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Luupと東京海上、電動キックボードのリスク評価や安全性向上で協業
2021年10月13日 17:03
東京海上ホールディングスとLuupは資本業務提携し、電動キックボードなどのマイクロモビリティの分野で安全性向上のための協業を行なうと発表した。
Luupは現在、電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」(ループ)を展開しており、東京・大阪などで実証実験を含めてサービスを展開している。サービス開始から30万km以上の総走行距離を記録しており、国内事業者において最長の走行データを保有しているという。東京海上は自動車保険のほか、スマートシティやMaaSの領域でも実証実験を行ない、新しいサービスの開発を進めている。
業務資本提携により、電動キックボードの安全性向上や、社会受容性向上について、協業が行なわれる。
具体的には、東京海上は、国が検討している交通ルールの変更などを踏まえて適切な補償の提供方法を検討していくほか、電動キックボードから取得する走行データを活用した新商品・サービスも研究する。
Luupは東京海上の参画による包括的なリスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価までの一連の取り組み)を行なった上で、危険走行を減らすユーザーとのコミュニケーションのあり方の検討、安全度の高い機体の開発、ポート設置場所の拡大などについて共同で取り組んでいく。
電動キックボードは新種、東京海上がリスクの洗い出し
電動キックボードは世界的にも新しい乗り物で、各国で走行ルールが模索されている最中。日本では現行法では原動機付自転車(原付)に該当するが、電動キックボードを想定した内容ではないため、いくつかのミスマッチもある。そこで新たな交通ルールを策定するため、特例制度とともに実証実験が行なわれており、Luupも新事業特例制度の認定を受けて実験に参加している。
Luupの岡井大輝氏(代表取締役社長兼CEO)は、東京海上との提携について、Luupとして安全性に対する取り組みは最大限行なってきたとするものの、サービスの拡大にあたり事故などの絶対数も増えることから、さらに網羅的に、客観的な視点でリスクをコンサルティングしてもらうものになるとした。
岡井氏は「アクセルとブレーキの両方が重要なのが公共交通。東京海上には一番厳しく(自分たちを)監視してもらう」としたほか、「新しい乗り物に対して評価を確立し、支援を受けて、安心して使えるものを作っていきたい」と意気込みを語っている。
東京海上日動火災保険の中西光氏(デジタルイノベーション部長)は、マイクロモビリティの普及に向けて最も大きい課題は安全性の向上とし、評価の確立に向けてリスクの洗い出しを行なっていくとした。
また、電動キックボードなどが原付に該当する現在は、自賠責保険と自動車保険での補償が現在のルールであることを周知徹底することが最初の取り組みとした上で、ユーザー向けの教育コンテンツや講習会、試乗会などもLuupと共同で実施していく方針を示している。こうしたアナログな取り組みも自動車保険で培ってきたノウハウが活かされるという。
なおLuupでは、電動キックボードなどのサービスの高齢者への対応について、国が変更を模索している交通ルールや技術の内容次第で大きく変わるとした。Luupとして、コストや収益の面からも、少なくとも機体開発の段階では、若者向け・高齢者向けといったように分けない方針。その上で、例えばマイクロモビリティ向けの新しい交通ルールが、自動走行やブレーキアシストなどの機能を許容した場合、サービスは幅広い高齢者が対象になるとする。一方で、それらが許容されず、すべて手動操作が基本という方向に着地した場合、特に後期高齢者の利用は難しいことが予想されるとしている。
“ヘルメット任意”はあくまで実験、結論は変わる可能性も
4月から実証実験で実施している、ヘルメットの着用は任意で運転できるといった特例制度の安全性について、岡井氏は「結論は出ていない」とクギをさしている。
特例制度の下では、電動キックボードは原付ではなく「特殊小型自動車」扱いになり、ヘルメットの着用は任意になっている。岡井氏は、現在は必要なデータがそもそも存在しないために、特例によって“ヘルメットが任意という場合も実験している”という段階であって、実験結果を踏まえ、「ヘルメットが任意というのは望ましくない」という結論に至る可能性もあるという。
また交通ルールに違反する走行については、利用には運転免許証の登録が必要で、走行データを取得していることなどに加えて、監視カメラなどで後日に違反が見つかった場合も警察への届出や処分の対象になる。こうした警告内容はメーターパネルの上に目立つシールで貼られており、ユーザーには運転する際の交通ルールの順守を呼びかけている。