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NTT、キャラが「鏡から飛び出す」裸眼立体視の新技術

NTTは、裸眼で見ることができ、キャラクターが鏡から飛び出すように見える「超鏡空中像表示システム」を開発した。

NTTが開発する「超鏡空中像」(ちょうきょうくうちゅうぞう)とは、鏡の中にバーチャルキャラクターなどを表示する技術を進化させ、鏡の外にも像を移動させられる映像表示技術。VRゴーグルや3Dメガネが不要の、裸眼立体視の技術となる。

最大の特徴は、バーチャルキャラクターなどを鏡の中に表示するだけでなく、鏡の外へと自由に移動させられること。専用ゴーグルなどが不要の裸眼で立体視できる技術の発展形となる。開発されたプロトタイプでは、4~5人程度が横に並んでも、全員が空中像を立体視できる角度の広さも特徴になっている。

また、空中像へのインタラクション機能を備えており、手をかざして像の向きを変えるといった操作が可能になっている。

NTTでは、博物館や美術館など文化施設での展開を想定。デジタルサイネージやイベントでの展示でも活用できるとし、「実空間の中で、デジタル空間ならではの体験ができる」とアピールしている。

技術的には、移動ディスプレイと3面鏡の光学系を組み合わせたシステムとして開発されている。空中像用ディスプレイが移動することで、再帰反射素子とハーフミラーにより映し出される像の位置が変化し、像が正面の鏡(ハーフミラー)を飛び出す表示が可能になる。実在感を高めるため、床面に影を再現して表示したり、左右の鏡に反射像を表示したりする演出も用意されている。

開発されたプロトタイプは、60cm四方の鏡を3枚使用。角度をつけて並べた三面鏡の形で、ユーザー側の開口部は120cmとなっている

裸眼立体視で見られるシステムはすでに、ハーフミラーを活用するミラーディスプレイや、再帰透過・再帰反射を組み合わせたものなど、市場にはいくつかの製品が存在している。NTTが開発した新技術は、既存の製品のように像が鏡の中、あるいは外に固定されるのではなく、それぞれの領域を越えて「自在に移動できること」が開発テーマになっている。

一方で現在の課題は、空中像は2次元の映像データが基になっていること。平面感が目立たない工夫は施されているものの、原理的には平面の像であり、横から見ると平たい像として見える点が課題として挙げられている。また、すこしぼやけ気味になる画質や、コントラストの低下なども改善の余地があるとしている。

「超鏡空中像表示システム」は、7月28日から米国で開催されるCGイベント「SIGGRAPH 2024」でデモ展示が行なわれる予定。