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マイクロソフト、AIの「エージェント化」を加速 自律型AIが業務を変える

マイクロソフトは、AIエージェントに関する取り組みについて、記者向けブリーフィングを開催した。生成AI技術の進展が「エージェント化の加速」「マルチモーダル・マルチモデル対応」「試行から本格的なビジネス活用へ」といった大きな潮流を生んでおり、AIエージェントは今後、ビジネスと日常生活において不可欠な役割を担うと説明した。

AIエージェントは、11月に開催された「Microsoft Ignite 2024」で紹介された概念であり、同社が掲げる「エージェンティックワールド(Agentic World)」実現に向けた中核技術として位置づけられている。

AIエージェントは「自律型AI」であり、AIが従来のチャットボットから脱却し、タスクの遂行において高度な推論力を発揮するだけでなく、過去の文脈を理解し、ユーザーの介入を最小限にしながら目標に向けて独立して行動するという。具体的には、AIの推論精度が大幅に向上したことで複雑な判断が可能になり、自ら計画を立てて行動する「プランニング機能」や、過去のやりとりや環境を記憶し継続的にサポートする「メモリー&コンテキスト」の技術がブレークスルーとして進化している。

さらに、これまでテキストデータが中心だった生成AIは、音声や映像、画像など多様なデータを統合的に処理する「マルチモーダル対応」へと広がっている。これにより、AIエージェントはビジネスシーンにとどまらず、日常生活においてもユーザーの要望に応じたタスクを実行できるようになる。

ビルトイン型など3種類のエージェントを業務にあわせて選択

マイクロソフトは、AIエージェントの提供形態を「ビルトイン型」「サードパーティ型」「カスタマイズ型」の3種類に分類し、ユーザーが柔軟に活用できる環境を整備していると説明した。

ビルトイン型エージェントでは、Microsoft 365の中でシームレスに業務を支援する「SharePoint Agents」や、話者の声色を真似ることができるリアルタイム音声翻訳「Interpreter Agents」などが挙げられた。例えば、SharePoint Agentsは、製品メンテナンスの必要な情報やアセットを自動的に整理し、文書へのアクセスや関連業務を効率化できるという。

一方で、サードパーティ型エージェントは外部サービスと連携し、AdobeやSAPといったソフトウェア内で業務効率化を支援する。SAPでは、工場の不具合データを取りまとめてAIエージェントがレポートを生成する例が紹介された。

カスタマイズ型エージェントはユーザー自身が特定の業務ニーズに応じて構築できる。特にカスタマイズ型エージェントには専門知識がなくても、ローコード/ノーコードで高度なエージェントを簡単に作成できる。作成には「Copilot Studio」を使い、会話形式で行なう。さらに複雑なエージェントを作成するには、「Azure AI Foundry」を使うことで実現できる。

Teams会議に参加し、社員さながらにアドバイスや提案を行なう

仕事の在り方を変えるエージェントとして、Teams会議内における専用エージェントのデモが紹介された。専用エージェントは、他の社員と同様に共有された画面や会話を頼りに、財務状況の分析やコードの改善案などを提案し、議論に参加する。これらのエージェントは、会議のテーマに応じた専門性を持つように設計されている。例えば、財務に詳しいエージェントやプログラミングに特化したエージェントなど、適材適所で機能する。

ユーザーの要望に応じた快適な買い物体験

ブリーフィングで紹介されたデモの一つに、ビジネスシーンではなく日常生活を想定したシナリオもあった。シナリオでは、母親が息子のためにプレゼントを購入する場面が描かれた。買い物に特化したエージェントに話しかけると、声だけでゲーム機の決済が完結する。また、エージェントは親子で遊ぶことを考慮し、「コントローラーも購入しますか?」とレコメンド。さらに「自宅ではなく勤務先に配達して」と相談すると、配送先も自動で変更され、無事に決済が完了するという流れ。このように、利用者ごとにパーソナライズされたエージェントを作成することが可能になる。

コールセンターで迅速な回答 顧客対応を効率化

日本市場における導入事例も増えており、ソフトバンクはコールセンター業務にAIエージェントを導入し、顧客対応の迅速化と均質化を図っている。

大和証券では、「AIオペレーター」を導入し、マーケット情報の提供や手続き関連の問い合わせに対応。AIエージェントが複数のタスクをリアルタイムで処理し、正確で迅速な回答を提供している。さらに、モニタリングAIが応対内容をチェックし、品質の維持・向上にも貢献。

JR西日本では、鉄道業務に特化した「Copilot for 駅員」を導入し、顧客対応の効率化と待ち時間の短縮に成功した。

トヨタ自動車のパワートレーンカンパニーでは生成AIシステム「O-Beya(大部屋)」を導入し、複数の専門分野を持つエージェントがエンジニアを支援。エンジンやバッテリーなどの開発において、社内の知識を効率的に共有・活用し、開発スピードの向上を図っている。

マイクロソフトは、AI導入が試験段階から本格運用へ移行し、今後はAIエージェントが業務プロセスに組み込まれると展望を示した。「Azure AI Foundry」で1,800を超える複数モデルの選択や運用支援を強化し、セキュリティ面では「Azure AI Content Safety」で不正コンテンツの監視を実施。

マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏は、「2025年に向けて、AIエージェントの導入がさらに加速する。より本格的な企業導入の運用がスタートしているなかで、試験的な導入ではなく、マイクロソフトとして実行から運用までをしっかりとサポートできる体制を整えていく」と述べた。

執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