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ワークマン、「Colors」はファッションで選ばれる店。女子は沖縄から海外へ
2023年8月30日 20:26
ワークマンは8月30日、秋冬新製品発表会「Share!Share!Share!」を開催した。その中で、新コンセプト店「Workman Colors」、“SHEINの後追い”という小ロット生産、女性用インナーへの本格参入、海外進出のステップとしてオープンする「#ワークマン女子イオンモール沖縄ライカム店」の4つについて説明した。
発表会では、各アイテムの担当者による説明があったほか、ワークマン 専務取締役 土屋哲雄氏が登壇し、新製品や新店などの狙いについて説明した。
1万人のアンケートよりも1人のクリエイターの意見を重視
発表会「Share!Share!Share!」は、その言葉通り3つのシェアをテーマとしている。
1つ目は「服を男女がシェア」。男性でも女性でも着回しがシェアできる、ジェンダーレスかつエイジフリーな、自由な発想で楽しめるアイテムを展開する。土屋氏は「もともとワークマンが強みとするアウトドアウェアは男女共用のユニセックスのアイテムが多い」と話した。
2つ目は「仕事、遊びの用途のシェア」。これについては「5年前にワークマンプラスができた時には、ワークマンにある作業服の派手めなものやスタイリッシュなものを集めて、見せ方を変えることで新しい客層を獲得できた。そこからアウトドアのウェアを作ったという流れがある」(土屋氏)とし、かねてから用途のシェアを行なってきたと説明した。
3つ目は「SNSを通じた共感のシェア」。土屋氏は「ワークマンはSNSへの依存性が高い会社」と話す。ワークマンの社是として「声のするほうに進化する」があり、ユーザーの声を聞いて、ユーザーが導くほうに進んでいく。
ただし、ユーザーの声を直接聞いているわけではなく、間接的に聞いているという。その声というのが、インフルエンサーとなるクリエイターの声。これには「1万人のアンケートよりも、1人のクリエイターの意見を聞いたほうがよっぽどいい製品ができる」(土屋氏)との考えがある。
「クリエイターは毎日フォロワーと会話をして、また1回の投稿を何人が見るかと毎日審判を受けている。だから神経が研ぎ澄まされて、私らの商品開発や営業以上にお客様を分かっている。アンケートでは意見がばらつくだけでまとまりがないが、1人のクリエイターが“これだ”と言って、その通りに作ると結構売れる。これはすごいことで、ちょっとしたイノベーションだと思っている」と述べた。
Workman Colorsをファッションで選ばれる店に
土屋氏はワークマンの従来製品について、機能性の面では相当浸透していると説明。一方で機能性は理性で考えて購入に至るが、そのルートは弱いと分析する。これに対して「可愛い」「かっこいい」と感性でとらえたものは行動に直結する。
こういったことから「行動に直結する店を1回作りたいと思って、うまくいくかどうかわからないんですが、Workman Colorsでは柄やデザインなどのファッションとして選ばれる店になりたい」と、9月1日に銀座にオープンする新コンセプト店の経緯と目標を述べた。
「ワークマンは先に店を作ってから考える会社で、かつ期限もノルマもない会社。5年や10年で区切るからできないのであって、期限を切らずに時間をかければ必ずできる。Workman Colorsはできるまで、しつこく、何回かこけつつやろうと思っている」(土屋氏)。
Workman Colorsのコンセプトは、「シン、ジブン色。機能はステルス化し、デザイン性でも選ばれる新業態」。銀座店では、発表会のテーマと共通する「share,share,share,」に加え、「WORKMAN-ship」「life is」「tough」の4つスタイルを提案する。
WORKMAN-shipでは、ワークマンらしい原色アイテムとそれらをより生かす黒との組み合わせによる没個性からの脱却を提案する。
life isでは、トレンドを意識して幅広い層とテイストの男女の目に留まるスタイリング、自分のライフスタイルやイベントにどう取り組むかをイメージするコーデを提案する。
toughでは、都会的なタフとレディースアイテムを取り入れた「タフかわ」のイメージを提案する。
