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団地を“無印”でリノベ「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」
2021年3月16日 13:10
都市再生機構(UR都市機構)とMUJI HOUSEは、住戸に加えて団地の外観や共用部も「無印良品」のテイストでリノベーションしていくプロジェクト「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」を発表した。3月15日には両者による協定締結式が行なわれ、これまでの取り組みも紹介された。
「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」のプロジェクトは、すでに両者が全国で手掛けているリノベーション住戸だけでなく、団地の外観や屋外広場や商店街区といった共用部分にもリノベーションの対象を広げるというもの。加えて、地域コミュニティの形成にも連携して取り組むことで、団地や地域の活性化も図っていく。これまで同様、SNSなどを活用した情報発信も行なっていく。
リノベーション住戸により若年層の入居が増加することが実績として確認されており、共用部のリノベーションで高齢者との交流の場を設け、団地や地域コミュニティの活性化も図る、という取り組みになっている。
一方、具体的な取り組み内容はまだ未定。UR都市機構では、まずは数カ所の団地から始める見込みとしているが、どの団地がこのプロジェクトの対象になるかは決定していない。また、基本的には団地ごとに異なる内容になる。団地の外観については、耐震補強や修繕などの工事をできるサイクルがそれぞれ異なるため、こちらも団地や住居棟の事情に合わせたものになる。
今回のプロジェクトの発端は、団地の住戸を「無印良品」のテイストでリノベーションする「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」の取り組み。このリノベーション住戸は9年で1,000戸を超え、提供する中で見えてきた団地そのものの魅力や課題の解決について、意気投合した両者が、より深い協業として取り組むことになった。
すでに1,000戸が提供されたという「MUJI×UR」のリノベーション住戸は、無印良品の顧客層への訴求もあって、当初の狙い通り若年層に支持され、利用者の75%以上が40代以下になっている。また、無印良品のSNSアカウントなどで魅力や情報を発信・拡散するといった取り組みによりUR賃貸住宅の募集サイトへの流入増につながり、さらには「MUJI×UR」のリノベーション住戸が供給された団地は全体の契約件数も増えるといった効果もあったという。今後はリノベーション住戸のバリエーションを増やしていくほか、「壊しすぎず、作り込みすぎない」というリノベーションのコンセプトを継承、これは団地の共用施設の改修でも適用されていくことになる。
“団地まるごと”を少しだけ先取り
「団地まるごとリノベーション」の具体例はまだないが、これを先取りしたような取り組みが実現している団地もある。東京・練馬区の「光が丘パークタウン」がそれで、一部が「MUJI×UR」のリノベーション住戸になっていることに加えて、団地内の商店街区には、住民が自由に利用できるコミュニティスペースを備えた店舗「MUJI com」が出店。団地内のイベントにも積極的に参加するなどしている。最近では、団地内の商店街区の一部について、“無印のテイスト”で統一感のある外装に改修する取り組みも実現した。これらの改修費用はUR都市機構側が負担し、店舗や住民は金銭面で負担していないという。
「数よりも地域住民が満足するものを」
協定締結式に出席したMUJI HOUSE 代表取締役社長の松崎暁氏(良品計画の代表取締役社長も兼任)は、「URの団地のインフラは非常に立派。運動場、公園とすでに備わっている。資源の活性化は無印としても得意としてきたこと」と団地や地域の活性化に意気込みを語る。
リノベーション住戸の提供もスピードアップしていきたいとするが、「何戸やるというよりも、地域住民が満足するものを作り上げることが重要。KPIは持っているが、社会課題の解決はそういうものでは測れない」とした。
無印良品の店舗については、今後は繁華街だけでなく生活圏にも積極的に出店していく方針。食品の取り扱いも強化し、より地域を重視した展開にしていくという。
都市再生機構 理事長の中島正弘氏は、「団地は、歴史的には“迷惑施設”で、全部自分でやれといわれていろいろな施設を中に作った」と、インフラが充実している理由を明かす。一方で、かつては子育て環境が充実しているのが団地のメリットだったとし、それは今でも変わっていないとした。
地域社会の課題(高齢化)を解決する取り組みでは、UR都市機構と「無印」にはともに取り組んできた歴史があり、共通点が多いとして、「コラボできるフィールドはたくさんある」と期待を寄せた。