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宇宙に浮かぶ15年前の「H-IIAロケット」に50mまで接近
2024年6月17日 19:25
JAXAは、アストロスケールの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIの実証衛星「ADRAS-J」が撮影した、15年前に打ち上げられ、現在はスペースデブリとなっている「H-IIAロケット」の画像を公開した。
撮影されたのは、2009年に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打上げたH-IIAロケット上段部分。打上げ後にそのまま軌道上に残留していたもので、現在はスペースデブリとして扱われている。ADRAS-Jは、H-IIAロケット上段部分を対象として、ランデブや近傍運用などの技術実証を行なうことがミッションになっている。
4月26日には、後方約数百mまで接近して撮影した画像が公開されていたが、今回は約50mまで接近しての連続撮影に成功し、より詳細な情報を取得している。撮影が行なわれたのは5月23日。
JAXAは商業デブリ除去実証(CRD2)に求めるサービスとして、「デブリ接近計画に対する実績の確認」「対象デブリの定点観測」「対象デブリの周回観測」「ミッション終了処理」の4つを定義しているが、今回撮影された画像は、このうちの一つ「対象デブリの定点観測」によるもの。
今回得られた画像により、ターゲットのスペースデブリの運動が、地心方向に沿った直立姿勢であるだけでなく、その機体の機軸周りの回転もほとんどない状態であることを確認。また、スペースデブリに大きな損傷がないことなど、表面の様相についても確認できた。なお、機体の左右に観察されるひも状のものは、打上げ時の画像にも見られた機体の表面保護用のテープと推定している。こうした情報は、今後のCRD2フェーズIIで捕獲を行なう場合に重要な知見となる。
アストロスケールは今後、「周回観測」や、同社が企画し実施する「企業ミッション」を実施。最後に、「ミッション終了サービス」(ターゲットに衝突しない安全な軌道に遷移する)を実施する予定。JAXAは今後も、ADRAS-Jの運用を技術的に支援しながら、取得した画像の詳細な分析を進める予定。
商業デブリ除去実証は、深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの2つを目的とするJAXAの取り組み。アストロスケールは、商業デブリ除去実証フェーズIの契約相手方として選定され、活動を行なっている。