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パナソニックのテレビが「Fire TV」採用する理由 「ネット動画は基本」
2024年5月8日 13:15
パナソニックは、薄型テレビ「ビエラ(VIERA)」のプラットフォームにAmazonの「Fire TV」を採用し、Fire TV搭載の新VIERA 6シリーズ13機種を6月21日より順次発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は13万円~52万円前後。
パナソニックのテレビは、OSとして2015年に「Firefox OS」を採用していたが、Firefor OSの開発終了に伴い、独自OSで事業展開していた。今回採用する「Fire TV(Fire TV OS)」は、Amazon「Fire TV」で使われているテレビ用ソフトウェアプラットフォームをテレビに組み込んだもので、パナソニックでは1月に同社テレビにおいてグローバルでFire TVを採用すると発表。日本においても42~65型の13機種で一気に展開する。
なお、Fire TV OSは日本においてはヤマダデンキによるFUNAIスマートテレビで採用しており、日本のメーカーとしては2社目。パナソニックでは、Fire TVの採用により、利用拡大が進むネット動画対応を強化するほか、放送とネットをシームレスに扱えるなど新たな体験価値をテレビに搭載していくという。
有機ELはZ95(65型/55型)、Z90A(65型/55型)、Z85A(48型/42型)の3シリーズ6モデル、液晶テレビはW95A(65型)、W90A(65型/55型/50型/43型)、W85A(50型・43型)の4シリーズ7モデルを展開し、いずれもFire TV OSを搭載。また、「新世代AI高画質エンジン」による画質向上や、HDMI入力の4K/144p対応などテレビとしての多くの機能強化も図っている。
なぜFire TVを搭載するのか
パナソニックによれば、Fire TV(Fire TV OS)搭載の理由は主に「アプリ対応」と「快適なUI」のためとする。同社調査では、テレビのネット接続率は82%と非常に高く、特にコロナ禍以降急速に拡大し、現在のテレビにおいて当たり前で、最も重要な機能となっているという。
また、動画配信サービスの利用率も総務省の'23年6月調査で52%と過半数が利用しており、新たなサービスやアプリにはネットサービス対応の強化が必須となる。そこで動画配信やスマートホーム連携と親和性の高いFire TVを新たなOSとして採用した。
まずは、Fire TV採用の理由の一つである「アプリ対応」から見ていこう。
これまでのビエラでは、NetflixやAmazon Prime Videoなど主要なビデオ配信サービスや音楽配信サービスに対応してた。約30種類のアプリ対応を行なっていたが、パナソニック独自のプラットフォームでの対応では、アプリの開発支援や検証などの手間も発生していた。Fire TVの採用により、Fire TVのエコシステムをそのまま活用できるため、それらの手間を省けるほか、Fire TVのアプリストアに対応できるため、動画・音楽配信だけでなく、ゲームなどのアプリも利用可能になる。
主な対応アプリは、Netflix、Amazon Prime Video、TVer、YouTube、Disney+、Lemino、U-NEXT、Hulu、ABEMA、NHK+、Amazon Music、Spotifyなど。
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション ビジュアル・サウンドビジネスユニット ビジネスユニット長の阿南康成氏は、「これまでの独自OSでは、広がるアプリ用途への追従は難しく、拡張性の高いOSへの移行は不可欠だった。今回、単にFire TVを搭載するだけでなく、パナソニックが培ってきた機能や技術、画質・音質などの本質価値を追求しながら、新たな価値を追加する」と説明する。
もう一つの大きな特徴が「UI」について。新ビエラでは、テレビ放送もネット動画と同じ画面に表示し、シームレスに選べるようにした。また、ユーザーごとに「プロフィール」を管理可能。録画番組や配信番組などは、家族それぞれの「好きなもの」を表示できる。プロフィールは6つまで設定できる。
「ホーム」画面は、Amazon Fire TVとほぼ同じ見た目だが、動画配信だけでなく、地上波などのテレビ放送も一括して表示する。また、リモコンのチャンネルボタンを押せば、通常のテレビ放送を見られ、番組表やUSB HDD録画など、リモコンで操作できる主要機能は、従来のビエラとほぼ同じ使い方が可能となっている。
「テレビ放送とネットサービスをシームレスに視聴可能にする」。それが今回のFire TV VIERAが目指したものだという。
なお、テレビの電源をONにしたときに「ホーム」を表示するか、OFFにする前に選択していた入力/チャンネルを表示するかを切り替えもできる。
放送・録画などのテレビの基本機能を継承
