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新型プリウス初公開 ハイブリッド牽引役は節目に

トヨタは、新型プリウスを発表した。シリーズパラレルハイブリッド車(HEV)は2022年冬、プラグインハイブリッド車(PHEV)は2023年春頃に発売する。

「Hybrid Reborn」をコンセプトとした新型は、プリウスのモノフォルムシルエットを継承しつつ、ワイド&ローなスタンスと大径タイヤによるデザインを採用。第2世代TNGAプラットフォームにより、低重心化した。ボディカラーは全8色を設定。2色は、スポーティな印象を与えるソリッドカラーベースの「アッシュ」と「マスタード」を新規に開発した。

プリウス誕生から25年間。車名が意味する「先駆け」となる新世代のエコカーとしてHEVの普及を牽引し、グローバル累計販売台数は約505万台となり、'22年3月時点で削減されたCO2量は約8,200万トン以上に相当する。ハイブリッドシステムは、プリウスを起点とし、コンパクトカーからSUV、ミニバン、商用車まで、ほぼ全ての車種に搭載されている。

トヨタでは、「幅広い車種でHEVが普及したことで、これまでプリウスが担ってきたハイブリッドの牽引役という役割は、1つの節目を迎えた」として、環境性能だけでなく、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を兼ね備えたクルマを目指して開発したという。

新型プリウスでは、新世代のハイブリッドシステムを搭載し、2.0Lプラグインハイブリッドシステム(PHEV)と2.0L/1.8L ハイブリッドシステム(HEV)で展開する。

前者はEV走行距離を従来に比べ50%向上。日常生活の大部分はEV走行だけでカバーできるようバッテリー性能を向上している。また、充電中にパワースイッチをオンにすると、外部電源の電力を利用してエアコンやオーディオの使用が可能になる「マイルームモード」を設定。「もう1つの部屋」のように車内を利用できる。PHEVでは、電池パックを、リヤシート下部に搭載することで、低重心化とラゲージスペースの拡大を実現。スポーティな走りと、利便性の向上を両立した。

プラグインハイブリッドシステム(2.0L プロトタイプ)

後者のHEVは、従来型同等の低燃費を達成しつつ、レスポンスの良い走りを実現。システム最高出力は、2.0L車では144kW(193PS)、従来型比1.6倍となった。

ハイブリッドシステム(2.0L プロトタイプ)

内装は、「アイランドアーキテクチャー」コンセプトにより、圧迫感のない空間と運転に集中しやすいコックピットを両立した。

2.0L HEV プロトタイプの内装

また、アクセサリーコンセント(AC100V・1,500W)をセンターコンソール後端とラゲージルームの2カ所に設置。エンジンを始動せずにバッテリーだけで給電する「EV給電モード」、バッテリー残量が低下するとエンジンで発電する「HV給電モード」を選択できる。給電時に室内への虫などの侵入や雨天での雨水の侵入を防ぐ外部給電アタッチメントを標準で用意し、ドアガラスを閉じたままでの外部給電も可能とした。

妥協のない「愛車」に

新型プリウス ワールドプレミア会場では、デザイン統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏がプレゼンテーションを行なった。

サイモン・ハンフリーズ氏

1997年にデビューしたプリウスの名前の由来はラテン語の「開拓者」。初代プリウスの発売以来、トヨタは、グローバルで合計2,030万台のハイブリッド車を販売し、累計、約1億6,200万トンのCO2を排出削減してきた。日本では、20年前と比べてCO2排出量を23%削減し、国際的に見ても高いレベルにあるという。

しかし、プリウスの最大の功績はこうした数字ではなく、ガソリンやディーゼルに代わる「現実的な選択肢」を広めたことだという。

豊田章男社長は1年前に開催したBEVイベントで、「すべての人にEVを」と話していたが、同時に「BEVは重要な解決策の一つだが、それが全てに勝る選択肢ではない。多様化した世の中には、多様な選択肢が必要」と考えているという。

世間では「いつまでハイブリッドを作り続けるんだ……」という声が大きくなっている中、豊田章男社長が、「プリウスは、どうしても残さないといけないクルマ」と拘るのは、プリウスが「みんなの手が届くエコカー」だからとしている。普及してこそ環境への貢献ができるという考えだ。

では、どうするのか。社内で次のプリウスは「コモディティ」か「愛車」か、という議論になり、豊田章男社長は、タクシー専用など「真のコモディティ」にすべきだと提案したという。理由は走行距離が長いからこそ台数を増やし、環境貢献につながるからだ。また、OEMとして他社からも販売してもらうという提案もあったという。

しかし、開発陣はコモディティではなく、別の考えを提案。合理的なベネフィットだけでなく、エモーショナルな体験で選んでもらえる、愛車として「妥協のないクルマ」を作りたいと提案した。豊田章男社長はこれを否定せず、「闘うチャンス」を与え、そうした開発陣に対して「この喧嘩おもしろいね」と激励しつつ、完成したデザインを見たときには「カッコいいね!」と、その方向性を認めてもらえたという。

ハンフリーズ氏は最後に、「コモディティが勝つか、愛車が勝つか。この質問の答えを知っているのはお客さまだけです。新たなプリウスが、世界中の人々に選ばれ、そして愛される日を楽しみにしています」としてプレゼンテーションを締めくくった。