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LINE・ヤフー・PayPayがECとリアルを繋ぐ新「マイレージ」

LINEとPayPay、ヤフーは、マイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」を2023年春からスタートする。店舗とECを横断した販促プラットフォームとしてメーカーの参加を募り、購買データを活用した継続的で効果的な販促支援を目指す。

販促市場は、ダイレクトメールやチラシなどのアナログが中心となっており、企業から見ると「データを得られない」「効果測定が難しい」という課題もあった。この販促市場をデジタル化することで、デジタル販促領域を開拓し、クライアントのLTV(顧客生涯価値)を最大化。3社が一体となり、売上1,000億円規模のビジネス創出を目指す。

「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」では、ユーザーが参加メーカーの対象商品をオフラインの対象店舗でPayPay決済で、オンラインではYahoo!ショッピングで購入するとそれぞれの購入金額に応じてマイルが貯まる。ユーザーは自身の購買情報を「マイレージ」サービス画面上で確認できるほか、マイルを貯めることでPayPayポイントなどの特典が受けられる。

「マイレージ」という名称だが、PayPayポイントのようなポイントプログラムが始まるわけではない。その人が当該製品をどれぐらい購入したかという「購入金額」を「マイレージ」としてわかりやすく表示するもの。

ユーザーの購入金額が「マイレージ」として可視化されることで、参加メーカーからはユーザーがどれくらい自社製品を購入しているかがわかるようになり、自社製品の「本当の利用者」「ロイヤルカスタマー」に向けて、継続的に販促・マーケティング施策を打ちやすくなる。結果として、販促コストを抑えながら、単価アップなどにつなげLTVの向上を図れるとする。また、参加するメーカー等は、オンラインとオフラインの顧客データをつなげ、販促/マーケティング施策の効果が測定しやすくなる点も特徴という。

ユーザー側では、購入実績に応じたPayPayポイント付与のほか、優良顧客だけに、新製品のサンプリングや「20本購入で1本無料」といった柔軟な優待キャンペーンなどが用意されて、参加できるなどのメリットが期待される。

現在はYahoo!ショッピングと実店舗のPayPay決済での連携だが、今後LINE公式アカウントと連携。公式アカウントから購買情報に基づいた情報が届くため、ユーザーがよりお得な買い物体験ができるという。

現時点では、アサヒ飲料や消費財メーカーが参加を予定。店舗では、ウェルシア、OKストア、サンドラッグ、スギ薬局、ツルハドラッグ、Yahoo!ショッピングの参加が決定している。

また、3社はメーカーや小売企業が参画する「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」を設立。販促サービスの核となるリアルタイムでのPOS連携に向け、3社と参加企業間で協議していく。'23年3月のスタート時には10社以上が参加予定。

加えて、PayPay加盟店向けに展開していた「PayPayクーポン」の新機能「商品クーポン(仮)」も2023年5月から提供開始。メーカー向けの販促サービスで、ユーザーが事前にクーポンを取得した上で、対象店舗で特定の商品を購入するとPayPayポイントが付与される。メーカーは、PayPayアプリで「商品クーポン」を発行することで、その時期に販売したい特定の商品をユーザーに訴求できる。

PayPayクーポンに商品クーポン

なお、マイレージプログラムの名前が「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」と長く覚えにくいが、「今日の段階では3社がしっかり連携して、販促プラットフォームを立ち上げることを優先した。ごもっともな指摘なので、(開始予定の)3月には変わっているかもしれない(ヤフー小澤隆生代表取締役社長)」とした。

PayPayポイントとは競合しないマイレージ

LINE出澤 剛代表取締役社長は、3社がZホールディングスグループに入ることで。実現できるサービスであると強調。「LINEのメッセンジャー、ヤフーの検索、PayPayの決済、3社が力を合わせて価値を提供していく座組。オフラインとオンラインをつなぐ三方良しの販促DX」と強調し、特にアナログなオフラインでの販促をデジタル化していく考えを示した。

ヤフーの小澤社長もオンラインとオフラインで継続的にマーケティングできる点がとにかく重要と語る。これまでオフラインでの施策は難しかったが、PayPayにより店舗での決済からデータが取れることになった点が大きな違いで、「そのためにPayPayに投資してきた。オン、オフのデータを蓄積して、お得な販促につなげる。これは圧倒的なユーザー基盤がないとできない」と語り、5,300万人を超えるPayPayのユーザー基盤の大きさが今回のマイレージの要であると説明。その上で、LINEによるコミュニケーションをつなげることで、ユーザーには「お得」を提供できるとする。

なお、PayPayポイントはグループ外開放(外販)を開始しており、独自の経済圏の拡大に努めている。今回のマイレージは、そうした経済圏と重複するようなサービスではないという。「航空会社のマイレージプログラムのように、『どれだけ乗ったか=買ったか』を示すもの」とし、メーカーなどが優良顧客(ロイヤルカスタマー)の存在を確認し、優良顧客は「10万円使ったのでクーポンがもらえる」といった特典を受けられるという仕組み。

そのため、店舗からは手数料などは徴収せず、プログラムに参加するメーカーなどから費用を徴収する。実験的にPayPayと花王が展開しているプログラムでは「その結果が素晴らしい。想定以上にPayPayで花王商品を買っていただいている」(ヤフー小澤社長)とのこと。

なお、対象となる店舗はオフラインの場合、「POSデータを提供できる店舗」に限定される。そのためコンソーシアムを作り、POS連携の拡大も図っていく方針。

また、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」は、ZHDグループで将来予定している「ID・データ連携」とは独立した形で開始するが、将来的には連携についても検討していくという。なお、マイレージの実施に当たり、必要に応じて本人同意を取得するなど個人情報保護法を遵守し、プライバシー保護を最重視するとしている。