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気象庁、大雨などの緊急速報メール廃止 避難には遅く「かえって混乱」

気象庁は、大雨などや噴火に関する緊急速報メールの配信を12月末に終了する。現代の防災の観点では配信のタイミングが遅すぎ、対象地域も不特定のため「混乱を招くおそれがある」のが理由。1年前に終了予定だったものの、一旦延期されており、改めて終了時期が告知された形。なお、緊急地震速報、津波警報・大津波警報の緊急速報メールは継続する。

気象庁による、防災気象情報を「早めに」「地域をより絞って」伝達する取り組みを強化する一環。地方自治体や民間サービスの充実を鑑みて、現在の防災・避難の考え方にそぐわなくなっているため、携帯電話会社経由で配信される気象庁配信の一部の緊急速報メールを12月末で終了する。

なお、緊急速報メールは、気象庁以外でも「災害・避難情報」として、各省庁や地方公共団体が携帯電話会社経由で「高齢者等避難」「避難指示」などを配信できる体制が構築されている。これらは気象庁の「緊急地震速報」と同じで、Eメールではなく、対象エリアの携帯電話に強制的に表示される警報およびメッセージ。

終了の対象となる、気象庁の気象等及び噴火に関する特別警報の緊急速報メール(気象等の緊急速報メール)は、携帯電事業者を通じてユーザーに配信される、大雨や噴火などについての警報の発令や避難を呼びかける緊急速報メール。2015年から運用されている。

気象庁配信の緊急速報メールの仕組みでは、現在でいう「警戒レベル5」相当の情報である「特別警報」(大雨特別警報など)の発令を知らせている。

ただし現在では、警戒レベル4までに「必ず避難が重要」と整理されており、(7年前に構築された)緊急速報メールの内容では警戒を呼びかけるタイミングとしては遅すぎ、避難が手遅れになる可能性がある。

またこの緊急速報メールには、避難を呼びかけるべき具体的な市区町村が記載されないため、自治体が発信する内容と情報が錯綜し「かえって混乱を招くおそれがある」との指摘も出ていた。

気象庁では、携帯電話会社を通じてユーザーに直接配信する手段のほかにも、気象庁が協力する民間の「キキクル」通知サービスなど、プッシュ型通知サービスの充実を支援しており、ユーザーはデバイスの画面上で地図などを活用して、早いタイミングから、自分の居場所や周辺の危険度がひと目で分かるサービスを利用できるようになっている。

地方自治体に対しても、緊急時における首長ホットラインや、JETT(気象庁防災対応支援チーム)派遣などを通じて、気象台の持つ危機感を適切なタイミングで確実に伝える体制を構築し、地方自治体における避難情報の的確な発令を支援していく。

なお、今回の大雨や噴火を含む緊急速報メールの終了は、2021年10月12日に発表され、同年10月28日で終了すると案内されていたもの。しかし同年10月15日になって「避難に必要な情報が得られなくなるのではないかといった懸念の声が寄せられている」として、終了を一旦延期。その際に「全国の地方自治体において気象庁の情報に基づいて住民に避難を促す情報提供が適切に機能しているかについて今一度丁寧に確認作業を行う」としていた。