石野純也のモバイル通信SE

第68回

「50GB」は新基準になるのか? 2940円+特典で攻めるmineo

mineoは、マイピタに50GBコースを新設する。料金は2948円だ

オプテージの手がけるMVNOのmineoは、3月13日に「マイピタ」の50GBコースを開始する。これまで、マイピタは1GB、5GB、10GB、20GBの4つを選択肢として用意していたが、その上の大容量プランとして50GBを追加。料金は2,948円。

20GBコースが2,178円で提供されているため、770円の追加でデータ容量が2倍以上に増える。6カ月間、1,760円で利用できるキャンペーンも開始する。

50GB追加だけでなく無料「オプション」が魅力的

単にデータ容量が増えるだけでなく、50GBコースには、これまで有料で提供されてきた3つのオプションも無料で追加される。「パスケット」「夜間フリー」「パケット放題Plus」が、それだ。

パスケットは、いわゆるパケットの繰り越しサービス。mineoでは通常、110円で提供されている。料金プランに無料で付帯する他社のサービスと違い、期限が設けられていないため、半永久的にデータ容量を繰り越せるのが特徴だ。

20GB以下のコースでは有料だった3つのオプションが、無料でつく

もう1つの夜間フリーは、22時半から翌7時30分までのデータ使用量がカウントされないオプション。一定以上の年齢の読者には、かつてNTT東西が提供していた「テレホーダイ」に近いサービスと言えば分かりやすいかもしれない。この時間に行なった通信は、50GBの枠外になるため、寝る前に動画視聴したい時などに役立つオプションと言える。こちらは、通常、990円で提供されている。

最後のパケット放題Plusは、速度制限時の通信速度を1.5Mbpsまで向上させるというもの。こちらは、385円で提供されているオプションだ。50GBもあれば速度制限にかからないのでは……と思われるかもしれないが、mineoの場合、ユーザー自身で高速通信をオフにして、データ使用量を節約することが可能。少々手間はかかるが、能動的に動画などを見に行くとき以外、1.5Mbpsに速度を絞れば、50GBが消費されなくなる。

高速通信が必要ないときに、節約スイッチをオンにすることでデータ容量の消費を防げる。この際の通信速度が、パケット放題Plusをつけていると1.5Mbpsになる。ただし、3日間で10GBの制限がある

3000円で50GB+豊富なオプション

オプションだけで1,485円ぶんが無料になる形で、データ容量以上に20GB以下のコースとの差は大きい。無制限とまではいかないが、オプションまで駆使すれば、それに近い感覚で利用できる。

大手MVNOでは、IIJmioも50GBプランを提供しているが、こちらの料金は3,900円とmineoに比べてやや高い。家族や複数端末でデータ容量をシェアすることを前提にしているからだ。なお、mineoの発表を受け、3月には55GBに増量すると発表している

直接的な競合になりそうなのは、日本通信の「合理的50GBプラン」(2,178円)などで、ライバルの数はまだ少ない。

ドコモのahamoは、データ容量30GBで2,970円。ここに、5分間の音声通話定額や無料の国際ローミングが含まれる。

mineoの50GBコースは、料金水準がahamoとほぼ同じだが、20GBもデータ容量が多い点に価値がある。上記のように無料のオプションを組み合わせることで、より多くのデータ容量を使える点もメリット。大手キャリアのサブブランド/オンライン専用ブランドでは物足りないユーザーが、毎月の料金を維持しながら選択するにはいいプランと言えそうだ。

ahamoの料金は、データ容量30GBで2,970円。倍まではいかないが、mineoであれば同水準の料金で20GB多く使える

50GBで「ちょっと先の未来」に対応 楽天対抗はネットワークで

mineoが50GBコースの新設に踏み切った背景には、ユーザーのデータ使用量が増加していることがある。総務省の統計では、18年に5GB程度だった平均が、24年には12GBに倍増。これを踏まえて、大手キャリアもサブブランドやオンライン専用ブランドのデータ容量を30GBに拡充した。mineoの数字は非公表だというが、全体の傾向と同じで「毎年伸びている状況」(オプテージ モバイル事業戦略部長 松田守弘氏)だという。

ユーザーのデータ利用量は、年々増加している。mineoは、その傾向を先取りしたプランと考えているようだ
特に20代は、31GB以上の料金プランを契約している割合が高い

一方で、この新コースは「ちょっと先の未来の当たり前までカバーする」(同)ことを目的としており、現状で20GBを超えるユーザーが続出しているというわけではないようだ。現状ではデータ容量がギリギリで足りているユーザーも、1年、2年経てばデータ使用量が増えていく。その際の選択肢として、50GBコースを用意しているというわけだ。

また、MVNOのユーザーは比較的小容量プランを選択する傾向が強く、大手キャリアのユーザー層とは住み分けが図られている。どちらかと言えば、データ容量の多さよりもコスト削減を重視するユーザーが多いと言えるだろう。50GBコースを出したからといって、既存のユーザーが一気にこれに切り替えるとは考えづらい。そのため、いかに他社からの獲得を増やせるかが成否を決める鍵になりそうだ。

ただ、単純な料金比較では楽天モバイルの存在感が大きい。同社の「Rakuten最強プラン」は、20GBを超えると3,278円でデータ通信が使い放題になる。「家族割引」が適用されると110円の割引を受けることができ、料金は3,168円まで下がり、mineoの50GBコースとの差は小さくなる。Rakuten Linkを使えば、通話料も無料。さらに、楽天市場で4%(最大2,000ポイント)のポイント還元を受けられるなど、エコシステムとの連携も図れている。

楽天モバイルのRakuten最強プランは、家族割引適用時の料金が最大3,168円でデータ容量は無制限。データ使用量の多い若年層だと、さらに110円安くなる

データ容量と料金の単純比較では楽天モバイルに対抗しきれていないmineoだが、同社はドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアから回線を借りており、ネットワークに選択肢がある。対・楽天モバイルという観点では、この基本に立ち返った訴求が強みになりそうだ。ahamoなどのサブブランド/オンライン専用ブランドとの比較では、データ容量の多さがアピールポイントになる。

mineoは、24年に長期利用特典の「ファン∞トク」を改定しており、契約年数に応じて付与されたコインをつかい、オプションの値引きや端末割引を受けられる。大手キャリアは、電気通信事業法のガイドラインで同種のユーザー還元を禁止されており、割引やポイントなどを使った囲い込みができない。とは言え、現状のファン∞トクは50GBコースの特典としてやや弱い印象も受ける。ここに磨きをかけていくことが、同社のサービスの差別化につながりそうだ。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya