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マネーフォワード、ビジネス事業の拡大を担う「コンポーネントERP」戦略

マネーフォワードビジネスカンパニーCSO 山田一也氏

マネーフォワードは3日、ビジネス事業に関する戦略発表会を開催。法人のバックオフィス業務改善に向けた同社のコンポーネント型ERP戦略や、SaaS×Fintech展開について説明した。

法人事業のコア「コンポーネント型ERP」次の展開

同社では、法人向けのBtoBのプロダクトが売上の6割以上を占める主力事業となっている。マネーフォワードクラウドを軸としながら、最近では情報システム部門向けのサービスなど、バックオフィス全般にカバー範囲を広げている。

そうしたマネーフォワードのビジネス事業の鍵となる戦略が「コンポーネント型ERP」。各サービスは単体でも使えるが、組み合わせると力を発揮するというもの。

財務会計のマネーフォワードクラウド会計Plusを軸としながら、クラウド年末調整、クラウド勤怠、クラウド給与、クラウド請求書Plus、クラウド経費など複数のサービス群を用意している。それらは相互にAPI連携して利用できるが、企業の形にあわせて、それぞれを「単体」で提供できる点が強みとなる。

企業システムにおいて、従来の統合型ERPでは、機能追加や新たな法令対応などでも導入や修正に大きなコストや時間が必要になってしまうが、コンポーネントERPでは企業にすぐに必要とされる機能を現行のシステムに容易に追加できる。

例えば、コロナ禍によるリモートワークの拡大による経理業務のクラウド化や、インボイス制度への対応など、企業においてスピーディなシステム対応と効率化が求められる中、既存の業務フロー/システムにあわせて部分的にクラウド導入。将来的にバックオフィス全体のクラウド化を目指すといった、段階的なクラウド対応が行なえる。

柔軟な対応力がコンポーネント型ERPの強みで、2022~23年にもクラウドインボイス、クラウド連結会計、クラウド個別原価など3つのコンポーネントを追加。マネーフォワードクラウドの業務領域を拡大しつつある。

各部門に最適な機能を提供できるコンポーネント型ERPは、柔軟で素早い対応ができるため、変化に強いボトムアップ型の企業により適しているという。

10月のインボイス制度導入により、経理業務の複雑化が危惧されているが、一方で、「デジタル化推進の契機」とする会社も多いという。そうした外部環境の変化に対して、スピーディに「部分的にSaaS化、クラウド化を進めることができる」(マネーフォワードビジネスカンパニー 山田一也CSO)とする。

一方でこのアプローチには課題も生まれているという。各サービス(コンポーネント)が単体で使えるようになっているため、企業情報などの「マスタ」を各サービスごとに管理している。そのため、勤怠管理のマスタを書き換えても、経費精算のマスタはリアルタイムには変わらず、サービスごとのマスタ管理が必要となってしまう。

この課題を解決するため、第1弾として「マネーフォワードクラウド原価管理」のプロジェクト管理マスタをリリース、「クラウド会計Plus」と相互で登録・編集。削除ができるようになる。個別原価のデータ更新がクラウド会計Plusでも自動で反映されるため、会計業務の効率化が図れるという。

マネーフォワードでは今後、プロダクトごとのマスタから全プロダクトで共通マスタを利用可能とし、メンテナンス負荷の解消を図る。また、現在はプロダクトごとに分かれているワークフローについても共通のワークフロー設定を行なえるようにする。マスタやワークフローの共通化の目処は2024年中。

ビジネスカードなど「SaaS×Fintech」拡大

また今後の拡大を狙う領域が「SaaS×Fintech」。SaaS内に蓄積したデータを活用し、Fintechサービスをマネーフォワードクラウド会計などのSaaSサービスに組み込んでいく。

その一例が、ビジネスカードの「マネーフォワード Pay for Bussiness」。マネーフォワードがカードの発行者(イシュア)となり、プリペイドカードを企業の従業員らに配布して、経費精算などを簡略化できる点が特徴で、2021年から展開している。

「ほとんどプロモーションしていない」にも関わらず、利用者は15カ月で15万枚を超えており、経費精算などのほか、企業におけるサーバー代や広告宣伝費の決済などで活用の幅を広げているという。

Pay for Bussinessは、プリペイドカードではあるが「あと払い」機能を追加。マネーフォワードクラウドのAPIと連携し、財務や出金データを判定。最短10秒で与信を判断。既存のクレジットカードより大きな与信を出せることも少なくないという。現在は、マネーフォワードクラウドのユーザー向けに展開しているが、今後はマネーフォワードユーザーではない企業に向けたPay for Bussiness展開も計画している。

2つめの事例が「オンラインファクタリング」。ファクタリングは、売掛債権をファクタリング事業者に売却することで資金を調達する手段。同社と三菱UFJ銀行の合弁会社であるBizForwardと、マネーフォワードクラウド会計が連携し、入出金データをもとにオンラインファクタリングの審査申込・与信審査が行なえるようになり、紙の書類提出などを不要とするほか、迅速な資金調達をサポートする。

また、今後はマネーフォワードクラウド会計のシステム上でのオンラインファクタリングなどの機能提供も予定している。

3つめのFintech活用が「送金プラットフォーム」。マネーフォワードクラウド内に決済機能を搭載するもので、第1弾としてマネーフォワードクラウドBoxとクラウド給与に2023年内に決済機能を追加する。将来的には請求書のカード払いなどにも対応予定で、カードへの対応により企業の資金繰り改善にも繋げられるとしている。