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楽天キャッシュが楽天経済圏の“外”に見出す可能性

楽天ペイメントは、電子マネー「楽天キャッシュ」を強化し、楽天サービス以外での利用拡大に取り組む。5月には「楽天ギフトカード」をコンビニ等で発売開始したほか、今夏にはセブン銀行ATMからの楽天キャッシュへの現金チャージに対応する。

楽天ペイメントは「楽天キャッシュ」以外にも電子マネー「楽天Edy」を展開している。また楽天グループには共通ポイントの「楽天スーパーポイント」があり、年間5,000億ポイント以上を発行するなど広く利用されている。

「楽天キャッシュ」は「オンライン電子マネー」という位置づけ。Edyはプラスチックカードを前提としたサービスとなっており、よりオンラインや楽天サービスで使いやすい電子マネーとして推進しており、フリマアプリの「ラクマ」からの入金や「楽天カード」や銀行からのチャージなどに対応。特に「楽天ペイ」アプリで使える点をアピールしている。

ECの楽天市場を中心に広がってきた楽天経済圏だが、楽天ペイにより、オフライン/実店舗でも活用の幅を広げ、さらに楽天モバイルなどリアルなサービスも増え、ユーザーとの設定が拡大している。楽天ペイアプリにおける楽天キャッシュのチャージ金額は、2021年に前年比146%と大きく伸びている。

楽天には、楽天ポイントもあるが、ポイントはあくまで楽天経済圏の中で使うもの。楽天キャッシュは、現金に近い電子マネー(前払式支払手段)として、楽天カードや楽天銀行からチャージでき、投資信託の積立などの金融サービスでも利用できる。また、楽天ペイアプリの「送金」や「出金」も楽天キャッシュのみの対応となる。楽天ポイントは、送金や出金には対応せず、有効期限も短い。

自分でチャージし、現金に近い「楽天キャッシュ」と、“もらえると嬉しい”楽天の中で使える「楽天ポイント」では、実現可能なサービスに大きな違いがある。

19日からは、楽天証券で楽天キャッシュによる投信積立に対応するなど、金融サービスでの利用も拡大。グループ全体で楽天キャッシュの流通額拡大に取り組んでいる。

そうした楽天キャッシュの「次の施策」といえるのが、実店舗などの「オフライン」活用とグループ外への展開だ。

5月には、「楽天ポイントギフトカード」を「楽天ギフトカード」にリニューアルし、コンビニやドラッグストア、スーパーなどで販売を開始した。3,000円/5,000円/10,000円の金額固定タイプと金額指定タイプ(1,500~50,000円)が用意される。

コンビニでカードを買って「楽天ペイ」に「楽天キャッシュ」をチャージといった使い方が可能になる。従来の楽天ポイントギフトカードの場合、ポイント付与のため有効期限が「購入日から6カ月」に限定されていた。楽天ギフトカードにより期限が10年になることから、期限切れをほぼ意識せずに使えるようになる。

加えて、今夏にはセブン銀行ATMでの現金チャージに対応する。全国75,000カ所以上でのカード販売と2.6万台のATM対応により、10万カ所以上での現金チャージが可能となることで、「楽天ペイ」の使いやすさを向上するとともに、楽天市場や楽天トラベルなど「楽天経済圏」への誘導効果を狙う。

楽天ペイアプリを軸に、オンライン/オフラインを問わず利用者の拡大を図っていく考え。数値目標などは示していないが、「現金チャージにより、楽天サービスを使い込む入口として楽天会員を増やしてきたい。様々なサービスへの“ハブ”として楽天キャッシュと楽天ペイを使ってほしい」(楽天ペイメント 執行役員 戦略室長の諸伏勇人氏)。

楽天ペイメント 執行役員 戦略室長の諸伏勇人氏

また、楽天Edyと楽天キャッシュの相互交換も7月中旬に対応予定。楽天ペイアプリ上で簡単にEdyから楽天キャッシュに移行できるようになる。

電子マネーとして楽天キャッシュと楽天Edyが併存することになるが、今後どちらかに整理していくのだろうか? 結論を言うと当面は「併存」していくこととなる。

オンラインでの使いやすさは楽天キャッシュが優位だが、楽天Edyは実店舗で普及しており、またスマートフォンを持てない子供にEdyのカードを渡すなどカード(チップ)に紐づいた電子マネーならではのメリットがある。そのため、ユーザーの利用シーンにあわせてどちらでも使いやすい環境を作っていくという。

その他にも楽天グループ内には、楽天カード、楽天銀行など、様々な決済サービスが用意されている。これらについては、プリペイド型の楽天キャッシュ、後払いの楽天カード、デビットカードとしても使える楽天銀行など、利用者に選択肢を提供し、利用者に選んでもらう形を目指しているという。楽天キャッシュでは、プリペイド型ならではの「使いすぎ防止」などのメリットも訴求していく考え。

「従来、楽天グループのサービス連携を強みとしていたが、今後は外部との連携も強化していく。特に現金チャージには期待している。日本国民の年間消費300兆円のほとんど現金。そこを取り込む余地は非常に大きいと考えている」(諸伏氏)。