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急成長する「LINEギフト」 ショッピング強化へ

LINEヤフーは、LINEのトーク上でギフトが贈れる「LINEギフト」のメディア向け説明会を行なった。これまでの取り組みや出店ショップの活用事例、今後の展開などを紹介した。

LINEギフトは、相手の住所を知らなくてもLINEのトーク上でギフトが贈れるサービス。食品の電子チケットなど電子ギフトのほか、配送商品も贈ることができる。

LINEのトーク上でギフトが贈れる
電子ギフトと配送ギフトの2種類を用意

2015年にサービスを開始し、LINEギフトを贈ったことがある、もしくはもらったことがあるユーザーは累計3,500万人を突破。LINEユーザーの約5人に1人が利用したことがある計算になるという。

ユーザー数は、コロナ禍をきっかけに伸長。会えなくてもギフトが贈れることなどを背景に、2020年以降大きく成長している。2023年の年間流通額は前年比で129%増加した。

ユーザー数は累計3,500万人
LINEユーザーの約5人に1人が利用したことがある計算になる
2023年の年間流通額は前年比で129%増加

ちょっとしたお礼のカジュアルギフト

ギフト市場は大きく3つに分けられ、取引先への贈り物や福利厚生などtoBの法人ギフトと、誕生日祝いやクリスマスなどカジュアルギフト、お中元や出産祝いなどのフォーマルギフトといったtoCに分けられる。LINEギフトの事業領域はカジュアルギフトとフォーマルギフトで、特にカジュアルギフトが伸長している。

「母の日などシーズナルの贈り物や誕生日の友人からのギフトはもちろん、例えば同僚から仕事を手伝ってもらったとき、部下にちょっとしたお礼をしたいときなど、日常生活の中での感謝の気持ちを伝えたいときにも多く使われています」(LINEヤフー 執行役員 ソーシャルコマース統括本部長 嘉戸 彩乃氏)

LINEギフトの事業領域は、toCのカジュアルギフトとフォーマルギフト
利用シーン
LINEヤフー 執行役員 ソーシャルコマース統括本部長 嘉戸 彩乃氏

電子チケットなどすぐに使える「eギフト」が主流だが、最近は住所を知らなくても相手の自宅に贈れる「配送ギフト」の割合が増加。2019年が17%だったのに対し、2023年は39%まで成長している。

売上成長を牽引しているのは、母の日や父の日、バレンタイン、ホワイトデー、クリスマスのシーズナルイベント。この5つは5大イベントと位置づけられており、他のECとは異なりシーズナル「当日」に、流通額の大きな山ができるのが特徴となっている。

「通常のシーズナルイベントのギフトは、遅くても3日前までとかに商品を購入して当日に相手に届けなくてはという心理が働きます。一方LINEギフトは、手元に届くのは後日ですが、ギフトを贈るという行為と気持ちは当日に届くので、当日に数字が伸びやすくなります。

また、LINEギフトのユーザーは、検索などでギフト商品にたどり着くのではなく、LINEギフトにアクセスしてから商品を検討します。そのため、他サイトとの比較検討・離脱が起こりづらく、即決購入する人が多いという傾向もあります」(嘉戸氏)

配送ギフトの割合は2019年が17%だったのに対し、2023年は39%まで成長
5大シーズナルイベントは、当日に流通額の大きな山ができるのが特徴
LINEギフトは手元に届くのは後日だが、ギフトを贈るという行為と気持ちは当日に届けられる

LINEのトーク上で送付するため、相手ありきのサービスとしての機能や仕掛けを用意しているのもLINEギフトの特徴と嘉戸氏は説明。

「例えばコスメだと相手の好みがわからないという声がありますが、商品は贈る側が選定して、色や香りは受け取る側が選べるものもあります。また、名入れなど刻印できるギフトや、ほしいものを登録できる機能などを用意しています。刻印機能は、今後受け取る側が名前を選べる機能も搭載し、出産祝いなどで名前がまだ決まっていない段階でも刻印商品を贈れるようになります」

コスメの色や香りは受け取る側が選べるギフトを用意
ほしいものを登録できる機能

LINEギフトで商品認知度が向上

LINEギフト全体での出店ショップ数は2023年10月時点で約1,500店舗、取り扱い商品数は約40万商品。特に人気なのは、金券やチケットのほか、グルメやコスメ、雑貨など。LINEギフトをきっかけに、新たな商品展開や認知度向上につながった出店ショップもあるという。

にしき食品は、レトルトのカレーやスープなどを販売する「NISHIKIYA KITCHEN」を、2021年6月に出店。コロナ禍で外出の機会が限られていた中で、住所を知らない相手にも贈れるソーシャルギフトに注目して出店に至った。

出店当初は、商品を3種類セットにしただけのものなどを販売していたが、専用ボックスや用途にあわせたシールを貼るなどギフト商品ならではの設計を意識し、写真撮影などもこだわったことから、前年比約300%の売上という成果をあげられた。LINEギフトでの売上が伸びるにつれ認知度が向上し、自社ECの売上もアップしたという。

にしき食品。ギフト商品ならではの設計を意識し成長。自社ECの売上もアップ

洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティエ」や「C3(シーキューブ)」などを出店するシュゼットは、郵便ポストに届けられ再配達不要の商品などが好評で、2年間で売上は2倍に成長した。

シュゼット。郵便ポストに届けられ再配達不要の商品などが好評

イブ・サンローラン・ボーテやキールズなどビューティーブランドを展開する日本ロレアルは、ギフト需要の中でも最上位にある誕生日カテゴリを軸に販路を拡大。

スキンケアブランド「キールズ」の人気商品であるクリームに、誕生日メッセージをあしらった限定デザインの商品をLINEギフト限定で販売。贈り物として選びやすい3,000円台という価格にするために、容量を変更したパッケージをLINEギフト限定で制作。通常版と比較して月平均7.7倍の売上規模になっているという。

LINEギフト限定で誕生日パッケージの商品を販売

目標は毎年130%以上の成長

今後の注力テーマとしては、商品のさらなるラインナップ拡充で、普段遣いだけでなくラグジュアリーなど多様なギフトシーンへの対応を目指す。また、相手が色や香りを選べるパーソナライズ商品のラインナップも増やし、認知度を向上させていく。

事業目標としては、流通額は今後5年間で毎年前年比130%以上の成長を継続することを目指す。ユーザーは既に年間1,000万人規模の購買者層ではあるが、利用者数・利用回数・単価の観点でさらに広げていく。

今後の注力テーマ
事業目標

また、LINEアプリ全体の展望としては、リニューアルの一環で今年度中に「ショッピングタブ(名称未定)」の新設を予定している。

「LINEギフトの展開により、どういう買われ方をするのかという購買行動の蓄積が溜まってきました。そこからさらに、それを今後は自分買いというところにアプローチしていこうとLINEでは考えています。

LINEアプリ内にショッピングタブを新設してECを展開するのですが、どのようなサービスになるか、どういったことをやっていくかはLINE内でのナレッジもそうですし、ヤフーであったり、ZOZO、PayPayといったグループ企業と一緒に作っていく予定です」(嘉戸氏)

LINEアプリ内に「ショッピングタブ(名称未定)」の新設を予定