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AWSが考える金融ビジネス向け生成系AIとは?

アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、金融業界向け生成系AIについての記者向け説明会を行なった。

アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、2006年にクラウドサービスの提供を開始。東京、大阪の2リージョンに関する設備・運用投資総額は1兆3,510億円になるという(2011年~2022年)。

2011年当時は第1ステージとし、ノンクリティカル・システムのための低コストインフラとし、比較的リスクの低い業務で利用されていた。第2ステージとなる2017年からは、金融ITを効率化するインフラプロバイダーとしてサービスを提供、第3ステージとなる2021年からは、金融ビジネスを変革する戦略パートナーとして活動しているという。

例えば、BloomBergはAWSを活用し、幅広い領域の金融データで学習させた新しい大規模の生成系AIモデル「BloomBergGPT」を開発。3月に発表している。金融インダストリー特化の大規模言語モデルとし、他のモデルを上回る性能を発揮するという。

金融業界への生成系AI実装へ向けた課題としては、基盤モデルには多くの選択肢があり、適用業務により使い分ける必要があること、実運用にあたっては、インフラコストと運用負荷を抑制する必要があること、金融グレードでのセキュリティとコンプライアンスへの準拠が求められること、ユースケースを特定し、アプリケーションとの連携を実装する必要があることを挙げた。AWSはこれらの項目を解決するサービスを提供しているという。

機械学習を20年以上前から開発

Amazonでは、20年以上前から機械学習を開発し、サービスに組み込んできた。例えば、Amazonでの検索機能では、キーワードを一つ入力すると、それに関連するキーワードが自動的に表示される。「コーヒー」と入力すれば「コーヒー フィルター」「コーヒー 豆」などと表示される。

Alexaでは、最小限の入力情報から多言語による応答を実現。AIコードジェネレーター「Amazon CodeWhisperer」では、コメントとコードから推奨コードを自動生成。バグにつながりそうな箇所も自動で指摘してくれる。

生成系AIを活用するAWSのサービス

生成系AIを活用するAWSのサービスとしては、「Amazon Bedrock」「Amazon SageMaker(SageMaker JumpStart)」「Amazon CodeWhisperer」「AWS Trainium」「AWS Inferentia2」の5つを挙げた。

「Amazon Bedrock」は、最も簡単に基盤モデルと生成系AIアプリケーションを開発、横展開できるサービス。生成系AIアプリケーションの開発を加速し、各種基盤モデルを単一APIから利用できる。インフラ管理が不要で、Amazon、AI21 Labs、Anthropic、Stability AIなど複数基盤モデルから選択ができる。非公開で自社データを使用し、基盤モデルを安全にカスタマイズが可能。

Amazonでは、基盤モデル「Amazon Titan」を提供。20年以上のAmazonの機械学習活用経験と自社事業における稼働実績を強みとし、テキスト要約・生成などの言語に関わるタスクを自動化。不適切・有害なコンテンツを制限することで「生成系AIの責任ある利用」をサポートする。

Amazon SageMaker JumpStartは、すぐに基盤モデルを使いたい場合に利用できるサービス。ポピュラーな基盤モデルを数クリックで利用可能で、自分たちがいまやろうとしているトピックに対して、最適な基盤モデルはどれなのかを実際に試しながら選ぶことができる。

金融業界における生成系AIの活用例

金融業界向けとしてカスタマーサービスでも生成系AIを活用。自動応答チャットボットと、コンタクトセンターのスタッフ業務支援を行なう。

生成系AIは学習していない情報に関しては正しい回答が行なえないだけでなく、誤った解答を提供してしまうことがある。しかし、チャットボットでは、自社金融商品・サービスについて正確な回答と、知らない事や自社サービス以外の質問については「分からない」と回答することが求められる。

AWSでは、「Amazon Kendra」を活用することで、既存の基盤モデル以外に、外部のナレッジソースにアクセスが可能になる。

一般的な大規模言語モデルを使った回答では、あくまで一般的な内容の回答しか得られず、自社サービスについての回答としては適していない。Kendraを使うことで、自社のWeb上に掲載されている情報や社内のドキュメントなどを参照して、より具体的で正確な情報を提供可能になる。また、ナレッジソース上に質問内容の答えに該当するものが無い場合は、「分からない」と答えることもできる。

一般的なLLMの回答。当たり障りの無い答えになっている
Kendraを使った回答では、実際に自社のサービス内容に基づいた具体的な回答を提供する

コンタクトセンター向けのサービスでは、「Amazon Connect」を活用。カスタマーとの対話内容に応じた自動的な情報提供が行なえる。

例えば、通話中でもカスタマーの発言内容から該当する社内リソースをAIが自動で検索して回答を表示したり、質問内容に沿った自然な精度の高い回答も表示できる。スタッフは必要な情報を自分で検索する手間が減り、接客に集中できる。

カスタマーとの通話内容から自動的に適した回答を提示する

文字起こしと自動要約も可能で、通話中にメモをとる必要がなく、接客に集中でき、対応後の業務も時間短縮できる。要約についても、通話内容から適切な要約を生成。通話後にやるべきアクション(回答内容のカスタマーへのメール送信など)も抽出し、対応の抜けを防げる。

通話内容の要約
メール用の文面生成も可能

AWSは今後も、金融ビジネス変革の戦略パートナーとして、課題を起点としたサービス開発と課題解決を支援。金融業務での利用を見据え、選択肢の提供や運用負荷とコストの最適化、セキュリティやコンプライアンスへの準拠を支援していく。