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やらせレビュー削除に出店審査の厳格化 Yahoo!ショッピングの不正ストア対策

LINEヤフーは、「Yahoo!ショッピング」がこれまでに行なってきた安全・安心への取り組みと実績をまとめた「安全・安心への取り組みレポート」を初公開した。

取り組みの背景として、ECの利用増とともにトラブルが増加していることを挙げている。経済産業省の調査によると、2023年の日本国内におけるEC市場規模は、2022年と比較して13兆2,865億円から、7,132億円増加の13兆9,997億円となり、拡大を続けている。一方でトラブルも増加しており、安全・安心への取り組みはEC事業者にとって急務となっている。

ECの利用増とともにトラブルが増加

Yahoo!ショッピングで特に多いトラブルが、大量に注文を受け付けながら商品を発送せずに逃亡する「未着詐欺」、ブランド品や化粧品の「偽造品販売」だという。

商品が到着しないなどトラブルがあった場合、Yahoo!ショッピングでは早急に調査して決済を止める、請求がユーザーにいかないようにするなどの対応をとっているが、それでも決済が進んでしまった場合はYahoo!ショッピングが返金を行なっている。

こうしたトラブルを起こすストアによる被害防止と、ユーザー保護に取り組むことを目的としてさまざまな対策を行ない、今回それらの事例が紹介された。

Yahoo!ショッピングで特に多いトラブルが「未着詐欺」と「偽造品販売」

安全・安心への取り組みとしてYahoo!ショッピングではこれまで、ブランド直営店や正規代理店にマーク表示をしたり、優良ストア認定などを行なってきた。

しかし、さらなる対策強化の必要性があるとして、2024年からは出店審査を厳格化。所在確認や、過去利用時の規約違反有無などを確認するようになった。

1月には個人事業主の在庫証明審査、5月には法人の在庫証明審査も開始。また、4月からは携帯電話やフリーアドレスからの申し込みを禁止している。

こうした対策により、出店審査の合格率は2023年上半期が25.2%だったのに対し、2024年上半期は11.2%と14ポイント減少。不正が疑われるストアの出店を抑制した。

2024年から出店審査を厳格化
出店審査の合格率は、2023年上半期が25.2%だったのに対し、2024年上半期は11.2%と14ポイント減少

出店審査に合格後、悪事をはたらくストアも

このほか、不適切なストアや商品の排除を目的として、社内外からのチェック体制をさらに強化。社内での取り組みでは、出店後の途上審査を強化。以前の途上審査の方法では本人以外での提出や偽造がしやすい書類だったため、一部の不正事業者には効果がない状況だったという。

「出店審査に合格したあと、いきなり悪事をはたらくようになるストアもいます」と、LINEヤフー 執行役員 コマースカンパニーショッピング統括本部長 畑中 基氏は説明。

こうした背景から、途上審査にeKYCを導入し、本人写真と本人確認書類を同時に撮影してアップロードする方式を採用した。また、不審なアクセスログをもとに不正疑い事業者をリスト化し、途上審査を定常化するようになった。

これらの取り組みにより、ガイドライン違反で休店するストアは増え、ストア数は2023年上半期から2024年上半期にかけて半減、退店ストアも続出した。

出店後の途上審査を強化
eKYCを導入し、本人写真と本人確認書類を同時に撮影してアップロードする方式を採用した
悪質なストアは減少している
LINEヤフー 執行役員 コマースカンパニーショッピング統括本部長 畑中 基氏

ストアだけでなく、商材の取り扱い審査も強化。医薬品や中古品、動物用医薬品、特定のブランド品(約200ブランド)など、特定の商材は審査がより必要になった。

ブランド品は個人事業主の受け入れを不可とし、仕入れ書類の提出も必須とした。また、化粧品の偽造品も増加していることから、審査対象商材に追加。審査基準を満たさない場合は商品削除や非公開のうえ、休店や退店を実施している。

ブランド審査の合格率は、2023年上半期が89.0%だったのに対し、2024年は74.3%と14.7ポイント減少。ブランド未審査ストアの商品削除数は2023年上半期が1,750点で、2024年上半期は2,292点と31%増加した。

特定の商材は審査がより必要になった
ブランド審査の合格率と、ブランド未審査ストアの商品削除数

偽造ブランド品に関しては、商標権を侵害する商品数は市場でも増加傾向にあることから、外部からチェック・報告できる仕組みを確立。ウェブフォームを設置し、審査に合格して出品された商品でも、偽造品の可能性がある場合は権利者からの申告に基づいて出品物削除を実施する。

商標権を侵害する商品数は市場でも増加傾向にある
ウェブフォームを設置し、偽造品の可能性がある場合は権利者からの申告に基づいて出品物削除を実施

やらせレビュー・不正決済対策

自己注文によるやらせレビューが散見されることから、該当の投稿削除にも注力。

景品表示法の改正によりステルスマーケティング行為が違法になった2023年10月以降、過去の投稿からやらせレビューの疑いがあるユーザーの傾向を分析し、やらせレビューの可能性が高い投稿の削除を実施した。2024年9月現在までに3,150ストアを対象に597,234件のレビューを削除している。

やらせレビューを削除
2024年9月現在までに3,150ストアを対象に597,234件のレビューを削除している

年々増加しているクレジットカードの不正利用被害への対策についても、3段階の判定フローで不正を監視。自社開発の不正検知システム、EMV3Dセキュア、24時間365日体制で人の目視による判定という3段階フローを採用している。

特に自社開発の不正検知システムは、4月以降判定精度を改善。その結果、2024年上半期の不正決済の被害金額は、2023年上半期と比較して82.9%減になった。

被害が拡大する不正決済
3段階の判定フローで不正を監視

今後は、既に実施している「審査商材の拡大」「やらせレビューへの対策」「パトロールにおけるAIの導入」を強化していく予定。AI導入では、過去取引データの学習で不正の疑いがある商品を判定。パトロールの効率化と不正検知の精度を向上させる。

さらに、新たな取り組みとして、「LINEヤフーグループ内での連携強化」「無在庫転売ご意見受付フォームの開設」「クレームを繰り返し発生させるストアへのペナルティ強化」などを行なっていく。

「グループ内の連携強化では、ZOZOTOWNやYahoo!オークションなどでも不正の取り締まりを行なっており、そうしたサービスと連携し、ノウハウを蓄積して横展開していきます」(畑中氏)

2027年度までにストアとユーザー間の取引トラブルゼロを目標として掲げる

こうした取り組みを通じて、Yahoo!ショッピングでは2027年度までにストアとユーザー間の取引トラブルゼロを目標として掲げる。

「ユーザーが安心して使える売り場にするとともに、健全な商売をしているストアや事業者にとっても安心して商品を販売できる場にしていきたいと考えています。また、我々のみならずさまざまな企業とノウハウを横連携して不正を撲滅させ、それが結果としてEC、インターネットのさらなる発展につながることを期待しています」(畑中氏)