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日本人の食塩の摂りすぎ問題を解消 食塩使用量を見える化「ソルとも」
2024年1月11日 17:45
東洋製罐グループホールディングス、おいしい健康、シャープの3社は、デバイスとアプリを組み合わせ、食塩使用量を見える化することで減塩料理を実現する調味料IoTサービス「ソルとも(Saltomo)」を開発した。サービス実用化に向けた実証実験への参画企業の募集を1月11日より実施する。
調味料IoTデバイスと専用スマートフォンアプリで構成されるサービス。デバイスには顆粒調味料に対応するプッシュタイプと、液体調味料等に対応するトレイタイプの2種類がある。現段階ではプッシュタイプは食塩、トレイタイプは醤油のみの対応だが、実証実験やサービス実用化を通じてニーズを調査し、対応する調味料の拡大を検討する。
各社の役割は、東洋製罐グループが調味料IoTデバイスの容器開発、おいしい健康が専用スマートフォンアプリの開発、減塩レシピの提供、シャープが調味料IoTデバイスの開発・提供、アプリの開発。
なお、東洋製罐グループは包装容器事業などを展開しており、金属、ガラス、プラスチック、紙など様々な素材の容器を年間500億個製造している。おいしい健康はヘルスケア・スタートアップで、AI献立・栄養管理アプリを提供している。
ソルとも提供の目的は、調味料の正確な計量や食塩摂取量の計算を簡単に行なえるようにして「減塩」への取り組みをサポートし、健康的な食生活の促進に貢献すること。2種類のデバイスで使用量を測量・記録し、その情報を専用アプリで確認できる。
プッシュタイプは、ワンプッシュすると顆粒調味料が0.3g出てくる容器。計量スプーンなどを使って洗う手間を軽減するとともに、減塩をサポートする。
0.3gとしている根拠は、1人分の管理栄養士レシピに含む調味料の分量が0.3gであることから来ている。食塩の小さじ1は5~6gで、0.3gのような微量な食塩を目分量で計量するのは難しいため、一振りで出せるようにするために開発した。
トレイタイプは重量を量るデバイスで、調味料が入った容器を保管する際の台として使用する。調味料の容器を台から手に取って使用してデバイスに戻すと、使用前後の重量差から使用料(ml)を自動で記録する。
専用アプリでは、デバイスで自動記録された、食塩を使用した日付・種類・量などを確認できる。醤油の場合、濃口、薄口、さしみ醤油で食塩使用量は異なるが、クラウド上のデータベースから使用している醤油の種類を選んで登録することで、異なる製品でも食塩使用量を正確に量ることができる。
また、食塩使用量のデータに基づき、ユーザーに適した減塩レシピを提案する。アプリのレシピの調味料使用量の表記は、gやmlと小さじ1などを併記しており、デバイスを使用しない場合でも使用量の目安がわかるようになっている。「少々」などの曖昧な表記は行なっていないという。
プッシュタイプにおいては食塩使用量の把握のほか、ワンプッシュで一定量が出るため、子供や普段料理をしない人なども含めて誰でもレシピ通りの分量で料理が作れるというメリットもある。
日本人の食塩の摂りすぎ問題解消へ
開発の背景には、平均的な日本人の食生活で必要以上の食塩を摂取する傾向にあることが報告されており、食塩の摂りすぎにより生活習慣病などのリスクが高まる恐れも指摘されているという問題がある。厚生労働省によると、健康維持のための目標量は男性7.5g/日未満・女性6.5g/日未満を推奨しているものの、日本人の1日当たりの食塩摂取量の平均値は10.1gとなっている。
こうした課題に着目し、東洋製罐グループとおいしい健康は、日本の食卓の「減塩」に貢献するべく、'19年に協業を開始し、'21年に資本・業務提携契約を締結。医師や管理栄養士、医療機関、介護施設のスタッフなど、健康に配慮した食の現場の声を知るおいしい健康の知見と、容器の素材・成型などにおける東洋製罐グループの技術力を活かした取り組みを行なってきた。'20年からシャープも参画し、3社共同で検討を進めた結果、ソルともの開発に至った。
ソルとものユースケースとして考えられているのは第一に、医療現場における医者と患者の情報共有。食事療法を必要とする人に渡すことで、これまで難しかった減塩を意識した調理を簡単においしく続けられるとともに、情報共有のための記録の手間も削減できる。
飲食店の業務効率化も見込んでおり、シェフのトレーニングやオペレーションの簡素化のために使用することで、人手不足の時代の飲食店業務をアップデートできるとしている。
実証実験や実用化当初は企業や団体向けのサービスとして展開するが、将来的にコンシューマ向けに展開することとなれば、簡単に分量を量れるため子供も含めて誰でも家事に参加しやすくなり、また高齢一人暮らし世帯の見守り機能としての活用も可能となる。そのほか、分量を見える化することで、親から子供などへのおふくろの味の伝承にも役立つ。
ビジネスモデルは、食品メーカー等に対しての、データを活かしたマーケティング支援。ユーザー属性ごとの、曜日ごと、時間ごと、1カ月の合計といった調味料の使用量のデータが取れる。これらのデータを元とした分析データを、食品メーカー等に提供する。
今後は、病院での展開、調理師によるメニュー開発といった使用を想定する現場での使用、および調味料メーカーにおける顆粒・液体調味料の利用実態調査を実施する。加えて、飲食店でのスパイス、テーブル調味料、薬味がどれくらい使われたかの調査も実施し、メニュー提案や在庫管理などにおける有用性を検証する。
将来的には、家庭の食事と外食の食事記録の合算表示、様々な調味料の自動判定などの機能を検討する。