ニュース

「タクシーEV化」でMoTや東電など100事業者が協力 トヨタ「bZ4X」も

タクシーアプリ「GO」を提供するMobility Technologiesは、全国のタクシー事業者と各種パートナー企業が参画するGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組み「タクシー産業GXプロジェクト」を開始した。タクシーGXを通じて日本の運輸領域全体のGXを推進し、タクシーのEV車両化によって、社会全体のカーボンニュートラルへの意識向上を促進する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティー社会の構築」(以下GI基金)採択による支援を含む最大280億円規模の取り組み。

都市部を中心とした全国約100社のタクシー事業者に対し、エリアごとのタクシー運行特性に応じた充電計画の生成といった運行面での支援に並行し、車両や充電器の提供といった設備面での支援を行なう。

タクシー利用利用者やESG経営に注目する法人顧客に向けて、タクシーアプリ「GO」と法人向けービス「GO BUSINESS」の画面でEV車両乗車によるCO2削減量を表示するサービスも開始。EV車両にはオリジナルのラッピング広告を施し、街中を走行するタクシーの姿を通じて一般社会への啓発にも繋げる。

これらの取り組みを通じて、2027年までにCO2排出量3万トン/年の削減を行ない、産業全体の脱炭素化を目指す。

具体的なプロジェクト内容は、「エネルギーマネジメントシステムの構築」「タクシー事業者へのEV車両のリース提供と充電機器の提供」「CO2削減量の見える化」の3つを柱とする。

エネルギーマネジメントシステムの構築では、エリア特性に応じた運行距離やタクシーの乗務実務の実態を考慮した上で、運行効率を損なわない充電計画を生成するAIシステムの技術開発と技術検証を最長2031年まで実施。EV運行マネジメントとエネルギーマネジメントに最適なシステムの開発・提供を進める。

課題としては、30分程度の充電時間の確保は乗務員の休憩時間など極めて限られており、運行に合わせた充電器設置が必要であることや、充電タイミングを自由に行なうと電力代が高い時間帯での充電も発生してしまうことなどがあげられる。

1日の走行距離が自家用車に比べておよそ7倍程度となるタクシー業界では、長距離運行に耐えうる充電実施マネジメントをタクシー事業者単体で取り組むのは難しく、EV導入に向けたこれらの課題をMoTが解決する。適切なタイミングで充電サービスを電力卸市場から廉価に提供することで、充電機器単独での運用よりも効率化を図り、タクシー領域における総合的なCO2削減を実現する。

EVタクシーが導入される営業所の脱炭素等は、東京電力ホールディングスとの協働で実施。充電器や蓄電器などの設備故障等の経済損害などのリスク補償としては、あいおいニッセイ同和損害保険と企画開発を行なった新たな保険メニューも用意し、MoTは代理店として保険募集を行なう。

タクシー事業者へのEV車両のリース提供と充電機器の提供では、プロジェクトへの参画表明をしているGO加盟事業者に対し、リース車両としてトヨタ「bZ4X」、日産「リーフ」「アリア」を2031年まで最大2,500台提供。GI基金交付により1車両あたり最大2/3が助成される。対象車種は今後拡大予定。

充電器は、急速充電器400台と普通充電器2,500台(合計で最大2,900台)を各営業所へ提供、設置する。

運行計画内の休憩時間帯には急速充電器、非稼働時間帯には普通充電器を利用し、効果的に充電を行なう仕組みを設計するほか、将来的にはタクシー運行計画に応じた営業所外の充電機器の設置も検討を進める。なお、タクシー事業者は充電量に応じたチャージサービス料をMoTに支払う。

CO2削減量の見える化では、タクシーアプリ「GO」の法人向けサービス「GO BUSINESS」の管理画面で、EVタクシー車両利用による1台あたりのCO2排出量を表示し、CO2削減量の見える化を可能にする。今後のESG経営に向けた取り組みとして、まずは法人利用「GO BUSINESS」で可視化を行ない、将来的にはタクシーアプリ「GO」の一般ユーザー向けアプリ画面でも同様の表示を予定している。

こうした取り組みにより、CO2排出量をほぼ100%低減させ3万t/年の削減が期待できるという。

今後は、この取り組みをタクシー事業者全体に拡大。CO2排出量のさらなる削減を目指すことで、タクシーのGXを通じて、日本全体の脱炭素意識の向上を目指す。さらに、CO2排出削減からカーボンクレジットを創出し、タクシー業界の脱炭素化の加速、並びにモビリティ産業以外の脱炭素化も見据えてプロジェクトを進めていく