ニュース

NTT、耳元の音を空間制御してクリアに聞こえる音源配置技術

周囲の音の空間的な特性を利用して耳元の音響デバイスの音を聞き取りやすく追加する音源配置技術

NTTは、音を閉じ込めるオープンイヤー型の音響デバイスで、ユーザーの周囲に複数の音が混在するコンサート会場などの賑やかな場面でも、耳元の音を空間的に制御することで必要な音がクリアに聞こえる技術を確立した。「聴きたい音」が周りに漏れずに自分だけに聴こえ、「聴きたくない音」はカットするPSZ(Personalized Sound Zone)をコンセプトとする研究開発成果の一つ。PSZ技術は、NTTソノリティのコンシューマー向け音響ブランド「nwm」(ヌーム)のオープンイヤー型イヤフォンに採用されている。

リモートワークなどでイヤフォンやヘッドフォンの長時間利用が増えているが、これらの音響デバイスの長時間利用は耳への負担が高く健康への影響も懸念されている。NTTではこの課題を解決するため、耳を塞がないイヤフォンやヘッドレスト型スピーカーなどの音響デバイスの研究開発をすすめ、音響デバイスの音を周囲に漏らさない技術を確立してきた。

しかし、耳を塞がない音響デバイスは、周囲の音がユーザーの耳に到達するため、音響デバイスの音に影響を与える問題がある。そこでNTTでは、ユーザーの周囲に複数の音が混在する環境下でも音響デバイスからの音を聞こえやすくする技術を研究開発。今回、外からの音の空間的な特性を利用して、聞き取りやすく追加する方法と、外からくる音を減らす方法の2つの技術を確立した。

音の位置を制御して聞き取りやすさを向上

耳を塞がない音響デバイスを利用するユーザーは周囲の音が聞こえるため、周囲の音が音響デバイスの音に被さり、音が聞こえにくくなる課題がある。そこで、ユーザーが聞きたい音響デバイスの音を提示する位置を制御し、周囲の音が被らない位置から、あたかも聞こえるように提示することで、周囲の音が耳に聞こえる状況下でも音による情報提示を可能にした。

さらに、遠くのスピーカーでは再現することが難しいユーザー近傍の音を、耳元の音響デバイスより再生し、より定位感を高めることも実現。「第180回 NTT東日本 N響コンサート」小布施町サテライト配信公演では本技術を用い、耳を塞がない音響デバイスからの解説音声の聞こえる位置をオーケストラの演奏から分けることで、解説音声の聞き取りやすさの向上を図ったという。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)が更に進化

耳を塞がず音響デバイスの音を聞き取りやすくするためには、周囲の不要な音を抑圧する必要がある。そのためには、耳から離れたスピーカーから出す音波で耳元の不要な音波を打ち消す必要がある。しかし、耳から離れたスピーカーで出る打ち消し音がマイクで収録されるため、動作をさせることが困難だった。さらに抑圧する領域を拡大させるためには従来のスピーカーでは出力も不足していた。

そこで、NTTはPSZのスポット再生技術を適用した新たなスピーカーを開発。打ち消し音がマイクに収録されることを低減することで、耳を塞がないANCの安定動作と領域の拡大を実現した。