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LIXIL、高断熱住宅向け全館空調システム「エコエアFine」

住宅建材メーカーのLIXILは、戸建て住宅向けの全館空調システム「エコエアFine」を6月1日より発売する。主に新築戸建を手がける中小のホームビルダー向けに展開する。システムの価格はケースバイケースだが、基本的な構成で工事費込みで200万円程度。販売地域は北海道、沖縄、離島をのぞく全国。

エコエアFineは断熱等級6(HEAT20 G2レベル)以上を対象とした全館空調システム。断熱性能の高い住宅にターゲットを絞ることで、エアコンとしては比較的低出力な機器となっていて、既存の全館空調システムよりもシンプルなものになっている。

エコエアFineの室内機(右)と室外機(左)。室内機は左側が換気系で右側が空調系

全館空調とは、24時間・365日、家全体を快適な室温、きれいな空気に保つ空調システム。一般的なルームエアコンのように、部屋ごとに空調管理するのではなく、家全体で快適な室温に保つ。

LIXILには全熱交換型の換気システム「エコエア」という製品シリーズがあるが、今回の製品はエコエアシリーズの換気機能も含んだ、全館換気空調システムとなっている。換気機能を含むため、大手ハウスメーカーが鉄骨住宅や3階建以上の木造住宅で用いる型式認定工法では利用できず、個別申請に切り替える必要がある。主に型式認定を利用しない中小のホームビルダーによる木造住宅をターゲットとする。

設置予定の間取りなどから空調効果を計算し、空調だけでフォローできない場合は日射対策のシェードなども提案

LIXILではエコエアFineのハードウェアを販売するだけではなく、住宅の設計段階で空調負荷を計算し、必要に応じて夏場の開口部の日射対策なども提案する。そのため、主に新築向けの商品となるが、住宅を骨組み状態まで解体してから作り直すようなリフォーム、いわゆるリノベーションであれば、同製品を導入することも可能だという。

定格能力は、冷房4.0kW/暖房4.5kWの1種類のみ。断熱性能が十分に高い住宅であれば、1台で100㎡以上の住宅をカバーできる。2階建ても1台でカバー可能。

室内機の本体サイズは幅633mm、奥行き672mmなので柱芯々間が910mmの空間に入る

室内機は床置き型で機械室が必要になる。室内機は日本の住宅では一般的な尺貫法に合わせ、3尺=0.5間=910mm四方の機械室に設置できる。フィルタ掃除だけでなく部品交換なども正面から行なえる設計。ただしダクトは床下にも天井にも通すので、機械室の上を棚にするといったスペース活用はできない。

換気系の吸気フィルタを取り外したところ。虫除けネットと粒子フィルタが室内機の前面から取り外せる

ダクトは主に天井裏に通すが、ダクトは一般的な全館空調で使われる直径210mmより小さい直径160mmとなっていて、天井裏の梁の下にも通しやすくなっている。1階の床下にもダクトを通すが、基礎断熱の場合はダクトを使わずに空気を流す。

新たに開発された循環切替システム

独自の「循環切替システム」を採用し、専用のダクトを最上階に設置する。通常の全館空調では室内機からダクトで家の各所に暖気もしくは冷気を送り、ドアの下の隙間、廊下を通って室内機へ空気を戻す。

しかしこの方法だと夏場、高いところに溜まった熱い空気が流れず、ロフトなどが極端に暑くなることがある。

エコエアFineの壁面リモコン。全館空調は基本的にオフにしないので、リモコンはあまり触らない

そこでエコエアFineではロフトなど家の高いところに循環切替システムのダクトを通し、夏場だけそこから熱い空気を回収する。冬場はこのダクトは必要ないので、半分閉鎖され、半分しか空気が流れなくする(全館空調はカビ防止などの目的でダクト内の空気の流れを完全に止められない)。

名前の通り全館空調は家中の温度をコントロールする

一般的に全館空調の最大のメリットは、その快適性にある。通常のルームエアコンは、室内機が吸い込んだ空気を部屋全体に回すために強めの気流を吹き出す必要があり、しばしばそれが人に当たって不快になったり、大きめの動作音が発生したりする。

他社の全館空調に比べてもエコエアFineは低出力なので風が弱く静か

一方の全館空調は部屋の複数箇所に吹き出し口を作り、各部屋の中で循環するのではなく、一方向に緩やかな空気を流す。風量が緩やかなので、人が風を感じることがほとんどなく、動作音もほとんど気がつけないほど静かだ。そうした全館空調のなかでも、エコエアFineは風量が弱めとなっている。

また、ルームエアコンを設置しないような脱衣・洗面室、トイレ、玄関といったところにも、全館空調は吹き出し口を作るので、家のどこに居ても温度が均一となり、快適なだけでなく、健康面でも冬場のヒートショック現象を防ぐ効果もある。あとは各部屋に室内機を設置しないで済むので、室内の空間デザインをすっきりさせられるのもメリットだ。

全館空調は「快適」と感じるというよりも「エアコンがない」と勘違いするくらい自然に快適になる

こうした特徴から、LIXILではエコエアFineを「体験すれば欲しくなる」と自信を持って紹介している。

生活においてゼロエネ住宅によるCO2削減量はかなり大きい

LIXILでエコエアFineを開発したのは、ZEH推進事業部という部署。ZEHはゼロ・エネルギー・ハウスのことで、太陽光などの発電能力とエアコンや給湯器などの省エネ性能、住宅の断熱性能を組み合わせ、エネルギー収支をゼロにするという住宅設計で、新築時にZEHとしての条件を満たすと国から補助金が支給される制度もある。

LIXILのZEH関連のソリューション

LIXILではすでに高断熱住宅向けの「スーパーウォール工法」をホームビルダー向けに販売している。関連会社のLIXIL TEPCOスマートパートナーズでは、余剰電力の売却収入を譲渡する代わりに太陽光発電システム代金が実質ゼロとなる「建て得」というソリューションをホームビルダー向けに提供している。これらを組み合わせることで、ZEHを推進していこうという考えだ。

LIXILによるカーボンニュートラルへの取り組み

今後、LIXILではスーパーウォール工法のリフォーム、さらに事業プロセスでのCO2排出削減なども行ない、カーボンニュートラルの実現を目指していく。