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ソニー、誰でも人工衛星で写真が撮れる「スタースフィア」
2022年1月14日 08:00
ソニーは、一般ユーザーが人工衛星に命令して地球などの写真を撮影できるプロジェクト「STAR SPHERE(スタースフィア)」を発表。2022年10月以降に人工衛星を打ち上げる。また、衛星に命令を出せる「撮影シミュレータ」も開発し、一般公開する。
STAR SPHEREは、ソニーと東京大学、JAXAによる共同プロジェクトで、開発する人工衛星は「CubeSat」と呼ばれる小型衛星の一種。ソニーがカメラシステムなどを開発し、コンテンツやサービスを提供、東京大学は人工衛星の主要部分を開発し、JAXAは人工衛星開発・運用を中心とした技術・事業開発支援を行なう。元々ソニー社内の有志が集まって立ち上げたプロジェクトで、現在のメンバーも本職は別の部署で掛け持ちしている。
打ち上げた衛星は、リモートで地上から操作が可能。一般公開する「撮影シミュレーション」アプリによって、誰でも衛星に指示を出して撮影ができる。4K動画や静止画、HD動画によるライブ配信も可能になる予定。撮影シミュレーションアプリでは、実際に衛星が通過する予定のルートをリアルタイムで確認できる。アプリから自分が撮影したい場所と時間を指示すると「予約」が入り、衛星がその場所に到達した段階で指示通りの映像を取得し、地上に送信する。これによりユーザーは、人工衛星で宇宙から撮影した自分だけの映像を手に入れることができる。
衛星には28-135mmのズームレンズを搭載し、フルサイズセンサーを搭載するが画素数などは非公開。衛星は自転する地球の周りを約90分で地球を一周し、衛星は一定の軌道を移動するのに対して地球は自転するので、基本的に地球上で撮影できない場所はない。また、衛星の姿勢は自由に変更できるので、地球ではなく外宇宙側を撮影することもできる。
衛星が飛行するのは高度500km~600km。姿勢制御は内蔵する「リアクションホイール」で行ない任意の方向に回転できる。衛星の高度を維持するために推進機も搭載。推進剤には環境への悪影響がない「水」を採用し、水を噴射することで推進力とする。人工衛星はある程度時間が経つと重力に引かれて徐々に高度が落ちるため、定期的に推進剤を使って高度を保つことが必要になる。推進剤を使い切り、自然に落下するまでが寿命で、寿命は約2.5年と見込んでいる。発電用には太陽光発電機とバッテリーを搭載する
地上との通信速度について具体的な速度は公開されていないが、4K動画でも無理がない程度の速度は実現できるという。また、内蔵するバッテリー容量の制限から、90分間撮影し続けるような用途は難しく、ある程度インターバルを置きながら利用することになる。
実際のサービス内容は検討中だが、静止画の撮影や動画の撮影など、撮影シミュレータから予約を入れることで順番に受付を行なうことになる。ライブ撮影なども可能で、そうした場合は特定の時間を借り切るような形態になる予定。提供価格は未定だが、一般ユーザーでも手が届く価格帯から、プロユースに向けた本格的なサービスまで検討しており、写真1枚で1万円程度から、貸切で数十万円などサービス内容によって価格は変動する予定。
これまでの人工衛星は特別な技術をもった職員のみがアクセスでき、民間の宇宙旅行も限られた人を対象としたサービスとなっていた。STAR SPHEREは、誰でも操作できるアプリを提供することで、宇宙ビジネスの敷居を下げ、一般にも訴求するのが狙い。
今後は10月~12月に人工衛星を打ち上げ、事業化。撮影した映像を使った宇宙コンテンツ開発や、メタバース上での体験などを検討し、アーティストやユーザーとのコミュニティ、ソニーグループ内での技術連携も進める。