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SLIM、マイナス170度の月で眠りにつく 最後の画像を送信

SLIMが最後に送信してきた月面の画像(©JAXA、立命館大学、会津大学)

JAXAらは、太陽光発電を開始したことで1月28日以降、月面での運用を再開していた小型月着陸実証機「SLIM」から、当初の計画よりも多くの観測データを取得したと発表。現在は月の夜を迎え、太陽光発電はできない状態となり、-170度の月面で眠りについているという。

SLIMが太陽光発電により再起動した後は、月面で当初の計画通り、10バンド分光観測を実施。JAXA、会津大学、立命館大学らが公開した、電源復旧直後にSLIMが月面を撮影した画像では、太陽の方向が西に変わったことで、画像での影のつき方が変わっていることがわかる。

着陸直後の画像(©JAXA、立命館大学、会津大学)
電力回復直後の画像(©JAXA、立命館大学、会津大学)

観測対象の岩石は、日射条件が異なったため、観測対象を一部変更・追加を行なった。観測対象の一つで「あきたいぬ」と名付けられた岩石は、カメラのオートフォーカス機能による測距により、岩石までの距離は18m、岩石の横幅は63cmあることがわかった。

着陸直後に観測予定とされていた岩石(©JAXA、立命館大学、会津大学)
今回観測した岩石(©JAXA、立命館大学、会津大学)
岩石「あきたいぬ」(©JAXA、立命館大学、会津大学)

SLIMは、電力回復後、333枚のフルスキャン画像を波長を変えて2回、岩石やレゴリスの高解像度10バンド観測を13カ所の観測対象に対して実施。JAXAらは、得られたデータをもとに、月の起源の謎にせまる岩石の判別と鉱物の化学組成の推定の解析を進める。

電源復旧後、実際にSLIMが運用されたのは、1月30日~1月31日までの間。2月1日に再度、探査機の通信機をオンにするコマンドを送信したが、反応は無く、機能が停止していることを確認した。月面の夜の気温は-170度と言われ、SLIMはその状況に耐えられる設計はされていない。極寒時には、搭載している部品が縮んで「はんだ」にヒビが入ることなどが原因で故障することが考えられるが、2月中旬以降、月が朝を迎え、太陽電池に日が当たる時期に、再運用に挑戦するとしている。

MBC観測計画完遂直後のSLIMチームとMBCチーム(©JAXA、立命館大学、会津大学)