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ロボットが床を走り棚を登る 三井不動産「EC自動化物流センター」初公開

三井不動産は6月5日、千葉県船橋市の物流センター「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋III」内の「EC自動化物流センター」を初公開した。敷地面積は約2,000坪。3次元ピッキングシステム「Skypod」や自動製函機・自動梱包機、バース予約システムなどを導入した。2022年11月に開設し、三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall(アンドモール)」の物流拠点としておよそ半年間、自社利用を行なった。不動産デベロッパー自らが自動化倉庫を直接運営、そのノウハウを活かし、EC事業者等へ自動化機器のシェアリングを提案する。

三井不動産ロジスティクスパーク船橋III
3次元ピッキングシステム「Skypod」を導入
床面を走行するロボットが、そのまま棚を昇降しビンと呼ばれる箱を出し入れしてピッキングステーションに届ける
ロボットが柱を上がってビンを出し入れするところ

物流変革プラットフォーマーを目指す三井不動産

三井不動産 ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部長 兼 イノベーション推進室長 大間知俊彦氏

近年、物流業界ではEC市場が拡大する一方、長時間労働や深刻な労働力不足が課題となっている。三井不動産 ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部長 兼 イノベーション推進室長の大間知俊彦氏は、トラックドライバーの時間外労働の上限規制等により、2030年には約35%の荷物が運べなくなる可能性があるとも言われている、いわゆる「2024年問題」を紹介。ドライバーの人手不足や高齢化が言われる一方で、現在、ドライバーの待機時間は3時間を超す場合もあり、トラックの積載率は40%以下、宅配貨物の不在再配達率は15%超に達している。これら諸問題は今後さらに顕になることが予測される。三井不動産は物流デベロッパーとして解決には荷主、物流企業、ソリューション提供会社等の連携が必須と考えて、そのハブとなることを目指す。

物流業界の「2024年問題」

三井不動産は「物流変革プラットフォーマー」を目指す。三井不動産は物流業界に2012年に参入。2023年現在では60拠点、120社のテナントを抱えている。現場の実際の問題にもっと取り組むべきだと考えており、今後は三井不動産グループの総合物流コンサル会社「MFロジソリューションズ」、三井不動産運営の荷主コミュニティ「ロジイノベーションコミュニティ」に、最先端ソリューションを掛け合わせて顧客に提案する。そしてスタートアップを含む各社ソリューションの提供に取り組む。この2つをプラットフォームとして結びつけて課題解決を行なう枠組みを「MFLP & LOGI solution」として4月に立ち上げた。

三井不動産は物流変革プラットフォーマーを目指す

具体的には長年運営してきた商業施設向けにはEC自動化物流センター、オフィスにおいてはBCP対応・ES向上サービスを提供してきたノウハウを物流でも活用する。スマートシティには自動運転やドローン、コールドチェーンにも知見を活用する。

総合デベロッパーとしての事業で得たノウハウを活用

すでに内装インテリアを取り扱うサンゲツに対して自動化・省人化ソリューションを提供している。サンゲツは大阪のMFLPに入居しており、MFロジソリューションズと一緒に提案を行なった。立ち上げた仕組みのなかで顧客とソリューションを結びつける取り組みを行なっており、そのケーススタディは公開されている。

サンゲツにソリューションを提供

取り組み例として2つのソリューションを挙げた。ドライバーの長時間待機の短縮のためには「搬出入DXソリューション」、共同配送促進での積載率向上には、今回公開された「EC自動化物流センター」を提案する。

搬出入DXソリューションとEC自動化物流センターを提案

搬出入DXソリューションはHACOBUのバース予約システム、MFLPが開発したゲートでの車番認証と分析、テナントシステムの連携等で、ドライバーの荷待ち時間短縮とテナントの業務効率化を狙う。EC自動化物流センターは自動化設備/オペレーションを三井不動産が自前で揃え、それを顧客ともシェアすることで、テナントの物流自動化と共同配送での積載率向上を目指す。

搬出入DXソリューションは事前予約等で待ち時間を短縮
自動化設備をシェアするEC自動化物流センター
「バース」とは倉庫でトラックをつけて荷下ろしや荷積をする場所のこと
HACOBUのバース予約システムを活用

他にも働きやすい環境整備や自動運転、ドローン物流を使った配送や施設運営サポートの変革、カーボンニュートラルの推進に取り組み、従来型の不動産賃貸業にとどまらないビジネスモデル革新を目指す。

環境整備やドローン物流も推進

ららぽーと公式通販サイト「&mall」での「EC自動化物流センター」活用

三井不動産 商業施設本部 &mall事業室長 亀井俊介氏

EC自動化物流センター自社利用の効果については、三井不動産 商業施設本部 &mall事業室長の亀井俊介氏が紹介した。ららぽーと公式通販サイト「&mall」は、2017年11月にリリース。ららぽーとに出店している約420ショップが出店しており、数十万アイテムを取り扱っているECサイトとなっている。

ららぽーと公式通販サイト「&mall」

出荷スキームを見ると、ららぽーと店舗からの出荷が増加している一方、ショップ倉庫、また三井不動産が自社運営している倉庫からの出荷も相当数存在している。

店舗だけでなく倉庫からの直接出荷も多い

事業が成長するに従って倉庫内作業が複雑化し、人件費等コストも増加していた。そこで出荷キャパシティと作業コスト削減を目指し、自動化・省人化対応を実施した「EC自動化物流センター」を構築した。フランス・EXOTECの3次元ピッキングシステム「Skypod」によって高さ方向を活用した保管効率と搬送工数を削減。配送用段ボールについても自動製函機・自動梱包機によって梱包作業を自動化して作業効率化を図った。入荷時に工業用画像処理を手掛けるCOGNEXの3Dカメラを使って縦横高さを瞬時に計測。出荷時に効率的なサイズで箱を作るので積載効率も向上し、緩衝材も減らせる。

出荷キャパシティと作業コスト削減を目指す
3次元ピッキングシステム「Skypod」や自動製函機・自動梱包機を活用
段ボール箱を組み立てる自動製函機
段ボールの3辺測長(計測)には3Dカメラを活用

その結果、1日あたり最大出荷キャパシティは2倍以上、倉庫内作業の人件費は2023年3月の実績で約2割削減できたという。また自動化に向けた業務プロセスの再点検と改善、有効高さ5.5mの天井いっぱいまで倉庫容積を活用できることから倉庫拡張キャパシティの向上といった効果も見られた。今後もさらなるサービス品質向上と効果の拡大を図る。

最大出荷キャパシティは2倍以上に
Skypodにより天井高いっぱいまで容積を活用可能に
他にRFID活用などの実験も合わせて進めている

床面を走るロボットが棚を昇降する「Skypod」

「Skypod」は1時間あたり400ビンの搬送が可能

「Skypod」は床面を走るロボットがそのまま棚を昇降してビンと呼ばれるコンテナを扱えるシステム。日本での「Skypod」実稼働現場の公開は今回が初めて。「Skypod」のシステム自体の最大ラック高さは12mまで対応可能で、ロボットも1台単位で増設可能。

日本での代理店はIHI物流産業システム。ロボットがピッキング作業を代替することで作業者の歩行数を下げることができる。設置エリアの広さはおおよそ40m×30m。現在のシステムでは36台のロボットが稼働しており、最大8万SKUを扱える。データ上は1,000万SKUを扱えるという。

ピッキングステーション。最終的な出荷は人手が使われるがピッキングする必要がないため歩行距離が大幅に減る
日本の代理店はIHI。デジタルツインにより生産性の分析も容易だという