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KDDIとトヨタ、接触事故の軽減を図る「接近通知」 スマホ向けに開発

KDDIは、トヨタ自動車と連携した取り組みの成果として、事故発生の「危険地点」を見える化するソリューションを2024年春から提供する。法人向けで、運送業やナビゲーションシステムなどでの活用を見込む。また、自動車と自転車の接近を互いに通知するシステムの開発も発表されている。

KDDIとトヨタは2020年10月に資本業務提携を締結し、通信技術とコネクティッドカー技術の研究開発をはじめとする共同の取り組みを発表していた。今回発表されたのはその成果の第1弾にあたり、一部は実証実験を実施、サービスを提供できるまでの形に仕上げた。

両社による取り組みは、全体像として「安心・安全」「グリーン」「モビリティ体験価値の拡張」という3つのテーマを設定しているが、今回は「安心・安全なモビリティ社会の実現」がテーマの取り組みについて、具体的な成果が紹介されている。

2020年10月に資本業務提携を締結し共同の取り組みを拡大
安心・安全
グリーン
モビリティ体験価値の拡張

危険地点をあらかじめ把握

KDDIが保有する人流データ、トヨタが保有する車両データ(走行、急ブレーキ、ABS発動など)、過去の事故発生数などのオープンデータを用いて生成した、デジタルツインを活用。AIによる分析を経て、事故発生リスクが高い場所を「危険地点スコアリング」として可視化する。

このデータは10m四方単位で表示されるため、街なかの小さなT字路などにも対応、事故発生リスクの高い場所を予め把握できる。主に自治体や法人向けに提供する方針で、例えば道路標識を新設するといった対策に役立てられる。

危険地点スコアリングでリスクが高いとされた地点の例
こちらはリスク小の地点

車と自転車の双方に接近通知

位置情報を活用し、自動車とさまざまなモノを連携させる「Vehicle to X」の一環として、互いの接近を通知する「Vehicle to Bike」の開発が行なわれている。

自動車と二輪車の位置情報を基にして、危険な交差点に複数の車両が同時に接近した際、運転手に事前に通知する技術。衝突・接触といった事故発生が予測されるタイミングから5~6秒前に通知を行ない、減速を促すなどの行動につなげる。

スマートフォンアプリで提供。画面を見なくても音声などで分かるようにしている

車載のセンサーや被害軽減ブレーキだけでは防ぐことがむずかしい、見通しの悪い交差点での交通安全に貢献することを目指したもの。2月には東京都板橋区で実証実験が行なわれ、タクシーの車両とデリバリーサービスの自転車が参加、交差点への進入速度が平均で10.1km/h減速するなどの効果が確認されている。

コネクティッドカーのみまもりセンター

このほかコネクティッドカーに関する情報を横断的に取り扱う「つながる みまもりセンター」も開発されている。パソコンやスマートフォンにセキュリティが必要なように、コネクティッドカーやその関連システムにも、攻撃を未然に防いだり、被害を軽減したり、原因の切り分けや回避・対処を容易にするシステムが求められる。

「つながる みまもりセンター」では、通常とは異なる通信パターンを検知し、個車影響軽減・回避対策を実現するのが目標。今後は実運用を目指した検証を実施するという段階で、グローバル通信プラットフォームへの適用を目指す。

通信技術で交通事故低減を図る

KDDIは20年以上前からIoTなどモノの通信に取り組んでいるほか、トヨタとも20年以上にわたって自動車と通信技術の分野で連携し、カーテレマティクスは世界中で提供されるに至っている。

KDDI 執行役員 経営戦略本部長の門脇 誠氏
ゲストとして登壇し挨拶したトヨタ自動車 情報システム本部 情報通信企画部 部長の木津雅文氏

一方、交通事故は現在もモビリティ社会の課題であり続けており、両社の取り組みの成果として、まず「安心・安全」のカテゴリーで対策を打ち出すなど、課題感は根強い。例えば自動車と自転車の接触事故は「見通しの悪さ」に起因するもの40%を占めるなど、簡単には解決できない要因も多いという。

「通信のチカラで何かできないかというのが課題感」(KDDI 執行役員 経営戦略本部長の門脇 誠氏)としており、接近通知サービスはそうした課題の解決を図る内容。

一連の取り組みは、「事業者に閉じていたのでは、モビリティ社会の課題解決を目指す姿勢にそぐわない」(門脇氏)ともしており、公共性の高いサービスとして、事業者の輪を広げていく意向も示されている。