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ケータイ4社共同で能登半島地震の応急復旧 道路寸断が焦点
2024年1月18日 19:07
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、令和6年能登半島地震における携帯電話サービスの復旧について、共同で記者会見を実施した。
4キャリアはいずれも、立ち入り困難地域を除いて携帯電話サービスの応急復旧を完了。一方、立ち入り困難地域にある設備は手つかずのため、道路が復旧次第、速やかな応急復旧を目指す。今後は、停電の解消、道路の復旧、寸断された伝送路(光ファイバー網)の復旧などを経た上で、本復旧を目指す段階に入っていく。
4社で共通しているのは、土砂崩れやトンネル崩落など道路の被害が多く、車両の通行が限定的になったり通れる道路で渋滞が発生したりしたことで、基地局を復旧させる車両の移動に時間がかかったこと。また、土砂崩れや電柱の倒壊による光ファイバー網の切断も多く発生したことで、基地局や通信ビル、通信ビル同士をつなぐ固定回線にも大きな被害が発生、本復旧を難しくする要因になっている。さらに輪島市、珠洲市を中心に、停電が長期化していることも影響している。
応急復旧においては、避難所のあるエリアを重点的にカバーするなど柔軟な対応がなされている。各社が持つ災害対策用の機材が投入されており、衛星携帯電話を災害対応機関に貸し出したり、スターリンクを配備したり、ドローン型基地局を投入したりして、通信環境の応急復旧に務めている。自衛隊との連携も実施し、ドコモは基地局車を、輸送艦やホバークラフトで海上から被災地に輸送するなどしている。
キャリア同士で連携
これまでの大規模災害とは異なる対応になったのが、通信キャリア同士で連携して復旧活動にあたっていること。
例えば、海上の船から沿岸の被災地域を通信エリアとしてカバーする「船上基地局」が投入されているが、NTTドコモが持つ船にKDDIも機材を持ち込んで、両社の設備を運用している。災害発生時、ドコモの船は長崎に停泊していたとのことで、KDDIが持つ船よりも早く現場に到達できるとの見込みだったことから、ドコモの船にKDDIが乗船する形をとった。
ほかにも、停電の長期化により、移動基地局車を長期間稼働させるための給油が重要になったことを受けて、KDDIとソフトバンクは給油拠点の相互利用を行なっている。
なお、ドコモとして船上基地局の災害対策運用は初めて。広いエリアをカバーでき、有効性は高いという結論を得ているという。一方、想定外だったのは長期化している運用期間。荒れがちな冬の日本海に停泊していることで「船の揺れ」が相応にあり、普段から乗船しているわけではないスタッフは体調の面で厳しくなり、1週間程度で交代を余儀なくされたという。ドコモとKDDIは、積み込む食料の量などを含めて、船上基地局の長期運用には課題が残っているとしている。
スターリンクが活躍
新しい設備で存在感を発揮したのは、衛星ブロードバンドのスターリンク。アンテナは小型・軽量で可搬性に優れるほか、衛星を補足するまでの時間が短いなどセットアップも容易で、低遅延・高速な通信環境を実現できる。避難所などにはWi-Fiとセットで設置され、動画も利用できるような通信環境を実現している。
特にKDDIは基地局の復旧用回線としても投入し、エリアの応急復旧に大きく貢献した。可搬性に優れ、山の中も移動しやすかったという。
基地局の後ろ側につながっている固定回線が被害を受け、電源の回復だけでは簡単に復旧できない見込みとなっている今回のような災害では、衛星通信サービスなど「空」を使う手段の有効性が改めて示された。
KDDIはすでに、スターリンクの次世代の衛星通信網を使い、スマートフォンと衛星が直接通信できるサービスの概要を発表している。当初利用できるのはSMSだけだが、災害時に携帯電話のネットワークがダウンしても、衛星と直接つながってSMSで救助を求めるといった利用が可能になるとしている。
ソフトバンクや楽天モバイルもスマートフォンと低軌道通信衛星が直接通信する取り組みは進めており、空からのアプローチは有効として開発していく方針。
固定網に大きな被害
4キャリアの担当者は、現在までの状況を振り返って、道路の寸断で移動が大きく制限されたことや、雪が降る季節に重なったことで移動に支障が出やすいことを特徴として挙げている。また、特に能登半島の北部では光ファイバー網など固定回線が切断される被害が大きいとして、完全復旧には時間がかかる見通しを示した。立ち入り困難地域の被害状況が分からないことと合わせて、現時点で完全復旧の見通しは不明となっている。
現在検討されている事業者間ローミングについては、今回のように4キャリアすべての設備が被災する状況では有効に活用するのは難しい、というのが4社の見立て。一方、例えば、設備の被災状況に各社で差が出た新潟県などの場合は有効だったとして、引き続き整備を進めていく方針。