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“バーチャル都市”にガイドライン、メタバース経済支援の法整備も検討
2022年4月22日 15:52
メタバース上に都市を再現する“バーチャル都市”の運用や利用指針を整備したガイドラインが策定され、「バーチャルシティガイドライン ver.1」として公開された。
自治体やメタバース関連事業者が参考にできるものとしてまとめられており、初版(ver.1)は、バーチャル都市の設立・運用に関する注意点や検討項目などを明文化した。
一方、ガイドラインの初版はまだ初期段階にあるとしており、未整理となっているプライバシーや利用者権利の保護、メタバース間の相互運用性、すでに提供している渋谷以外の都市に適用するための整理などを、今後も継続して議論していく。2022年3月に設立されたMetaverse Japanとも連携する方針で、メタバース領域でほかの団体との情報共有も進めていく。業界として初めての取り組みとしており、議論も歓迎している。
ガイドラインの内容は、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」などを展開する実績やノウハウを反映したもので、KDDIら4者が設立したバーチャルシティコンソーシアムがまとめた。同コンソーシアムはKDDI、東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、一般社団法人の渋谷未来デザインが参加。アドバイザーとして大学教授や弁護士といった専門家のほか、オブザーバーには渋谷区と経産省の商務情報政策局コンテンツ産業課の担当者も参加しており、政府の取り組みや支援も視野に、産官学で取り組んだ。
また「自治体公認のバーチャル都市」という取り組みは世界でも先端的とし、ガイドラインの英語版も公開される予定。世界的なメタバース・バーチャル都市の潮流を牽引していくと意気込む。
ガイドライン自体は「バーチャル都市」を対象にしており、都市の景観をメタバースに取り込むことや、リアル側の都市との連携など、バーチャル都市ならではの論点が盛り込まれているのが特徴。
一方で、クリエイターエコノミーやNFTといった、プラットフォームを超える要素や技術についてもメタバースの重要な要素として必然的に言及している。特にクリエイターエコノミーについては、ガイドラインの方針7つを取り上げた「バーチャルシティ宣言」の1番目に掲げており、「創作活動や多様性」を最も重視した形。これは、バーチャル都市やメタバースが「経済活動の場である」という前提に立っているためで、翻ってメタバースの展開そのものの論点や課題をまとめた形にもなっている。
メタバースは新しい経済圏、法整備の暁には「熱狂的な場所に」
KDDI 事業創造本部 副本部長の中馬和彦氏は、「メタバースは新しい経済圏」と指摘する。
同氏は、デジタルの世界でも所有権を明確にして、ユーザーが作ったものをユーザー同士でさまざまに売買できるような世界が本命であるとした上で、都市連動型のバーチャルシティはさらに、リアル都市の経済圏とも融合が可能で、大きな可能性があるとした。
また、バーチャルシティ宣言にもあるように、クリエイターエコノミーの発展も重視。将来的には、自分の写身である“アバターの肖像権”が問題になることも予想されるとし、世界に先駆ける形で整備を急ぐ。
ただし、デジタルの所有権やアバターの肖像権といった部分は、論点の整理や国の法整備も追いついていない状況。ただこれは世界各国でも同様で、世界に先駆けて整備できるチャンスでもあるとし、実際に与党の自民党政調部会でもそうした法整備に前向きな動きがあり、中馬氏が議員に提言する機会もあったという。こうしたように、政府与党や関連省庁の動きも合わせて、ガイドラインや関連する法整備も含めて推進していく方針。
「デジタルの所有権が法的に認められて、経済活動・創作活動ができるようになった暁には、そこは限りなく熱狂的な場所になる」(中馬氏)