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Apple PayのPASMOスタート。定期券もオートチャージもiPhoneで
2020年10月6日 15:15
首都圏の私鉄各社の交通系ICカード「PASMO」がApple Payに対応し、10月6日から「Apple PayのPASMO」サービスを開始した。電車やバスへの乗車や電子マネーとしての決済に加え、各社の定期券に対応しているのが特徴だ。PASMO協議会では、「まずはユーザー数1,000万を早めに獲得できるように頑張りたい」(モバイルプロジェクトリーダー中島浩貴氏)と意気込んでいる。
PASMOは2007年に発行を開始。JR東日本のSuicaに対して私鉄各線や地下鉄、バスへと対応を広げ、相互利用などの機能を追加して発行枚数は4,000万枚近くに達した。これまではICカードのみの対応だったが、今年3月にはAndroid版モバイルPASMOをリリース。iOSへの対応も予告されていたが、6日からサービスがスタートした。
対応するのはiOS14以降を搭載したiPhone 8以降、watchOS 7がインストールされたApple Watch Series 3以降。
FeliCaを利用して相互利用が可能なため、Suicaが使える店舗や首都圏以外の交通機関でも利用できる。これまで、Suicaで発行できなかった定期券が発行できるため、私鉄沿線などでPASMOで定期を利用しているiPhoneユーザーにとっては待望のサービスだろう。
発行は、iPhoneのWalletアプリから行なえる。Android版とは異なり複数のPASMOを発行することも可能。さらに既存のICカードからの取り込みにも対応しており、新規発行からカード取り込みを選び、iPhoneのFeliCaタッチエリアにカードを合わせれば取り込みが行なわれる。
定期券の場合も同様で、定期券の内容がそのままWalletアプリに取り込まれる。オートチャージの設定をしていた場合、その設定もそのまま引き継がれるという。新規発行・取り込みいずれもすぐに利用可能で、残高があればそれも引き継がれる。
エクスプレスカードの設定をすれば、Apple Payを立ち上げなくてもiPhoneをリーダーにタッチするだけで乗車や支払が行なえる。これまでSuicaを使っていた場合は、Apple Payの設定から切り替える必要がある。
Apple WatchもiPhone側で設定すればすぐに利用開始できる。iPhone側とは異なるカードになるため、別途発行する必要がある。定期券の場合はiPhoneとApple Watchのどちらか一方での設定となる。
PASMOならではの難しさ。目標は一千万枚
PASMO協議会の会長で小田急電鉄の常務取締役である五十嵐秀氏は、「Suicaとともに首都圏の交通系ICカードとして交通の利便性の向上と電子マネーの普及拡大に取り組んできた」と説明。「コロナ禍において、生活様式が大きく変化した。スマートさに安心感を加えたApple PayのPASMOを利用してもらい、交通機関を利用してもらえれば」とアピールする。
Apple PayのPASMOでは、春や秋の定期券購入の需要期でも窓口に並ばずに、いつでも購入、更新ができ、普段のチャージでも改札や窓口に行く必要がない。iOSの機能としてiPhoneを紛失しても遠隔ロックや消去もできて残高を悪用されることを防げる。遠隔ロック時には自動的にサーバーに情報がアップロードされるため、遠隔消去しても改めてセットアップすれば残高を復活できる。
こうした安心・安全の機能に加え、Android版モバイルPASMOのサービス開始で設置した専用サポートセンターがApple PayのPASMOユーザーも利用できるため、各社の状況に応じたサポートを提供できるとしている。
開発で苦労した点として中島氏は、各社の定期券のルールが異なる点を挙げ、そうした点を考慮して取り込み、利用できるようにする仕組みの面で苦労したという。これはAndroid版でも同様だが、複数の事業者に電車とバスも存在するPASMOならではの苦労だったようだ。
ちなみに、Apple PayのPASMOとモバイルPASMOの間に機能的な違いはないという。ICカード取り込み時に、Apple Payの場合はローカルでカードから情報を取得するのに対して、モバイルPASMOはサーバーを経由して取り込む点が違いとのこと。
PASMOはICカードが年度内にも4,000万枚発行に達する見込みで、Suicaに比べると発行枚数は少ない。それにも関わらずモバイルSuica会員数と同等の1,000万ユーザーという大きな目標を掲げたPASMO。期限を明言しない目標ではあるが、それに向けたさらなるサービスの提供を期待したいところだ。