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マスクをしたまま顔認証決済。新たな駅ナカ店舗に取り組むOsaka Metro
2022年4月14日 09:00
NECとOsaka Metroは4月11日、マスクをしたまま顔認証決済が行なえる実証実験を、御堂筋線梅田駅北改札を出てすぐの場所にオープンしたポップアップ型店舗「Metro Opus 梅田店」で開始した。実証実験は12月25日までの期間限定。
Metro Opus 梅田店は、もともとOsaka Metroが案内カウンターとして利用していた場所をポップアップ型店舗として改装したもの。スイーツやグッズなどOsaka Metroがセレクトした商品を週替わりで販売する予定で、オープン当日の4月11日から17日までは北海道のアップルパイ専門店「パイクイーン」のアップルパイなどが販売される。今年夏には御堂筋線難波駅にMetro Opus2号店の開業を予定するとともに、駅ナカ以外への展開も予定している。
今回、Metro Opus 梅田店において顔認証決済システムを導入した背景についてOsaka Metroは、これまで駅ナカ店舗で採用してきた多様な決済手段の新たなバリエーションのひとつとして考えていると説明。
特にコロナ禍ということもあり、完全非接触で会計が行なえることと、マスクをつけたまま決済できるという点に、顔認証決済システムの可能性を感じているという。
もともと駅ナカ店舗ではキャッシュレス決済の需要が非常に高い。顔認証決済については要望が強かったわけではないが、新たな駅ナカ店舗の在り方を検証し、コロナ禍において新たな決済手段を提案したいという考えで、今回の顔認証決済の実証実験を行なうことにしたとのことだ。
なお、Metro Opus 梅田店では顔認証決済以外にも、クレジットカードや交通系電子マネーを含めた各種電子マネー、コード決済、現金での決済も可能。
合わせて、Metro Opus 梅田店横に、店舗で販売する商品の一部を店舗の営業時間外に購入できる冷蔵自動販売機を設置。自販機にはAIカメラが搭載され、購入者の年齢や性別の推定属性や購買情報を取得できるようになっている(画像情報は属性情報推定後に破棄される)。ただし、この自動販売機には顔認証決済システムは搭載されず、クレジットカードや交通系電子マネーなどの電子マネー、コード決済などを利用した完全キャッシュレス決済対応となる。
2Dカメラでも高精度で認証。有人店舗ならではのセキュリティ
Metro Opus 梅田店での顔認証決済は、次のような流れとなる。
利用客は、顔認証決済を利用する前に、スマートフォンを利用して専用サイトにアクセスし、メールアドレスとパスワードを設定して会員登録を行なうとともに、スマートフォンのカメラで顔写真を撮影して顔情報を登録。合わせて、決済代行業者であるベリトランスのシステムで決済用のクレジットカード情報を登録。ここまでの作業をあらかじめ行なっておく必要がある。なお、ここで登録する顔写真は、マスクを外して撮影する必要がある。
以上の作業が完了すれば、Metro Opus 梅田店で顔認証決済での購買が可能となる。商品購入時に顔認証決済で購入することを店員に伝え、カウンターに設置されているiPadで顔を撮影。取得した顔情報を、あらかじめ登録した顔写真と照合して認証し、登録したクレジットカードで決済を行ない、商品を購入できる。
この一連の顔認証決済における顔認証システムには、NECが開発した生体認証ソリューション「Bio-IDiom」を採用している。選択理由についてOsaka Metroは、マスクを付けたまま顔認証が行なえる点と、顔認証を含めた生体認証技術やセキュリティ技術で多くの実績がある、という2つの点を挙げた。
その中でも特に、コロナ禍ということもあり、マスクをつけたまま顔認証が行なえるという点が大きな選択理由となっているという。
今回の顔認証決済システムでは、iPadの内蔵カメラを利用して顔認証を行なっている。決済時にはiPadの内蔵カメラを利用して顔情報を取得し、NECが管理するサーバに保存されている顔写真と照合して認証することになる。iPad内蔵カメラを利用するため、2Dの映像で認証を行なうことになるが、NECの担当者によると、目の周辺の特徴点を抽出して比較することで、マスクをつけたままでも99.9%以上の高精度で認証が可能だという。
より高い精度で認証を行なうのであれば、赤外線カメラを利用したり、Bio-IDiomで用意されている虹彩認証技術を組み合わせた認証を利用するという方法がある。特に無人店舗などで顔認証決済システムを利用するのであれば、そういったより高精度な認証システムが不可欠だろう。
ただ今回は、店員が常駐している有人店舗での運用ということもあり、そこまで高精度な認証は不要と考えたとのこと。
まず、有人店舗での運用ということで、写真などでなりすますことは事実上不可能。また、今回の顔認証決済システムでは、利用客の顔を撮影するiPadに加えて、店員が情報を確認するためのiPadも用意。顔認証決済時には、その店員側のiPadに利用客が登録した顔写真が表示され、その写真と実際の利用客を目視で確認し、確認ボタンをタップしない限り最終的な決済に進まないようになっている。このような有人店舗ならではのセキュリティ機能を用意することで、万が一誤認識が発生しても間違った決済を防ぐことが可能となっているとのことだ。
そのうえで、iPad以外にハードウェアが不要となるため、低コストでの実現にも貢献。今回の実証実験では、客の顔認証用iPadと、店員の確認用iPad以外のハードウェアは使われていない。サーバとのアクセスには、iPadに内蔵しているLTE通信機能を利用しており、ネットワーク設備のコストも抑えられている。
今回、実際にMetro Opus 梅田店での顔認証決済を試してみたところ、1~2秒ほどの短時間で認証が完了する場合もあれば、通信環境の不安定さなどが影響してか、10秒ほどかかる場合もあるなど、やや不安定なところも見られた。Osaka Metroは、そういったシステム的な部分や、混雑時や繁忙期にも耐えられるかなど、様々な観点から顔認証決済システムの有効性を今回の実証実験を通して確認したいとした。