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マネーフォワードと三井住友Oliveが連携 個人向け事業で新会社

マネーフォワード 辻 庸介CEO(左)、三井住友カード 大西 幸彦社長(右)

マネーフォワードと三井住友カードは17日、個人向け事業における、合弁会社の設立を含む資本業務提携を発表した。マネーフォワードが持つ、家計簿・資産管理アプリ「マネーフォワード ME」を中心とした個人向けの各種サービスと、三井住友カードのキャッシュレスサービスやSMBCグループの総合金融サービス「Olive」の価値を融合・最大化。「オープンなお金のプラットフォーム」として、より多くの人のお金にまつわる課題解決を目指す。

具体的には、マネーフォワードの「マネーフォワード ME」と、SMBCグループの「Olive」を連携し、シームレスな資金移動体験を提供。口座管理画面で、利用者が様々な金融機関に持つ口座残高を一覧で確認できるほか、直感的な操作で、金融機関をまたいだ資金移動までが実現できる機能を検討していく。

ポイントでも連携し、マネーフォワード MEの利用状況に応じて、「青と黄色のVポイント」がお得にたまる機能などを進める。

またリアルタイムでの家計管理に対応。三井住友カードのクレジットカードの即時利用通知サービスと、マネーフォワード MEの資産状況見える化機能を連携し、クレジットカードの利用情報をすばやく家計簿に反映。カードの使いすぎなどを防げるようにする。

ローンにおいても協力。三井住友カードのクレジットカードや「Olive」の利用状況と、マネーフォワード MEが持つ家計管理データの分析により、利用者が借入れ可能な金額を事前にサジェストする機能を検討していく。

AIアシスタントによるお金のサポートにおいても連携。家計・資産状況や、金融サービスの利用状況を分析し、一人ひとりにあったお金の使い方を提案するAIアシスタント機能を共同で検討していく。

このほか、個人事業主や法人向けのビジネス領域においても、両社の強みを掛け合わせた、新たな顧客体験の実現を目指すとしている。

マネーフォワード MEは、銀行やクレジットカード、証券、ポイントなど、2,460以上の金融関連サービスを連携し、入出金履歴や残高、購入履歴などの情報を取得し、家計簿を自動で作成できるサービス。利用者数は1,610万人、口座連携金融資産額は25兆円で、家計簿・資産管理アプリとしての利用率No.1としている。

三井住友カードは、三井住友銀行などと共同で、2023年3月から総合金融サービス「Olive」を展開。銀行口座、カード決済、ファイナンス、オンライン証券、オンライン保険などの機能をモバイルアプリ上でシームレスに利用可能とし、サービス開始1年で230万人以上が利用している。

Olive×マネフォは経済圏ではなくオープンなプラットフォーム

新たな合弁会社の出資比率はマネーフォワードが51%、三井住友カード(SMCC)が49%。合弁会社の出資前の株式価値評価額を338億円とし、SMCCへの一部株式の譲渡(140億円)とSMCCを引受先とする新会社への第三者割当増資(50億円)を行なう。

マネーフォワード 辻 庸介CEO(左)、三井住友カード 大西 幸彦社長(右)

新会社社長にはマネーフォワードの辻社長が、会長には三井住友カードの大西社長が就任する。名称や所在地は未定。事業開始予定時期は2024年12月を予定している。

三井住友カードの大西社長は、「両社でこれまでにない革新的なサービスを提供していく」とし、Oliveとマネーフォワード MEを連携させ、「お客様視点のオープンなお金のサービス」を目指すと説明。Oliveは、8月には300万口座を超える見込みと好調で、春にはフレキシブルペイ支払モードなど新たな決済手段を追加したほか、旅行予約など非金融サービスにも対応の幅を広げるなど、進化を続けると強調。マネーフォワードとの提携は「Olive進化の次のステップ」と語った。

Oliveはまもなく300万口座に
非金融まで拡大するOlive

金融の世界では、楽天やPayPayなど携帯キャリアを軸にした“経済圏”で囲い込む動きも強化されているが、三井住友カードの戦略は「オープン」と説明。三井住友銀行や三井住友カードなどグループ連携で“オトク”なだけでなく、様々なサービスと連携できることを強みとし、「Oliveを便利を実現するプラットフォームにしていく」と説明した。

その一例が、複数の金融機関の残高等をOliveアプリで確認し、ドラッグ&ドロップで送金まで実現するなど、「直感的な資金移動家計簿」の構想を紹介。銀行口座だけでなく証券口座や外貨、ローンなどとも連動するイメージとのことで、これらがOliveとマネーフォワード MEの連携が目指すものとなる。

また、「パーソナライズ」も提携により強化。例えば、マネーフォワード MEの家計状況から、投資信託の積立を増やすべきか、住宅ローンの繰り上げ返済を優先すべきかを提案。それぞれのユーザーに最適な、お金に関わる問題の課題解決を目指す。

Oliveと同様にVポイントもオープンなポイントとして展開。囲い込みではなく、ベストなパートナーと連携する方針という。また、金融以外の機能強化も進める。まずは個人向けでスタートするが、個人事業主やスモールビジネス向けでも提携を強化していく方針。

一方マネーフォワードにとっては、「祖業」の家計簿サービスの事業を切り出して、三井住友カードと合弁する形となる。12年間サービス提供し、1,610万人までユーザー拡大しているものの、辻社長は「まだやりたかった世界は実現できていない。家計簿の“見える化“は進められたが、課題解決・ソリューションは自社だけでうまく実現できないと感じていた」とする。

課題解決を進めるために、OliveとVポイントを使うことで、「ワクワクするサービスを作れる」とし、提携に向けた検討を加速。春に両社の会合から数カ月で今回の合意にこぎつけたという。マネーフォワード社内では、Olive登場時からサービスへの評価が非常に高かったことも、提携を後押しした。

今後、「エンベデッドファイナンスという形でマネーフォワード MEの中にOliveの機能を埋め込む」とし、三井住友カード利用時の即時通知とマネフォ取り込みや、マネフォ利用でのVポイント付与、資産に応じたローン提案、AIアシスタントでユーザーごとにアドバイスするなどの機能を強化。マネーフォワード MEを「見える化」から次のアクションに繋げるサービスに成長させていく。

マネーフォワード辻社長は、今回の提携を「我々としては12年間で一番大きな意思決定。個人向けサービスでの収益化は難しいと感じていた。ただ、風向きが変わってきた、金利が“ない”世界から“ある”世界に、NISAなどで社会の投資意欲も高まっており、個人のお金が動き出すマクロ環境になりつつある。この背景も提携を後押しした。面白いサービスができると思っているし、12年間で今が一番ワクワクしている」とも語った。