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ソフトバンクと日建設計、自律的に進化するビルで新会社
2023年10月25日 16:12
ソフトバンクと日建設計は、データを活用して自律的に進化し続けるスマートビル「Autonomous Building(オートノマス ビルディング)」の構築を支援する合弁会社「SynapSpark株式会社」(シナプスパーク)を12月1日に設立する。
シナプスパークは、スマートビルの構築支援と、スマートビル向けのアプリケーションやデータ連携基盤(ビルOS)の企画・提供を目的に設立する会社。ICTやデータ基盤に関する技術や知見を持つソフトバンクと、建築設計と都市開発の実績を持つ日建設計が、デジタルと建築に関する知見を掛け合わせて、ビルのデータを活用した社会課題の解決を目指す。
近年、ビル機能に必要とされる条件が変化しており、特に脱炭素化や省力化、安全性向上などのビル単独では解決できない課題の解決が必須とされ、対応が複雑化しているという。課題解決のソリューションとしてスマートビルが有効とされていることから、スマートビルの構築に向けた支援を行なう新会社を設立する。
ソフトバンクが設計会社である日建設計と組んだ理由の1つに、ソフトバンクも開発に関わっている「東京ポートシティ竹芝」において、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏が感じた、設備システムと外部の最新アプリケーションとの連携の難しさがある。
東京ポートシティ竹芝は東急不動産と鹿島建設の共同開発による複合施設。ソフトバンクと協力し、オフィスタワーは1,300以上のカメラ・センサー類が張り巡らせたスマートビルとして開発された。
具体的には、カメラ・センサー類によりオフィス勤務者がアプリでエレベーターやタワー内飲食店舗の混雑状況を確認できるほか、警備システムにも活用。また、ゴミ箱の利用率を把握できるセンサー、オフィス入口へのAI温度検知・顔認証システムの設置やエレベーター行先予報システムなどを導入している。
ただし、東京ポートシティ竹芝においてソフトバンクとの議論がスタートしたのは、設計がすでに終わった段階だったため、カメラやセンサー類を設置する数、場所、角度などに限界があったという。また、例えば照明や空調などの設備は、それぞれ個別最適化された独自仕様で、横連携ができなかった。
こういった経験から、「オートノマスビルの実現には設計の段階から入り込むことが不可欠であることに気づき、日本でナンバーワンの日建設計様とともにジョイントベンチャーを立ち上げる」(宮川氏)と説明した。
シナプスパークの事業内容の1つに、ビル設備とビルOSを連携したスマートビルの構築に向けたコンサルティングおよび設計支援業務がある。ビル設備とビルOS、アプリケーション群の連携を行なうためのコンサルティングと設計支援を行ない、ビル設備の各データがシームレスに連携し、全体最適となる機能を随時追加・更新できる仕組みを構築する。
もう1つ、ビルOSとアプリケーションの企画および提供がある。ビルの利用者や不動産の所有者、管理者などのビルに関わるステークホルダー向けのソリューションとして、ビルOSとそのOS上で動作するアプリケーションを企画・提供し、不動産の価値やユーザーの体験を継続的に向上させるためのビジネスを展開する。
オートノマスビルの事例として、2024年5月竣工予定の赤坂グリーンクロス(東京都港区)がある。ソフトバンク、日建設計と、積水ハウス、日本生命との共同プロジェクトで、設計の段階から参画。設備の仕様の共通化、サイバーセキュリティを考慮したネットワークの構築などに、ソフトバンクも関わっている。
赤坂グリーンクロスではケーブルを50%削減できたほか、消費電力15%削減、ビル運営工数30%削減を想定している。
シナプスパークは、AIやIoTなどを活用して、人と建築と都市に関連するデータを連携させて活用するほか、様々なパートナーのアプリケーションやソリューションなどと連携させることで、ビルの機能をリアルタイムで最適化。新たな価値を提供できる仕組みを構築し、日本におけるスマートビルの普及を推進する。
宮川氏はオートノマスビルについて「一般的にビルは、完成から年を重ねるほどに価値は下がっていくが、オートノマスビルはAIがデータを蓄積して活用していくことで、時とともにできることが増える。ビル自身が成長して“昨年よりも今年の方が価値が高い”ということにチャレンジをしていきたい」と説明。さらに、単体のビルだけではなく複数のビルがつながるスマートシティ作りも推し進める。
シナプスパークの資本金は4億円で、うち資本準備金は2億円。出資比率はソフトバンク51%、日建設計49%。所在地は東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝。