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「マイナポータル」わかりやすく刷新へ。「忘れない」を強化

浅沼尚デジタル監

デジタル庁は1日、浅沼尚デジタル監による報告会を開催し、デジタル庁の最近の取り組みを紹介した。「マイナポータル」は今年度中に大幅にリニューアルし、より使いやすくするほか、「忘れない」ための機能追加を図る。

デジタル監は、デジタル庁の事務方のトップとなる役職。前デジタル監の石倉洋子氏の退任に伴い、浅沼氏が4月26日から努めている。デザイナーとして活躍し、デジタル庁でChief Design Officerを努めていた浅沼氏は、デザイン視点からのデジタル化について説明した。

浅沼氏は、携わったサービスとして「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」について言及。アプリダウンロード数は750万回を超え、証明書発行件数は900万件。操作性でも高い評価を得たほか、数分で証明書を発行できることから、利用者や職員の負荷を大幅に削減できた点を強調した。また、行政サービスでは「わかりやすさ」が重要なため、あえてアプリ名を「新型コロナワクチン接種証明書」と一般名詞とした。「間違えない、迷わない、覚える必要がない」名称にこだわったという。

デジタル庁は、各省庁にまたがる1,000以上のシステムを管理する形になるが、その中でも重視しているのが「マイナポータル」。「まずはここにフォーカスしている」(浅沼氏)。

1,000以上のシステムに関わるデジタル庁
現行のマイナポータル

マイナポータルは、行政サービスのオンライン窓口として30以上の手続きに対応し、認知率も4割を超えている。一方で、アプリストアにおける評価は低く、「便利な機能はあるが使われていないサービス」と認識しているという。これを「ストレスなく使いたいと思えるやさしいデジタルサービス」に変革していくという。

現在のマイナポータルでは、機能は多いが、情報量も多く、操作や入力が複雑と言う課題がある。そこで、少ない情報で一目でわかりやすく、簡単に使えるようにUI/UXを変えていく。具体的には「見つける」「調べる」「忘れない」といった要素ごとに情報を整理していく。

「みつけるをサポート」では、ライフイベントや目的ごとの手続きを見つけやすくなるよう情報を整理。出産、保育園・幼稚園に預ける、引っ越す、海外に行くといったテーマごとに必要な手続きを案内し、申請しやすくする。

「しらべるをサポート」では、医療費や薬剤情報、税情報などを簡単に確認できる情報閲覧サービスとしての機能を強化。現在のマイナポータルでも情報自体は確認できるが、見やすく整理し、マイナポータルに情報が集約されていることをわかりやすく提示する。

新しい機能提案となるのが「わすれないをサポート」。必要な手続きや進行中の手続きなどが一目でわかる「お知らせ」サービスを提供し、例えば、「〇〇までにマイナンバーカードの更新が必要」「保育園の入園申し込みは〇〇日までに要再申請」「5月までにパスポート切替申請」など、期限が迫った手続きを案内する。

浅沼氏は、「マイナンバーカードというIDのサービスを提供し、その接点となる場所が『マイナポータル』。しかし、使われていない。自分の周りにもマイナンバーカードやマイナポータルは知っているけど『使う意味を感じない』という人は多く、利便性が理解されていない段階。ここを使えるサービスに変えていけば、『ポイントを貰わなくても、カード必要だよね』という行動に変わってくだろう。目指すのは『マイナポータル使うとこんなに便利。だからカードを発行しよう』という体験を作ること。カードを発行しようというコミュニケーションではなく、カードがあるとこんなに便利というコミュニケーションを目指す」とした。

また、従来はシステムも個別に開発してきており、「連携」が難しいという課題があった。中長期的には連携を想定した柔軟なシステムとし、必要な回収を素早くできるようにしていく。組織においても、「やわらかな組織」に変える必要があるとし、霞が関の働き方改革を推進。「官民をわけるのではなく、境目のない組織が必要」とした。