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Meta“未来のVRヘッドセット”披露。劇的に薄型・高性能

試作機を紹介するマーク・ザッカーバーグ氏

MetaのVR/ARチーム「Reality Labs」は、VRヘッドセット開発における最新の取り組みを紹介し、“未来のVRヘッドセット”の試作機やコンセプト画像を披露した。レンズや光源の進化で大幅な薄型化を見込んだ研究段階の試作機「Holocake 2」や、すべての進化を取り込む開発コンセプト「Mirror Lake」の画像が公開された。

レンズの試作機「Holocake 2」
未来のコンセプト「Mirror Lake」

非常にリアルな感覚を得られる映像システムのためには、人間の複雑に統合された視覚システムの各要素を高いレベルで実現する必要があるという。Metaでは、VRヘッドセットを進化させる基礎的な技術について分野ごとに研究開発を行なっている。開発のターゲットは現在までに、「焦点の移動」「高い解像度」「歪みの補正」「高いダイナミックレンジ」という4大要素に絞られており、人間の肉眼の感覚と区別がつかないレベルになっているかどうかのテスト(ビジュアルチューリングテスト)も実施して検証している。

Metaが設定しているビジュアルチューリングテストをすべてクリアするものはまだ存在せず、これは非常に高い目標で、現在も課題は山積みという。

開発に取り組む4大要素

Metaは技術の検証を行なう試作機として、ディスプレイ解像度をQuest 2の2.5倍に高めた(代わりに視野角が狭い)試作機をはじめ、視線を補足してカメラのオートフォーカスのように焦点を移動させることができる「バリフォーカルディスプレイ」の試作機、視線の移動も考慮して歪みの補正を行なうシステムのシミュレーターを開発している。

さらに、現在は低輝度でダイナミックレンジに乏しいディスプレイを革新させるものとして、HDRビデオシステムの試作機「スターバースト」も開発し、有効性を検証している。

「旅の始まり」という2015年に作られた、バリフォーカルディスプレイの最初の試作検証機
2017年の試作機。装着しているのはマーク・ザッカーバーグ氏
現在もバリフォーカルディスプレイの開発が続けられている
アイトラッキングでレンズ向けの歪みを生成するシステム。人間には歪みがないと認識される
高輝度ディスプレイの試作機「スターバースト」
試作機の数々。周囲に装着者の目を見せる「リバース・パススルー・ディスプレイ」も

レンズを大幅に変えた試作機「Holocake 2」

Holocake 2

レンズ部分について革新的な技術を投入し開発しているディスプレイ分野の試作機が、「Holocake 2」(ホロケーキ2)。最大の特徴は、史上初と見込むホログラフィックレンズを搭載する点。これは実際にはホログラフィックレンズとパンケーキレンズの特徴を備えた“ホロケーキ”レンズとして搭載され、従来は物理的に必要だった距離を削減でき、今までにない大幅な薄型化が可能になっている。

ただし、このレンズシステムのバックライトには、従来のLEDではなくレーザーダイオードが必要で、比較的安価に市販化されるヘッドセットに搭載できるレベルの部品は、今後の技術の進展を待たねばならない。一方で、レーザーダイオードを用いたこのシステムは、色域のレベルが今よりはるかに高くなるというメリットもある。

ホログラフィックレンズとパンケーキレンズの特徴を備えた“ホロケーキ”レンズを搭載する
レーザーダイオード

すべてを取り込んだ未来のVRヘッドセット「Mirror Lake」

同社では、これら4大要素をすべて取り込んだ上で、コンパクトにした製品の開発を行なっている。コードネームは「Mirror Lake」。

Mirror Lake
Mirror Lakeに搭載される要素。バリフォーカル、ホロケーキレンズなど個別に研究されている要素が集結している

Mirror Lakeのユニークなところでは、外向けの「リバース・パススルー・ディスプレイ」を搭載している点が挙げられる。これは、装着者の目の様子を、周囲に向けて見せるという機能。

Mirror Lakeが想定するような内容がすべて実現すると、「VRの体験を激変させるものになる」(Reality Labs チーフサイエンティストのマイケル・アブラッシュ氏)という。一方で、いずれも初期段階であって、一歩を踏み出しただけともしており、「本当にたくさんの峠があり、時間がかかる」(同)。同社では、今後数年をかけて実現に向け取り組んでいく。

プロトタイプの数々