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オムロン、“心房細動”検出する血圧計 AI活用の新アルゴリズム

オムロン ヘルスケアは、血圧を測ると同時に心房細動の検出を行なう血圧計用の新アルゴリズム「Intelligence AFib(インテリジェンスエイフィブ)」を開発した。欧米や中国などでは販売中で、日本でも2025年以降での発売を目指す。

心房細動は不整脈の一種で、加齢と共に増加する傾向がある。心房細動の症状が見られる場合、そうでない人に比べて脳梗塞(5倍)や心不全(5倍)、認知症(2倍)など、健康寿命や命の危険がある弊害を引き起こす確率が高くなる。

しかし、心房細動は無自覚のうちに発生しているケースもあり、37.7%の人がその兆候に気づかない「無症候性」であるという。記者会見では、日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授の清水 渉氏が登壇し、「心房細動は早期に発見して治療すれば完治も可能。いかに早期に発見するかが重要になる」と説明している。

日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授 清水 渉氏

心臓が拍動するときに生じる動脈内の圧力変化を「圧脈波」というが、血圧計では、腕帯で動脈を圧迫することで圧脈波データを取得している。「Intelligence AFib」は、この圧脈波を解析することで心房細動の検出を可能にするアルゴリズム。

心房細動は、圧脈波が不規則になることで現れるが、これは個人によって異なる不規則なパターンであることから、これまでは検出が難しかった。「Intelligence AFib」は、これまでオムロンが蓄積してきた、過去50年間にわたる膨大なデータと、AIを組み合わせることで、血圧計での心房細動検出を可能にしている。

心房細胞の圧脈波

同社のこれまでの血圧計にアルゴリズムとして「Intelligence AFib」を搭載することで実現可能で、特別な機能を付加する必要がないのもメリット。

Intelligence AFibが動作中であることを表示するアイコン

同機能を搭載した血圧計は、現在、中国や北米など、薬事認可を得られた国で販売を行なっており、日本でも2025年度中に薬事取得を目指して販売を開始する予定。北米では、新規医療機器で類似製品が存在しない場合に、安全性と有効性を保証するFDA(米国食品医薬品局)の「DeNova」認証を取得。心房細動の可能性を検出する血圧計として初めての取得という。

すべての血圧計に「Intelligence AFib」搭載目指す

オムロン ヘルスケアは、国内では体温計のメーカーとして知られるが、実は売上の64%は血圧計が占めており、2023年には3.5億台の血圧計を販売している。また、エリア別の販売構成比では、日本は16%で、それ以外は中国が33%、北米が16%、欧州が19%など海外需要が高い。

オムロンは1973年に初めて家庭用血圧計を発売。当初は、血圧計測前に個人に合わせた圧力をあらかじめ自分で設定してから計測する必要があり、計測間違いも多かったという。

1990年には世界で初めて“ファジィ機能”を搭載し、自動で圧力を設定できる機能を搭載。誰でも簡単に正確な血圧を計測できるようになった。その後は、手首で計測できるものや、時計型の血圧計など、多様な製品を展開している。

「Intelligence AFib」搭載製品は、血圧計の上位モデルから導入するが、価格は従来と同等をめざし、最終的にはすべての血圧計のラインナップに搭載していく計画という。

同社では、自宅で心電図を記録できる携帯型心電計も販売しているが、心房細動に備えるために心電計のみを購入してもらうのはハードルが高いという。

一方、高血圧は心房細動の原因の一つとして大きな割合を占めており、その発症リスクは通常の人の3倍と言われている。高血圧と診断されて治療を受けている人は、血圧計を所持して朝晩計測する習慣を持っている人も多いことから、「Intelligence AFib」を搭載することで発症リスクの高い人に向けて早期発見を可能にする狙いもある。

なお、心房細動は、慢性的に常時症状が持続する場合と、一時的に発作のように現れる場合がある。後者は心電計のように常時計測可能な機器でないと計測が難しいが、血圧を毎日計測するたびに心房細動のチェックができれば、より発見出来る機会は高くなるとしている。

1973年にオムロンが初めて発売した家庭用血圧計「マノメータ式電子血圧計 HEP-1」
オムロン初の家庭用自動血圧計「デジタル自動血圧計 HEM-88」。1981年発売
1986年に、「135/85mmHg」という家庭血圧の世界基準誕生の切っ掛けとなった、岩手県の大迫町で行なわれた「大迫研究」に提供された血圧計
1990年発売の「加圧設定機能付き自動血圧計 HEM-705CP」。中央のスライド式スイッチで自分の血圧状態に合わせて加圧値を簡単に設定できるが、手動で適正な圧力を設定する必要があった
1991年発売の「デジタル血圧計 HEM-706」。ファジィ技術により、一人一人のその時の血圧レベルに最適な加圧値を自動設定できるもので、自分で圧力を設定する必要がなくなった
2000年発売の「デジタル自動血圧計 HEM-630」。当時世界最小の超小型手首血圧計
2001年発売の「デジタル血圧計 HEM-770A インテリセンス」。現行製品にも採用されている、片手でぴったりと巻けるフィットカフを初採用
2017年発売の「上腕式自動血圧計 HEM 7600T」本体とカフ一体型のチューブレスタイプ
2019年発売の「ウェアラブル血圧計 HCR-6900T」。医療機器認証を取得している腕時計サイズの血圧計