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ドコモ、エアバスと資本業務提携 空飛ぶ基地局「HAPS」に1億ドル

NTTグループは、宇宙ビジネス分野における事業戦略を発表。宇宙ビジネス分野の新ブランド「NTT C89(シーエイティナイン)」を立ち上げたほか、NTTドコモとSpace Compassがエアバスと資本業務提携を締結。エアバスの子会社であるAALTOに最大1億ドルを出資し、2026年に地上20kmを数カ月間無着陸で飛行して通信サービスを提供する無人飛行体「HAPS」の実用化を目指す。

地球からみた星座の数は88個あるが、「NTT C89」は、NTTの宇宙分野における事業やサービス等を「星」と定義し、それらを有機的に繋げることで「新たに89個目の星座を作っていく」という思いから名付けられたブランド。

これにより、2021年にスカパーJSATと共同で発表した構想「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の実現にむけ、注力領域を定めて事業開発を加速し、グループにおける宇宙関連事業の拡大と宇宙産業全体の発展に貢献していく。

また、宇宙ビジネス分野では、自社の技術的な強みを活かし自前化を目指す領域と、新たな技術開発を行ないつつパートナーとの連携でサービス化を加速する領域に切り分け、それぞれの領域で事業開発と技術開発の両方を実行する。

自社の技術的な強みを活かし自前化を目指す領域としては、「GEO衛星を活用した領域」「観測LEO衛星および観測データPFを活用した領域」「高高度プラットフォーム(HAPS)を活用した領域」の3つに注力。パートナー連携でサービス化の加速を目指す領域は「通信LEO衛星を活用した領域」とし、AmazonのProject KuiperやSpaceXのStarlink Businessなどと連携を進める。特にProject KuiperについてNTT代表取締役社長の島田 明氏は「来年には何らかのサービスを開始したい」という意向を示した。

こうした取り組みにより、島田社長は「現在数十億円規模の宇宙事業について、2033年度単年で1,000億程度の収益を目指す」としている。

上空20kmからスマホ直接通信を実現する「HAPS」

NTTグループの注力する宇宙事業の一つである「HAPS」については、NTTドコモとSpace Compassが、エアバス・ディフェンス&スペース、同子会社のAALTO HAPSと、HAPSの早期商用化を目的とした資本業務提携に合意。NTTドコモとSpace Compassが主導し、みずほ銀行と日本政策投資銀行が参画するコンソーシアム「HAPS JAPAN」を通じて、AALTOに対し最大1億ドルを出資する。

AALTO(エアバス)が20年にわたり開発を行なっているHAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)「Zephyr(ゼフィール)」は、地上約20km上空の成層圏を、数カ月間にわたって無着陸で飛行しながら、地上への通信・観測サービスを提供する無人飛行体。グライダーのような形状で、推進用のプロペラを搭載。機体の翌幅は25mあるが、総重量は75kgと、人間1人分程度の重量しかない。

地上20kmの成層圏を100%ソーラー発電により駆動して飛行。バッテリーを搭載し、夜間は昼間充電した電力で飛行を続ける。実際に64日間の連続飛行時間を2022年に実証した世界最長飛行記録を持つ。搭載機材は地上基地局からのリレーを行なう通信機材と、地表の観測が可能な地球観測用機材を備える。

主な用途は、地上基地局の設置が困難な山間部や海上での通信サービスの提供。1機あたり直径100kmのエリアにサービスを提供できる。StarlinkなどのLEO(低軌道衛星)でも、同様のサービスをより広いエリアで提供可能だが、約500km上空を飛行するLEOよりもHAPSは飛行高度が低いことから、より低遅延なサービスの提供が可能。また、Starlinkのように特別なアンテナなどを用意せずとも、スマートフォンがあればHAPSとの直接通信が可能なことが最大のメリットになる。

このため、ユーザーは、山間部などに移動してもシームレスな通信が可能で、災害時に地上の基地局が利用不能になっても、HAPSを飛行させるだけで地上に新たな機材を設置させる必要がなく、災害時に迅速に通信環境を復旧できる。地球観測用機材によって、被災地の映像を迅速に届けることも可能。

2026年には、まず日本の南部でサービスを開始する予定。これは、HAPSが高緯度ではソーラー発電等の運用に課題があるためだが、すでに課題解決のメドは立っており、2030年には北海道でのサービス提供を目指す。なお、2026年のサービス開始は、現時点で世界初としている。

ドコモらは、人口減少により地方の通信インフラを維持するためには、地上基地局の維持だけでなく、非地上ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)の新たなアプローチが必要との考えで、HAPSもその手段の一つ。また、GEO、LEO、HAPSはそれぞれ異なる強みを持っており、状況に合わせて柔軟な運用を行なう方針としている。