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AWSへの移行で二酸化炭素を99%削減 省電力チップや再エネ活用
2024年8月27日 18:42
アマゾンウェブ サービス(AWS)は、ITワークロードをオンプレミス(自社所有)のインフラから、AWSクラウドデータセンターへ移行することで、温室効果ガスの排出量を最大99%削減可能になるという調査結果を発表した。AWSの委託によりアクセンチュアが調査したもの。
アクセンチュアの推定によると、AWSのグローバルのインフラは、オンプレミスと比べ、最大4.1倍のエネルギー効率向上効果があるという。AWS上のAIワークロードは、日本企業のオンプレミスのデータセンターと比較して、最大99%の温室効果ガスの削減が見込まれるとしている。
これは、稼働率向上によるハードウェアの効率化(33%)、電力や冷却の効率化(34%)に加えて、AWSがカーボンフリーエネルギーの調達(31%)を行なっていることによって可能になっている。
例えば、SBI生命保険では、オンプレミスのシステム運用からAWSの各種クラウドサービスへの移行を推進しており、AWSクラウドへの移行後の二酸化炭素排出量は2023年1月から12月までの実績で99.54%削減されている。
カスタムシリコンチップの開発
AWSでは、電力効率向上のためにカスタムシリコンチップへの投資を行なっている。2018年に発表された「Graviton」は、AWSの独自設計による汎用プロセッサで、この種のチップとしては初めて、大手クラウドプロバイダーによって大規模に展開された。
最新の「Graviton4」は初代のGraviton 1の4倍のパフォーマンスをもつ。Graviton3は同等のEC2インスタンスよりも最大60%少ない消費電力で同じパフォーマンスを実現できるが、Graviton4はさらにエネルギー効率が向上している。
生成AIアプリケーションのためのシリコンチップとして、「AWS Trainium」(機械学習トレーニング用)や「AWS Inferentia」(推論用)なども開発。同等の他の高速コンピュートインスタンスよりも大幅に高いスループットを実現しているという。
AWS Trainiumは、生成AIモデルのトレーニングにかかる時間を、数カ月から数時間へと短縮。Trainium2は、第1世代の Trainiumと比べて、最大4倍高速なトレーニング性能と、3倍多いメモリ容量を提供しながら、エネルギー効率(1ワットあたりの性能)を最大で2倍向上させる設計となっている。
AWS Inferentiaは、AWSの機械学習推論チップのなかで電力効率が最も高いチップ。Inferentia2は、類例のものと比べて最大50%高いワットあたりの性能を提供し、最大40%のコスト削減を可能にしている。
インフラ全体でのエネルギー効率も向上
配電から冷却技術まで、インフラ全体でのエネルギー効率を向上することで、ピークに近いエネルギー効率での運用が可能。リソースの使用を最適化することで、アイドリング容量を最小限に抑え、インフラの効率を改善している。
例えば、データセンターの設計の際、中央に大型の無停電電源装置(UPS)を配置する代わりに小型のバッテリーパックを利用して、ラックごとにカスタム電源を設置することで、電力効率を改善し、可用性も向上させた。
電力は、電圧が変わったり、交流から直流、またはその逆の変換の度に、電力がある程度失われる。UPSを排除することで、こうした変換も減らすことができる。さらに、ラックの電源供給も最適化するなどの取り組みで、電力変換時のロスは約35%削減されている。
AWSのデータセンターにおいて最もエネルギーを使用するリソースの1つが「冷却」になる。効率性を高めるために、場所や時期に応じて、自由空冷をはじめとするさまざまな冷却技術に加え、リアルタイムデータによって気象状況に適応させている。こうした対応は、運用規模の小さな一般的なオンプレミスのデータセンターではより困難だという。
最新のデータセンター設計では、最適化された空冷ソリューションが液冷機能と併せてシームレスに統合され、NVIDIAのGrace Blackwell Superchipのような強力なAIチップセットにも対応可能になっている。
再生可能エネルギーへの取り組み
AWSは、2040年までに事業全体で温室効果ガスの排出量実質ゼロを達成するというAmazonのコミットメントに足並みを揃える形で、100%カーボンフリーエネルギーへの移行を進めている。Amazonは世界中で500件を超える太陽光発電と風力発電プロジェクトに数十億ドルを投資しており、Amazon全体において、事業活動で使用する電力量と同等の電力を、2030年までに100%再生可能エネルギーで確保するという目標を、2023年に7年前倒しして達成した。
現時点でAmazonは、日本国内で太陽光・風力発電合計20件の再生可能エネルギープロジェクトを推進している。これらが稼働すると年間20万メガワット時(MWh)以上の再生可能エネルギーを生成する見込みで、毎年日本の4万8,000世帯に電力を供給可能なレベルに達する。
2024年7月には、日本で初めてとなる陸上風力発電所(所在地:青森県六ケ所村、発電設備容量:33メガワット(MW))への投資も発表している。
Amazonは、2021年に日本初となるコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)を活用したオフサイト型の太陽光発電プロジェクト(分散型)を立ち上げて以来、日本全国で再生可能エネルギーの普及を拡大。大規模な再生可能エネルギープロジェクトに適した土地が限られた日本において、集約型・分散型の大規模太陽光発電所、陸上風力発電所や14件の屋根設置太陽光発電プロジェクトを進めるなど、さまざまな方法で再生可能エネルギーの調達を進めている。