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PFN、AI活用リテールソリューション 社歴1日でもスムーズな品出し

Preferred Networks(PFN)は、リテールソリューション事業を開始し、その第一弾として、DX・AI・ロボット技術を組み合わせたチェーンストア向け業務改善ソリューション「MiseMise」(ミセミセ)の提供を開始した。社歴1日でもバックルームからの品出しをスムーズに行なえるほか、ロボットによる欠品チェック、AI値引き、店舗分析などが可能になる。

小売業界では慢性的な人不足が課題となっているが、パートやアルバイトは限られた時間しか働けないため人材教育が難しい。対策としてスポットバイトサービスなどを利用しても、経験不足で業務が困難であったり、自動発注システムを導入しても、品切れの問題が解決できないなど、課題が多い。物流2024年問題で、納品回数が減ることによる売場での欠品や品揃え不足なども発生し、販売機会の損失が発生しているという。

「MiseMise」では、スーパーなどの「チェーンストア」を想定し、これらを解決する5つのソリューションを提供。業務経験のないパート・アルバイトでも最小限の指示で熟達者のように効率よく業務を遂行することを可能にし、売上・利益・従業員満足度の向上や欠品率・ロス率の低下につなげる。

開発にあたっては、実店舗でスタッフにヒアリングを行なったほか、実際に業務を体験するなどをして、実務を最適化できるソリューション開発を行なったという。

5つのソリューションを提供

「MiseMise 品出し」は、バックルーム(店内の在庫置き場)の在庫をデータ化するソリューション。従来バックルームでは、納品された商品が積載された台車に何が積まれているかは、スタッフがメモをして個別に管理するなど、属人的な管理方法が一般的だった。このため、未経験者がバックルームから商品を探すとなると非常に時間がかかり、PFNのスタッフが実際に店舗で体験したところでは、3品を探すのに30分近くかかったこともあったという。

バックルームの在庫はこうしてダンボールの切れ端などにメモをして管理していた。紙のメモだと濡れてダメになってしまうことがあるという

「MiseMise 品出し」では、商品入庫時に台車と商品を紐付けて管理が可能で、店頭で欠品が生じて商品を補充した場合、欠品商品の値札をスキャンすることで在庫の場所を業務端末に表示できる。従来の在庫管理システムでは、店頭在庫とバックルームの在庫の合計で管理をしていたが、バックルームだけの在庫を把握できるソリューションは初めてという。

台車には番号とバーコードを設置
欠品商品の値札をスキャンすると在庫の場所が台車の番号で表示される
必要なものを持ち出したら在庫から引いておく

これにより、実際の店舗においてバックルームで商品を探す時間が約50%削減されたほか、店頭の品切れ防止による売上は4.2%増加。バックルームの余剰在庫は1カ月で約20%削減できたという。

「MiseMise AI値引き」(ベータ版)は、消費期限の短い生鮮食品や惣菜などの売り切り、食品ロスを削減するのに最適な値引きを提示するソリューション。AIが天候等の外部情報や現在庫情報、他商品の在庫情報などから需要の食い合いまでを予測する。これにより経験に左右されない値引き判断をサポートする。

具体的には、端末で商品のバーコードをスキャンすると、商品の陳列数毎に割引率を表示。今後も売れそうな人気商品の割引率は低めに、在庫が余りそうな商品は高めの割引率を提示する。端末には「1~4個までは10%、5~9個までは20%」などのように、商品の数や需要に合わせてどのくらい値引きするかを表示。店員は実際に商品を数えて該当する個数の割引率を選び、シールをプリンタで印刷して貼付ける。

商品のバーコードをスキャン
売れ残りの数毎の割引率が提示されるので、該当する数の割引率を選ぶ
商品の人気などの要素で割引率は変わる
「プリント」を押すことでシールを印刷できる
印刷された割引シール

他社のソリューションでは、商品数を店員が入力すると、該当する割引率を表示するものもあるが、実際に店員の意見を聞いたところ、バーコードをスキャンして割引率を提示するほうが、入力の手間が少なく好評だったという。これにより惣菜の値引きによる売上の損失を約20%削減できたとしている。

なお、端末やプリンタなどは既存のものを使う事も可能になる予定。

「MiseMise 棚割」(ベータ版)は、本社商品部での棚割の作成、各店舗への配信から分析まで、棚割に関わるすべての業務を組織横断で行なうためのソリューション。米国ではチェーン店の店内レイアウトはほぼ同じであることから、本社が一括して棚割の指示をしやすいが、日本では店舗のレイアウトや大きさは多種多様で、一括した指示が出しにくい現状がある。

「MiseMise 棚割」では、販売実績と棚割データを組み合わせた分析や、AIがバイヤーの方針も加味した棚割の提案を、それぞれの店舗に合わせた形で行なえる。

「MiseMise ロボット」(ベータ版)は、自律移動ロボットが店内を自動撮影し、欠品や品薄を検知しながら棚割の実施状況を確認し、他ソリューションと連携するもの。値札の付け間違いのチェックや利用者への売場案内、万引きの抑止や商品プロモーションなどに使うこともできる。

自律移動ロボットが店内を自動撮影
棚の欠品を自動で検知する

「MiseMise 分析」(ベータ版)は、これらすべてのソリューションのデータを統括し、店舗DXに必要な情報を一元管理する。作業が割り当て通りに実行できているか、各種店舗情報(滞留在庫量・品切頻度・品出し必要頻度)、店舗間の作業効率等を分析するAIダッシュボード機能を備える。

PFN代表取締役 最高経営責任者の西川 徹氏は、「MiseMise」の立ち上げについて、「リテール事業への取り組みは5年以上やっているが、リテールは一般の人にとって、普段の買い物で無くてはならないとても身近な世界。市場も大きく歴史は長いが、人を中心として最適化されているのが現状。機械が入る余地はまだまだあり、人の力をエンハンスし、AIやロボットを活用するソリューションとして提供していきたい」としている。

「MiseMise」の初年度売上目標は約10億円、3年後に約100億円規模を目指す。