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auの5Gが「本領発揮」へ “本命”周波数のエリアが首都圏で倍増
2024年2月15日 17:42
KDDIは、2024年度以降に取り組む携帯電話ネットワークの展開について説明し、auの5Gは導入期から普及期に移ることで、通信エリアや品質を大幅に拡大することなどを解説した。
一般的に携帯電話のネットワークは、一世代の整備に10年を要し、寿命は約20年以上続くというのがこれまでの展開でみえてきている。現在主流の4Gも、10年を経て世界最高水準の品質で展開されるに至っている。一方、5Gは2020年のスタートから4年目を迎えるところで、本格的な展開はこれからだという。
「2023年度末(2024年3月)までを、5Gの導入期とみている。これまでは4G用の周波数の転用で“面”を作っていく導入期だった。2024年度以降は(Sub6の本格展開で)いよいよ普及期に入る。Sub6のポテンシャルを最大化していく」(KDDI 執行役員 技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏)
Sub6(サブシックス)とは、6GHz未満の周波数帯を指し、携帯電話ネットワークに用いられる3.7GHz帯、4GHz帯、4.5GHz帯などのこと。4G用を転用するのではなく、5G用に用意される大容量の新周波数となるため、5Gの性能を活かす“本命”のネットワークとしての構築が期待されている。
KDDIはSub6として3.7GHz帯と4GHz帯あわせて100MHz幅×2という広帯域を取得している。加えて、2023年度末までのSub6の開設計画局数は34,267局と、他社の倍以上。さらに、現在は衛星干渉抑止として出力を制限している一部Sub6の基地局について、2023年度末に制限が緩和され、2024年度以降は本来の出力で展開できるようになる。
首都圏では、Sub6の基地局を2023年度末までに約6,000局展開する計画。このうち出力を制限している約2,200局が、本来の出力になる見込みで、エリア拡大に大きく反映される。
これらにより、首都圏ではSub6がカバーする5Gエリアが大幅に拡大、100mメッシュでのエリア展開予測では、2023年11月で2.1万メッシュだったところが、2024年度以降は4.3万メッシュにまで、倍以上に拡大するという。
KDDIのSub6は、高速・大容量の5Gの性能を活かせる周波数と帯域幅のため、スポーツのライブ中継を観るといったニーズが高まっている使い方でも快適になり、生活の中で快適さを実感しやすくなるとしている。
基地局数とSub6の出力「大きな武器になる」
KDDIは、5Gを含めたネットワーク展開と戦略について「シナリオ通りに実行している」(前田氏)と語る。
今までの、4G用の既存周波数を5G用に転用していく初期の「導入期」の展開や戦略は、他社と同じという。一方、2024年度以降は、衛星干渉抑止の条件が緩和され、干渉の問題があったSub6の3.7GHz帯などが本来の出力で展開できるようになること、2023年度末までに他社の倍以上のSub6の基地局を展開することが、「大きな武器になる」(前田氏)と自信をみせる。
Sub6の本格展開が始まった後は、ミリ波の活用も行なっていく。5Gの本格的な普及期に入ると、Sub6の200MHz幅でも十分ではなくなるとの見立てで、局所的に大容量の通信ができるミリ波帯も有効活用していく。
このほかグローバルでも活用できる、5G用の2.3GHz帯(40MHz幅)を取得し運用を開始している。放送事業者とのダイナミック周波数共用の取り組みが始まっており、こちらも有効活用に取り組んでいく。
スターリンクが被災地で活躍、スマホ衛星“直接通信”は展開開始
KDDIは衛星インターネットのスターリンクを積極的に導入し登山道やイベント対策などで活用しているほか、能登半島地震では多くの基地局が、後ろ側にある光回線(バックホール回線)に損傷を受けたことから、バックホール回線にスターリンクを使う復旧手段が大いに活躍した。アンテナが小型で現場に搬入しやすく、すぐに衛星を捕捉できるシステムや、標準搭載されている融雪機能も役立ったという。
KDDIはすでに、スターリンクの第2世代の衛星(V2、V2 mini)を活用し、地上のスマートフォンと衛星が直接通信するサービスを2024年に提供すると発表済み。2024年1月3日にはスペースXが21機の「V2 mini」の打ち上げに成功しており、このうち6機は携帯電話と直接通信する機能を備えている。6機でカバーできる範囲は限られるが、衛星間通信を行なうことで地上局につなげる仕組み。KDDIとしてサービス・進捗の発表はなかったが、スペースXの衛星システムが着実に構築されていることが紹介された。