BeRealの通知は撮影するきっかけではあるのですが、自然の自分を撮影することに慣れてくると、通知がなくてもリアルな姿を撮ることに抵抗がなくなってくるのです。フランスなどは日本よりも年齢層が高いのですが、通知に関らず撮影して楽しんでいるので、日本でも同じようになると思っています。社会人になったとしても、BeRealを楽しんでもらえると思います」(ロフェ氏)
なお、日本では授業中にBeRealの通知が鳴ったとき、撮影してしまう行為が問題になっています。ロフェ氏は、「通知から2分以内に撮らないと何もできないわけではありません。2分以内に撮っていない人も多く、撮らなくても大丈夫という点は浸透してきていると思います。ぜひ学生生活と両立していってほしい」と話しました。
今後、ユーザー層を広げていく施策はあるのでしょうか。
「今のユーザーが年を重ねてもそのまま使い続けてくれれば、上の年代にも広がると思っています。ユーザーインタビューした時にユーザーから直接聞いた話なんですが、親子で使っている人もいるんです。東京に1人暮らししてる学生が自分の生活を見せたり、親も自分の元気な様子を見せたりと、親子で日常を確認するために使っています。このように、最初は親子から広がっていくのかもしれません。
そのためにも、プロダクトがあんまり複雑になりすぎないように、きちんとシンプルで使いやすいものでいつづけることに気を付けて開発していきたいと思っております」(ロフェ氏)
ロフェ氏は今後もBeRealの機能拡充を進めていくと言及。撮影のフォーマットや投稿に対してのリアクション、メッセージなども洗練していき、もっとユーザー間での交流を楽しんでいけるようにするそうです。
日本でのビジネス展開についてもロフェ氏に尋ねました。
「日本国内にいるチームと、広告主やブランドとのコミュニケーションをさらに密にしていき、BeRealでリアルなクリエイティブを出していただけるように努めたいと思っています。公式アカウントに関しても、より多くの有名人やインフルエンサーの方にぜひBeRealを使ってもらい、彼らのフォロワーやファンの方とBeRealでエンゲージメントを深めていただきたいです」(ロフェ氏)