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IOWN、日台間3000kmで17msecの超低遅延通信を実現

台湾会場でのセレモニーの様子

NTTと台湾の中華電信は、世界初となるIOWN国際間オールフォトニクスネットワーク(APN)を、日台間の約3,000kmに渡って開通した。双方のAPNにより中華電信のデータセンタ(台湾:桃園市内)からNTT武蔵野研究開発センタ(日本:武蔵野市内)までを接続。これにより2,893kmの長距離において、片道約17msecの低遅延かつゆらぎのない安定した通信を実現した。

IOWNは、Innovative Optical and Wireless Networkの略で、ネットワークだけでなく端末処理まで光化するAPN技術のこと。電気信号への変換を最小限とし、低遅延かつ低消費電力での長距離通信を可能にする。

29日のセレモニーでは台湾会場と日本の会場はほぼ遅延なく接続された

国際間APNの開通にあたり、NTTは、NTT武蔵野研究開発センタから日本国内の海底光ファイバー陸揚げ局まで、中華電信は、そこから台湾の陸揚げ局、桃園データセンターまでのAPN構築を担当。End-to-Endでの通信が安定して行なわれることを確認した。

国際間APNは100Gbpsの光パスで実現。通信品質試験では、遅延は片道で16.92msec、遅延ゆらぎはほとんど計測されなかった。今回の国際間APNには、IOWN Global ForumのOAA(Open All-Photonic Network Functional Architecture)に対応している様々なメーカーの機器が活用されている。

今後は、両社協力の下、日本と台湾に拠点を置く半導体分野などの製造業を中心に、被災時のBCP対策としてのデータバックアップやレプリケーションサービス、大規模言語モデル(tsuzumi)などを提供していく。

またNTTは2025年大阪・関西万博NTTパビリオンデーにおいて、「超歌舞伎〈CHO-KABUKI〉Powered by IOWN『今昔饗宴千本桜 Expo2025 ver.』」の公演を計画しており、今回の国際APNの活用も検討している。

既存ネットワークと同じような使い勝手を目指す

29日には、台湾と日本の会場をAPNで接続してセレモニーを実施。日本で楽器を演奏しながら、台湾と日本で同時に違和感なく合唱できるなど、通信遅延の少なさをアピールした。

冒頭で挨拶したNTT 代表取締役社長 島田 明氏

中華電信 会長の郭 水義氏は、「通信の遅延が少なくなることで、分散型ネットワークもより効率的に活用が可能になり、離れた場所にデータセンターを構築しても、それぞれ遅延無く活用できるようになる。応用の可能性も広く、グローバル企業にとってはチャンスになる」などと語った。

また、台湾会場に出席したNTT代表取締役副社長 川添雄彦氏は、「AIのニーズは高まり続けているが、AIには大量の電力が必要になる。例えば、生成AIの一回の学習分で、原子力発電所1基分の電力が必要になるなど、消費電力も大きな課題の一つ」とし、電力消費が低いIOWNの強みをアピールした。また、「将来はインターネットと同じように普及させ、誰でも利用しやすいネットワークサービスにしていきたい」とも語り、広く一般への普及を目指すとしている。

APN(左)と通常のインターネットによる遅延の差