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がん患者向けホテル開業。ウエアラブルデバイスで宿泊患者の健康管理

ホテル外観

三井不動産、三井不動産ホテルマネジメント、国立がん研究センターは、がん患者をサポートするホテル「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」を、7月1日に開業する。ケアスタッフによる体調不良時の緊急対応、病院外来拡張エリア設置、ウエアラブルデバイスの導入などでがん患者と家族を24時間サポートする。

立地は、公・民・学連携で街づくりが推進されている柏の葉スマートシティ内にあるがん専門病院・国立がん研究センター東病院(NCC東病院)の敷地内。病院と隣接していることから、がん患者と付き添い家族の利便性向上を見込む。所在地は千葉県柏市柏の葉6-5-2。

24時間サポートする滞在環境提供のため、病院と連携した人的サービスに加え、デジタル技術を用いたバイタルデータ管理サービスなどを用意し、データ利活用も推進。また、医療ツーリズムへの対応やがん患者に配慮した食事メニュー、ロボットを用いた食事配送の実証実験により、独自のおもてなしサービスを提供する。

NCC東病院外観

人的サービスについては、ホテル専任のケアスタッフが常駐。各客室にはケアスタッフに繋がる呼出しボタン・館内電話を設置する。また、NCC東病院の協力のもと、ホテルスタッフががんに関する基礎知識などを習得。サービス介助士の資格取得も進める。

ケアスタッフ
がん患者に応じた接客サービス

サービス面では、本人同意のもと、ホテルと病院間でコミュニケーションツールを用いた患者情報を共有する仕組みの導入を予定。がん患者の生活留意事項の確認を行なう。また、がん患者向けにNCC東病院とホテル間を送迎するサービスを用意する。

送迎サービス車両
送迎サービス

緊急時のより迅速な対応に向け、共用部に全82台のAIカメラを試験導入。カメラ映像のAI分析により、卒倒・うずくまりなどの異常行動を検知した場合、ホテル専任のケアスタッフやホテルスタッフが駆け付けられるようにする。

AIカメラ

ウエアラブルデバイスを用いたデジタルサービスも提供。AI健康アプリ「カロママ プラス」(開発・運営:リンクアンドコミュニケーション)を用いたがん患者向け食事管理機能、「Health Data Bank for Medical」(開発・運営:NTTデータ)を用いたバイタルデータ管理機能の2つのデジタルサービスが、各社より提供される。

カロママ プラスは、食事・運動・睡眠などの情報をもとに、パーソナルAIコーチ「カロママ」が実用的なアドバイスをする健康管理アプリ。この中でがん患者向けに、抗がん剤の副作用やがん種、毎日の体調をアンケート形式で入力することで、適切な食事アドバイスを受けられる「食事療養コース」を用意する。水分摂取の記録や運動コンテンツの閲覧も可能。

カロママ プラス

Health Data Bank for Medicalは、宿泊患者に体温計、血圧計、体重体組成計、パルスオキシメータ等の医療デバイスを貸与し、患者自身が計測データをスマホアプリで保存・管理・閲覧できるサービス。さらに、運動、睡眠、脈拍などのデータを管理できるウエアラブルデバイスによって、日々の健康データの記録が可能となる。

Health Data Bank for Medical 患者用画面イメージ

両サービスとも、提携サービス間におけるパーソナルデータの連携が可能となるプラットフォームを活用した柏の葉の生活者向けポータルサイト「スマートライフパス柏の葉」を通じて利用可能。バイタルデータ連携のためのデバイス等はホテル内に常駐するITコンシェルジュが貸し出し、使用方法をレクチャーする。

本人同意のもと、ホテル内のケアスタッフがデータを閲覧できるようになり、体調不良時の状況確認などにも生かせる。また、これらのサービスは宿泊後に自宅で継続して使用できることから、日常的に自身の体調管理に生かせるとする。

Health Data Bank for Medicalについては本人の同意のもと、蓄積したバイタルデータ等を治療を行なうNCC東病院の医療関係者も閲覧可能となり、医療関係者は病院外での患者の状況をより適切に把握できるという。また、蓄積した複数のバイタルデータから、病院やホテルの業務効率化や診療の質の向上に向けた検証、将来的には在宅診療の実証にも活用する計画。

Health Data Bank for Medical 医療関係者用画面イメージ
サービス概要

宿泊予約については、次回の診療日に合わせてスムーズに予約ができるよう、NCC東病院内に宿泊施設専用の予約ブースを設置する。

病院内の予約ブース

NCC東病院には中国をはじめとする海外からも多くのがん患者が訪れることから、医療ツーリズムへの対応を図り、海外諸国からのがん患者と家族にとって安心かつ利便性の高いホテル環境を目指す。具体的には、長期滞在用のキッチン付き客室の設置、食料品店などの情報を掲載した英語や中国語の柏の葉エリアマップの配布、中国で広く使われているアプリ「WeChat」を活用したホテル情報の発信などを行なう。

客室内のキッチン

食事に関しては、茨城県でイタリアンレストランなどを展開するアガーノが運営するカフェ&レストラン「丁字屋 KASHIWA-NO-HA」が1階に出店。朝食時には「やさしい朝食」をコンセプトとした身体に優しい食材などを使用した料理を提供するほか、朝食時以外でもがん患者に配慮したメニューを揃え、分量や細かな味付けなどの変更にも対応する。

レストラン
がん患者に配慮した食事メニュー

また、テイクアウトメニューも用意し、開業時にはアスラテックが取り扱う配送ロボット「RICE」を用いて、客室へのテイクアウトメニュー配送サービスの試験運用を実施する。

配送ロボット

客室数は計145室で、広さは約22m2から約60m2。ストレッチャーが入れる広めの入口、転倒防止バーや呼出しボタン、通院しながら仕事ができるPC作業に適した大きさの机、がん患者に配慮した貸出備品類などを特徴としている。

スイート
デラックスツイン(バリアフリー仕様)

そのほか施設としてNCC東病院の外来拡張エリアやラウンジを設置。外来拡張エリアは2階の一部に10室の診療室が設けられており、うち2室はオンライン診療の環境を整えている。セカンドオピニオン外来をはじめ、胃外科、乳腺外科、眼科などの外来診療を実施するほか、柏の葉サロンではさまざまな疑問や悩みに対応する患者教室を開催する。

外来拡張エリア

ラウンジは2階で広さは約100m2。柏の葉公園を眺めながら仕事ができるカウンターデスクやライブラリーコーナーを設置し、飲食スペースとしても利用できる。ラウンジ内にはホテル専任のケアスタッフが24時間常駐。

ラウンジ
エントランスホール