今後は新宿、渋谷、梅田などへの10店程度の出店を計画している。
SHEIN方式採用。小ロット生産で鮮度の高い売り場に
ワークマンではこれまで、海外工場の閑散期に安価で大量生産をすることで低価格を実現してきた。しかしこれでは、流行をとらえて反映させることができないという課題がある。
それに対し、急成長している中国のファッション通販「SHEIN(シーイン)」では「毎日新製品を見つけて、そのトレンドをAIが要約してデザインまでして発注する」(土屋氏)。ワークマンもSHEIN方式を採用し、トレンドを追って鮮度の高い売り場にする生産体制を築いたという。鮮度が高ければ、来店頻度が増えるという狙いだ。
具体的には、日本により近い上海地区で、ほぼ同条件で生産できる体制を構築。さらに上海の縫製業の熟練工が試作をしないで直接生産を行なう。これにより、発注後4週間で店頭に陳列することが可能となる。将来的にはIT導入でさらなる短縮を見込んでいる。
また、500着からの小ロット生産ながら、8割が従来価格のままで販売。残りの2割は「多少割高」になるという。
小ロット商品は、Workman Colorsも含めた作業服を扱わない新業態店舗49店で、15アイテムからスタート。#ワークマン女子とWorkman Colorsの売上の20%まで高めることを目標とする。
この生産体制は長期取引を行なっている工場の協力によるもの。ヒットすれば全店販売へ昇格し、工場にとっても生産拡大を期待できる仕組みとしている。
女性用インナーに本格参入。保湿素材インナーから
ワークマンではこれまでも女性用インナーを取り扱っていたが、本格参入に取り組み、製品および取扱い店舗の拡大を進める。「機能性インナーが次の成長エンジン」(土屋氏)とし、女性用・男性用を合わせて、ワークマンの売上の20%となる売上500億円を目指す。
本格参入にあわせて発売される製品が、ファンケルの化粧品にも配合されている独自の保湿成分「セラミドヴェール」を配合した糸を使用した「Rich Moist Veil(リッチモイストベール)」。キャミソール(980円)、8分袖ラウンドネック(1,500円)から発売し、今後はタンクトップ(980円)、レギンス(1,900円)も展開する。
リッチモイストベールの特徴は、着るだけで保湿ができる点。吸湿発熱繊維を使った機能性インナーの多くは、肌のわずかな水分を吸収して発熱エネルギーに変換してしまうため、肌が乾燥してしまうことがある。これに対してリッチモイストベールでは、保湿成分により潤いを守り、乾燥を防ぐという。また、50回洗濯しても保湿成分が続く点も特徴としている。
そのほかに、旭化成との共同開発による夏向けのインナーを'24年夏に発売予定。夏の悩みであるムレ感を軽減できる機能性インナーで、共同開発した「キュプラ」という糸を使うことによる、体から出た水分を吸って出すという機能を有する。通常の綿では、水分を吸うものの出すということはできない。
海外進出に向けて最大面積の#ワークマン女子を沖縄に出店
'24年2月に「#ワークマン女子イオンモール沖縄ライカム店(女子沖縄店)」を出店する。売場面積は220坪で、「#ワークマン女子なんばCITY店」の148坪を上回る全国最大となる。
土屋氏は、女子沖縄店は「東アジア旗艦店という位置づけ」と話す。ワークマンでは3年後を目途に海外進出をする準備をしており、特に台北と那覇の気候はほぼ同じであることから同じ品揃えが可能で、台湾に進出するためのステップとして有効と判断した。
また、前述のとおりワークマンではインフルエンサーを重要視しており、海外のインフルエンサーの獲得や、沖縄への訪日外国人によるSNSでの拡散も狙う。そのため、店内には台湾や韓国人受けを狙ったフォトスポットを設ける。店舗で投稿した旅行者をアンバサダーにして、海外への進出を準備する。
土屋氏は海外進出の前提条件として「#ワークマン女子の国内店舗が40店舗となること」と「海外のインフルエンサーが20人に達すること」を挙げる。まずは#ワークマン女子が軌道に乗ることが重要だが、今年は20店舗となるという。その後については、「ワークマンは期限がない会社なので、できるまでやらない」と述べた。
発表会では新製品のほか、カジュアル、アウトドア、ゴルフ、キャンプなどの製品が展示された。また、作業用のアイテムは防災アイテムとしても役立つことを訴求するブースを展開した。