ニュース

東大×積水ハウス、“リアルとデジタルを繋ぎ直す”研究施設「T-BOX」

東京大学大学院工学系研究科と積水ハウスは、次世代の建築人材育成を目指す「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」の研究施設「T-BOX」を、東京大学 工学部1号館に新設した。施設は積水ハウスの寄贈によるもの。

積水ハウスと東京大学は、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究活動の場を創ることに合意し、2020年6月から東京大学 特別教授の隈研吾氏を中心に、新たな技術や価値観創出の研究活動を推進してきた。T-BOXは、今後多様化する住宅へのニーズにデジタル技術を活用したカスタマイゼーションを可能にする「住宅イノベーション」実現を目指して新設されたもので、「デジタルとフィジカル」を繋ぐ場と定義している。

東京大学工学部1号館

「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」では、国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの3つの活動を展開しているが、T-BOXは、同拠点が東京大学内で運営するスペースの呼称となる。T-BOXの「T」には、東京大学、テクノロジー、ツールの3つの意味を込めている。

元は図書館だったが、室内を改装。作業のできる広いスペースと、CNC加工機、3Dプリンター、レーザー加工機などの機材を設置し、加工しながらモノを作れる場とした。

CNC加工機
3Dプリンター
レーザー加工機
3Dスキャナーも常備

例えば、廃材を使った椅子を試作した際には、廃材から組み立てた不揃いな形のフレームをデジタルに取り組み、デジタル上で最適な座面のサイズを算出し、CNC加工機で座面を切り出す方法や、一斗缶の廃材を組み合わせた椅子では、一斗缶の中に入れる木材のサイズをデジタル化した一斗缶の断面から算出してCNC加工機で加工して使用している。同様のことを手作業だけでやると時間も手間もかかるが、デジタルによる作業を組み込むことで効率化を狙った。T-BOXは、こうしたアイデアを実際に試し、失敗しながら学ぶ場ことで、新しい技術を作り出す場としている。

廃材を使って家具を作る取り組み
廃材をフレームにした椅子と一斗缶を使った椅子
一斗缶の中には缶の形状に合わせてCNCで切り出した木材が入っている

また、東京大学のキャンパス内には意外と広い作業場がなく、工学部の学生などが何かを組み立てる際、庭に出て作業をするなどしていたが、本施設はそうした作業を室内で行なえる場を提供する。工学部だけでなく、物づくりをする他の学部からも「利用したい」という声が上がっているといい、異なる学部とのコラボレーションが行なわれることも期待されている。また、将来的には外部の人間にも解放するため、その方法を模索中という。

工学部1号館は過去に増築されており、T-BOXの室内の1面はかつて「外壁」だったものがそのまま残っている

東京大学 特別教授の隈研吾氏は、「デジタルの世界は発展したが、リアルとつなぐのはまだまだ課題がある。KUMA LABの目的はリアルとデジタルを『つなぎなおす』こと。そのための人材を育成する」とし、工学部だけでなく、他の学部や、一般社会、海外とのつながりも再構築していきたいという。

室内には隈研吾氏の作品を展示。今後はT-BOXでの成果物なども展示していく

所在地は、東京大学 本郷地区キャンパス工学部1号館4階(東京都文京区本郷7-3-1)。延床面積は約180m2