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SkyDriveとJR九州、空飛ぶクルマ事業化で連携
2024年7月4日 19:10
SkyDriveとJR九州は、SkyDriveが開発する「空飛ぶクルマ」の社会実装を目指し、九州エリアにおける空飛ぶクルマを用いた事業の成立可能性の検討を行なうことを目的とした連携協定を締結した。
九州エリアにおける将来的なまちづくりや沿線観光地への誘客の視点から、新たな技術を活用したモビリティを導入することで、九州エリアの開発、MaaS等へのビジネス領域拡大、地域課題解決といった地域創生へ貢献する。
今後、両者は次世代モビリティとして期待されている「空飛ぶクルマ」の実用化による誘客促進、地域活性化等を推進するため、事業スキームや導入エリアなどについて、具体的な事業可能性の検討を行ない、JR九州の持つ鉄道駅や商業施設等などを活用した「空飛ぶクルマ」運航ルート開設の実現を目指す。
主な連携事項か下記の通り。
- 展開地域
- ビジネスモデル
- オペレーションの概要
- ビジネスモデルにおける各当事者の役割
- 想定される需要と収益予測
JR九州「空飛ぶクルマの新名称を考えたい」
記者会見では、SkyDrive代表取締役CEOの福澤知浩氏と、九州旅客鉄道代表取締役社長執行役員の古宮洋二氏が協定書の調印を行なった。
福澤氏は、「鉄道会社は一番組みたい相手。移動の専門家であり、街づくり、観光の専門家でもある。いずれも新しいモビリティを普及させるには必要な要素になる」とした。
古宮氏は、「JR九州は鉄道と船を運営しているが、空からみる景色は、これまでとは違う体験が得られる。単なる移動手段ではなく、さまざまな用途に派生していくと考えている。早く実用化して乗って貰えるようにしていきたい」などと意気込みを語った。
具体的な用途の検討はこれからだが、JR九州の古宮氏は、「観光、ビジネス、すべてに可能性がある。山間地や離島などへの移動だけでなく物流や、通勤・通学もありえるかもしれない」などとした。
なお、「空飛ぶクルマ」という名称について、一般の人から「クルマではないのではないか」という声が上がっているという記者からの質問に対して、SkyDriveの福澤氏は「空飛ぶクルマは、クルマのように日常的に使う乗り物という意味で付けられているもの」と説明した。
一方、JR九州の福澤氏は、「初めて説明された時から、これはクルマではない、と思っていた。全く違う名前を考えたいが、今のところ良いアイデアはない」と語っている。なお、海外では「Advanced Air Mobility(AAM)」や「Urban Air Mobility(UAM)」などと呼ばれることが多い。
万博での商用飛行断念は安全性強化のため
また、2025年の大阪万博で目指していた商用利用を断念した件についてSkyDriveの福澤氏は、「万博は日本の小さなスタートアップでも世界にみてもらえる場であり、今回実現できなかったのは非常に残念。ただ、開発が進むにつれ、より高いレベルの安全性が必要なことがわかってきた。安全性を最優先に考え、万博ではデモフライトにとどめる判断としたのは仕方がないと考えている」としている。
ただ、「空飛ぶクルマを万博で見せる意義はある」とし、万博では世界で初めて、複数の企業が空港以外で機体を公開する場所となる。SkyDriveは、空飛ぶクルマの開発企業としては最後発だが、「実際に売る機体を見てもらえる意義は大きい」という。
安全性に関しては、現行のヘリコプターと同様の性能を目指すとする。たとえば、ヘリコプターはエンジンが停止しても、落下時の風圧でローターが自由回転することである程度の浮力を得られる「オートローテーション」という現象があり、これにより機体自体が健全であれば不時着できる可能性がある。しかし、ローターが小さいマルチコプタータイプの空飛ぶクルマでは、この機能が働かない。
福澤氏は、「空飛ぶクルマではオートローテーションは使えないが、ドローンのように複数のローターを備えるマルチコプターである特性を生かし、一部のモーターが停止しても、他のモーターを制御することでバランスを取ることができる」としている。4つのモーターしか搭載しないドローンの場合は、1つのモーターが停止するとバランスが取れず制御は困難だが、SkyDriveの機体は12機のモーターとローターを搭載するため、一部が停止しても制御できる可能性は高くなる。
ラストワンマイルの需要を狙う
SkyDriveが開発する機体は他社に比べて小型で乗員はパイロット1名と、乗客2名と少なく、航続距離も15km~40kmと短い。これは元々、空港から近くの商業施設や観光地などへ移動するような、“ラストワンマイル”の短距離移動を目的として開発されているため。
海外の機体が比較的大型で航続距離が長いものも多いが、福澤氏は「小型であることでコストや運用にはメリットがある」とする。同氏は「航空機は一般的に重量に比例してコストがあがり、SkyDriveの機体は他社の大型モデルよりも1/2か1/3ほどのコストで運用できる。また、軽量なため、スーパーの屋上の駐車場など、ヘリポート以外の場所にも着陸できるのはメリットになる」と語った。海外でも大都市での移動や地方空港からの移動など近距離移動のニーズは高いという。
同社は今後、万博でデモフライトを行なう機体のロールアウトも予定しているが、現時点でその時期は未定。2025年の万博でのデモフライト実施後は、2026年以降に日本での型式証明取得と商用運航開始を目指し、その後米国での型式証明取得を目指す。