ニュース

キノコが牛革風の生地に。土屋鞄が新素材”Mylo”バッグを初披露

土屋鞄製造所は新たに開発した、キノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「Mylo(マイロ)」を採用した新素材モデルのプロトタイプ6型を、土屋鞄製造所 渋谷店(渋谷スクランブルスクエア11階)にて6月9日から30日まで展示する。

Myloは、キノコの菌糸体(菌が構成する、根のような糸状の組織体)から生まれたレザー代替素材。Myloを使用した土屋鞄の製品は、Myloの開発を行なうアメリカのバイオテック企業・Bolt Threads(ボルト・スレッズ)社との業務提携を通じて制作された。

展示されるのは、「土屋鞄製造所 Mylo ハンディLファスナー」「土屋鞄製造所 ランドセル」「土屋鞄製造所 スクエアバッグ」「土屋鞄製造所 スリムケース」「objcts.io バックパック ミディアム」「objcts.io ウォレットバッグ」。このうちMylo ハンディLファスナーは、2022年内に発売される。価格は未定。

土屋鞄製造所 Mylo ハンディLファスナー
土屋鞄製造所 ランドセル
土屋鞄製造所 スリムケース(左)、スクエアバッグ(右)
objcts.io バックパック ミディアム
objcts.io ウォレットバッグ
土屋鞄製造所 渋谷店

土屋鞄のトップ職人、新素材を見て熱量アップ

土屋鞄製造所はMylo製品の展示に合わせて、ボルト・スレッズ CEO ダン・ウィドマイヤー氏を招いての発表会を実施した。

ウィドマイヤー氏はMyloの作り方について説明。まずは菌糸体を木の廃棄物を与えることによって育て、そこから出てくる泡状のものからMyloというレザーのような素材を作り、仕上げている。ボルト・スレッズの独自技術があるからこそ作ることができるという。

Mylo ハンディLファスナーを近接撮影

また、Myloは牛革に比べてサステナブルな素材であることをアピール。素材感については「キノコで作られたことが信じられないという人が多い」とし、環境への配慮、見た目やコスト感に優れていると説明した。一方で、引き合いが多い中で需要に対応するだけの生産がまだできないという課題があるほか、いろいろな人のフィードバックを得ながら、色や感触なども改善していきたいとしている。

ダン・ウィドマイヤー氏

ボルト・スレッズと共同で製品開発を行なうのは、国内ブランドとしては土屋鞄が初。'21年5月に土屋鞄からプレゼンをしたことをきっかけに提携した。ウィドマイヤー氏は土屋鞄と組むことにしたポイントとして、経営層だけではなく全社員が「クラフトマンシップ」「イノベーション」「サステナビリティ」の3つにコミットメントしている点を挙げた。

これに対して土屋鞄製造所 代表取締役社長 土屋成範氏は、「父の代からずっと日本のものづくりを守ろう、育てていこうという思いで事業活動していたが、こういった活動が国境を越えて評価されたことはうれしい」とコメント。「新しいチャンスをいただけたので、職人と一緒にお客様に喜んでいただけるような商品を作っていきたい」と抱負を述べるとともに、「職人がこの素材を見た時に、新しい素材に取り組めることに対して今までにないくらいにモチベーション、熱量が上がった」という話を紹介した。

土屋成範氏

製品開発については、土屋鞄製造所 商品企画室 室長 鬼木めぐみ氏が説明。「Myloは牛革のような風合い、手触りがあるが、作業性としては牛革と異なるため、トップクラスの職人とともに、進行するたびに最適な方法を探りながら作っては検証し、またボルト・スレッズへのフィードバックを重ねながら、ここまで辿り着いた」と話した。

鬼木めぐみ氏

牛革の特徴の1つとして経年変化による“味”がある。Myloについては、社内で試験を行なっているものの、実際に使った場合にどのように変化するかは未知数だという。こういった点は、Mylo ハンディLファスナーの数量限定販売を通して、利用者からのフィードバックを得ながら開発に活かしていく。

渋谷店では展示とともに、Myloに対しての想いがつづられている