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BOLDLYの自動運転バス、千葉県で通年運行開始

千葉県の横芝光町は、BOLDLY、京葉銀行の協力の下、持続可能な公共交通サービスの提供を目指して、2月2日から自動運転バスの通年運行を開始した。

横芝光町は国の補助金を活用して自動運転システムと遠隔監視システムを搭載した新型の小型EVバス(「BYD J6」をベースにティアフォーが自動運転車両に改造したEVバス)を1台導入。町内の公道において自動運転「レベル2」で実証走行を行なう。

走行ルートは東陽病院~横芝駅~ピアシティ横芝光(商業施設)の全長約5.5km。日中に1日10便走行する。走行速度は自動運転時は時速35km以内。利用者は予約のほか、バス停で自由に乗ることができる。利用料は当面のあいだ無料。

5.5kmの区間を町民の足として1日10便運行する
バス停には一部既存のバス乗り場をそのまま利用

車両は事前に作成された3DマップとLiDAR(レーザーセンサー)やカメラを使った外界センシングの情報をもとに自己位置を推定しながら自動走行する。BOLDLYのシステム「Dispatcher」を使った遠隔監視のほか、必要に応じて人が手動で介入する。今後運行可能な走行ルートを拡大、機能向上などを経て「レベル4」の完全自動運転を目指す。

横芝町に導入された自動運転車両。レベル2で運行されるが将来的にはレベル4を目指す
ティアフォーが自動運転車両に改造した車両を使用
本体各所のLiDARやカメラで外界をセンシング
バス車内の座席数は15席
運転席
車内監視用のカメラ
BOLDLYの遠隔監視システム「Dispatcher」。
運用はセネックが行なう
試乗会時の車内
自動運転バスは自分で障害物を判断し回避ルートを生成して走行
複雑な状況もリアルタイムで認識して対応する
レベル2なので乗務員は常にこの状態で運転席に座っている

地域における自動運転の可能性

横芝光町 町長 佐藤晴彦氏

横芝光町町民会館で行なわれた出発式ではまず、横芝光町 町長の 佐藤晴彦氏が「移動需要が変化するなか、新しい移動手段が登場している。各種手段を検証した結果、自動運転バスの事業に取り組むことにした。ドライバー不足問題に対応するため自動運転バスを走行させることで既存の公共交通と連携した新しい交通ネットワークを構築し、すべての人が暮らしやすい町を作りたい。国内や地域における自動運転の可能性を知らせたい」と挨拶。各関係者に感謝の言葉を述べた。

BOLDLY 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏

続けて、事業者代表としてBOLDLY 代表取締役社長 兼 CEOの佐治友基氏が「きっかけを作ってくれた京葉銀行に感謝する。自動運転バスは持ってきておしまいではない。どう使うかのアナログ技術が大事」と述べた。

BOLDLY(ボードリー)はソフトバンクの子会社。自動運転モビリティ技術の導入を進めており、「レベル4」運行を目的としている。佐治氏は「全国140箇所以上の地域で実証実験を進めてきた。一番嬉しいのは高齢者から『気兼ねせずに出かけられるようになった』と言われたこと。そのお子さんからも喜ばれている」と述べ、「日本でも最先端の電気バスを導入できた。地元交通事業者にも興味を持ってもらって、一部バス停を共有させてもらった。最終目的はしっかり運行する体制を作って、事故なく安全に進めていくこと、と語った。

地域の公共交通インフラを支えるモデル事業

千葉県議会議員 實川隆氏

千葉県議会議員の實川隆氏は「歴史的な日に立ち会えたこと、光栄に思う。交通の利便性や安全性を高めるだけでなく環境にもやさしい先進技術。地方では移動困難な人への対応など課題もある。ここで実証走行が行なわれることは将来の街の活性化につながる。多くの人に受け入れられ住み良い街としてさらに発展することを期待している。実証走行がレベルをあげていき、全国のモデル事業となることを期待している。安全な運行を祈念したい」と述べた。

横芝光町議会議長 鈴木和彦氏

横芝光町議会議長の鈴木和彦氏は「公共交通の柱の一つであるバスのドライバー不足が危惧されている。多くの皆様に先進的で夢と希望が持てる街と思ってもらいたい。各地域における公共交通の利便性向上の礎となることを願う」と語った。

京葉銀行 取締役頭取 熊谷俊行氏

京葉銀行 取締役頭取 熊谷俊行氏は「我が国は高齢化が進んでおり、タクシーやバスの利用者は減少、運転手は人手不足。地域の公共交通インフラは課題を抱えている。この地域は成田国際空港の機能強化や圏央道・銚子連絡道の整備など人やものの動きにプラスとなるポテンシャルを持っている。このトライアルが多くの実りある成果を残し、持続可能な公共交通、スマートシティに繋がることを祈念している」と述べた。

成田国際空港 代表取締役社長 田村明比古氏

成田国際空港 代表取締役社長 田村明比古氏は「いま全国的に地域の公共交通サービスのあり方が問われている。背景には高齢化が進行するなかで、どのように交通弱者の移動手段を確保していくのかという問題や、定住人口・交流人口を増やしていくために交通アクセスをどのように向上させていくのか、サービスの担い手不足、脱炭素化など解決すべき問題が各地に共通して存在している。こうしたなか実証走行実験が開始されることは、今後の地域課題の解決に向けた重要な一歩」と述べ、さらに「成田空港では2029年の第3滑走路供用へ向けた整備が始まっている。環境対策を進めながら地域のご理解を得て進めていきたい。老朽化施設を更新して新たなニーズに応える空港に生まれ変わるための検討も行なっている。将来にわたって地域と空港が持続的に発展していけるよう課題の検討を深めていきたい」と語った。

ルート設定はデマンドタクシーの利用頻度から

式典に続けて、テープカットと試乗会が行なわれた。来賓・報道陣とも、担当者たちに熱心に質問をしながら自動運転車の乗車を体験した。今回のルートは以前から走行しているデマンドタクシーの利用頻度から決められたという。今後、横芝町では町民への告知などを進めて利用を促進していく。

横芝光町を走行中の自動運転バス
試乗会の様子
テープカット。左から成田国際空港社長 田村明比古氏、横芝光町議会議長 鈴木和彦氏、国土交通省自動運転戦略室長 林健一氏、横芝光町長 佐藤晴彦氏、千葉県議会議員 實川隆氏、京葉銀行頭取 熊谷俊行氏、BOLDLY佐治友基氏