Amazonとの全面的な協力により、従来のビエラの機能もしっかりと実装。テレビの基本操作のほか、USB HDDへの2番組同時録画や放送番組の2画面表示などを利用可能で、番組表も従来のビエラと共通のものだ。
また、レコーダの録画番組などをテレビから再生できる「お部屋ジャンプリンク」、アプリで放送/録画番組を再生できる「Media Access」、録画した番組や放送予定番組を番組表でまとめて表示する「過去未来番組表」にも対応する。
リモコンは、細長い新デザインのものを採用。動画配信サービスのボタンは、Prime Video、Netflix、TVer、U-NEXT、Hulu、ABEMA、Disney+、YouTubeの8つ。また、Fire TVの搭載により、音声アシスタント「Alexa」による音声操作や検索に対応。Alexa対応機器をスマートダッシュボードから状態確認やエアコンなどの連動操作も可能となっている。
また、別売のUSBカメラを使ったビデオ通話も可能(Z95A/Z90A)で、Fire TV搭載のビエラやAmazn Echo Showシリーズ、Alexaアプリと通話できる。
新エンジンで“ネット動画”強化
テレビとしての基本的な画質や音質も強化した。今回Fire TV OSへのプラットフォーム変更を伴うが、従来のビエラの特徴的な機能はほぼ継承されており、画質や音質面は確実に強化したという。
画質面では、新たに「新世代AI高画質エンジン(4Kファインリマスターエンジン)」を搭載し、デュアル超解像やネット動画ノイズリダクションなどに対応。デュアル超解像は、AI超解像と従来の数理モデル3次元超解像を組み合わせることで、解像感とリアルさを実現するという。
ネット動画ノイズリダクションは、ネット動画に多いバインディングノイズ(階調の色割れ)を精細感を維持しながら抑制するもの。YouTubeなどの動画配信サービスでは、元の映像品質が安定しないものもあり、縞模様上のバインディングノイズが発生する場合が多い。それらを除去して、自然に再生することにこだわったとする。こうした機能は、Fire TV OS採用による、ネット動画重視の一環といえる。
新パネルやスピーカー強化の有機EL
有機EL最上位モデルのZ95Aシリーズでは、新世代のマイクロレンズ有機ELパネルと高輝度表現の「Bright Booster」を搭載。新たにリアルタイムパネル発行性能解析を追加し、解析効果をパネル制御に反映。パネルの発行性能をより正しく引き出せるようになったという。
Z90Aは高輝度有機ELパネルでBright Boosterに対応する。また、Z85Aの48型モデル以外の有機ELテレビでは、HDMIの4K/144p入力に新たに対応した。
スピーカーはZ95Aが出力150W(55型)160W(65型)で、サイドスピーカーやラインアレイスピーカー、上部のイネーブルドスピーカー、ウーファなどを搭載。上下左右から鳴り響くイマーシブサウンドを実現し、Technicsによる「Tuned by Technics」仕様。Z90Aもイネーブルスピーカーを搭載し、出力は80W。Z85Aは30W。
Z95A/Z80Aシリーズは6月21日に発売、Z85Aシリーズは7月19日から発売する。
- 「TV-65Z95A」 53万円前後
- 「TV-55Z95A」 37万円前後
- 「TV-60Z90A」 40万円前後
- 「TV-55Z90A」 29万円前後
- 「TV-48Z85A」 23万円前後
- 「TV-42Z85A」 22万円前後
液晶ビエラは3シリーズ
液晶テレビは、W95AがミニLEDバックライト液晶で、量子ドットシートを採用した上位シリーズとなる。W90AとW80Aは高輝度LEDを搭載し、W90Aは43型から64型の4モデル構成、W80Aは43/50型のスタンダードシリーズとなる。HDMIはW95A/W90Aが4K/144p対応。スピーカーは、W95Aが50W、W90Aが30W、W80Aが20W。
W95AシリーズとW80Aシリーズ7月26日発売、W90Aシリーズは6月21日に発売する。
- 「TV-65W95A」 37万円前後
- 「TV-65W90A」 30万円前後
- 「TV-55W90A」 26万円前後
- 「TV-50W90A」 20万円前後
- 「TV-43W90A」 19万円前後
- 「TV-50W80A」 14万円前後
- 「TV-43W80A」 13万円前後
また、新ビエラではゲーム対応も強化し、新たなコントロールボードを搭載。GUIで全てのアイコンを一覧表示できるほか、ゲームの暗部の見え方を調整できる「暗部視認性調整」に対応。また、グラフィックボード対応も強化し、認証GPUとの接続時にアイコンを表示し、AMDに対応した(W80Aを除く)。画質や音質についてはAV Watchの記事で詳しく紹介している。
パナソニックでは、画質・音質・使いやすさなどの「本質価値」の追求とともに、スマートホーム連携やデザインやライフスタイルフィットなどの「新価値創造」も強化し、2030年に向けて国内販売台数3割増を目指す。