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出前館に「LINEデリマ」を統合。シェアリングデリバリー体制をさらに拡充へ
2020年9月10日 17:18
LINEは、フードデリバリーサービスの出前館との関係を強化し、ニューノーマル時代の飲食ビジネスを模索中だ。出前館 代表取締役社長CEOの藤井英雄氏は「LINE Day 2020」で、最新の取り組みを紹介。年内には「出前館」ブランドへ「LINEデリマ」を統合する方針も示した。
LINEのフードデリバリーサービスと言えば、2017年7月スタートの「LINEデリマ」が思いつく。LINEデリマは出前館のサービスと密接に連携しており、事前には業務提携が結ばれるなど両社の関係は深かった。そして今年3月にはLINEが300億円を出資し、出前館をグループ会社化した。
この出資が発表されたタイミングは、まさに新型コロナウイルス問題が国内を席巻していた。一斉休校や営業自粛が飲食業界に与えた影響は極めて大きく、密集を避けるために会食が控えられる一方、テレワークの増加によって自宅で食事をとる機会が増加した。
店内飲食が減り、デリバリーやテイクアウトが増えたことを伺わせる数値も出ている。緊急事態宣言の発令期間中は、新規登録店舗数が前年比で447%、新規登録会員数も同453%と大幅に増加。藤井氏も「コロナウイルスの出現によって生活様式が変化し、フードデリバリーがニューノーマルになってきている」と述べた。
「シェアリングデリバリー」に注力
このニューノーマル時代に求められるフードデリバリーについて、藤井氏は「日常化」が重要だと指摘。地域を問わず、好みの料理を誰もが気軽に注文できる体制作りが必要という訳だ。
まず目指しているのは、加盟店舗の拡大。これまで出前館に加盟する店舗の多くは、大手ピザ店チェーンのように配達スタッフを独自に抱え、顧客からの注文のみを出前館経由で受け付ける「自配」型だった。
これに対して「シェアリングデリバリー」型は、飲食店舗は料理作りに集中し、配送を出前館の専門スタッフにまかせる方式。小規模の個人店でも、客に商品をデリバリーできる。
2020年4~6月期の、出前館におけるシェアリングデリバリーの流通取引総額は前年同期比で400%を達成するなど、人気は高い。藤井氏もシェアリングデリバリーを「出前館成長の牽引役」と評する。また、自社配達員がいる飲食店は国内3万店に対し、配達員がいない店舗は60万店に上る。リソース不足を理由にフードデリバリーへ進出できていない店舗が圧倒的多数を占めるとみられ、この問題を解消してくれるシェアリングデリバリーは成長余地が大きいという。
出前館では、シェアリングデリバリーの受付可能エリアを増やしていく。現在は国内384拠点だが、これを2021年8月までには540拠点へと拡大。地方都市でもサービスを開始することで、2021年には4,200万人にデリバリーを提供できる体制とする計画だ。
配送の品質についても、更なる向上を目指す。できあがった料理を崩さずそのまま届けること、約束の時間に届ける正確性、スタッフの身嗜みの3つを重点項目とし、スタッフ教育を徹底する。テクノロジーの面では、配送員と店舗のマッチング精度向上にも取り組むという。
出前館に「LINEデリマ」「LINEポケオ」を統合へ
デリバリー以外の領域では「クラウドキッチン」事業に取り組む。これは、複数の飲食店の調理を1つのキッチンで行なうサービス。著名店からレシピなどの提供を受け、調理自体は出前館のクラウドキッチンが担当するため、高級店の味を自宅で気軽に楽しめる。特別なイベントなどの“非日常”ニーズにも応えるのが狙いだ。
そして藤井氏は、LINEデリマを出前館ブランドへ統合する方針を明らかにした。今年中にも実施する予定で、LINEの8,400万ユーザー基盤をシームレスに出前館へ送客できるとしている。
合わせて、テイクアウト注文サービス「LINEポケオ」を出前館の受注オペレーションへ追加。テイクアウト分野にも進出する。
「LINEデリマ、LINEポケオを出前館に統合することで事業領域を拡大する。さらに将来的には、店内飲食をもサポートする、総合的なフードマーケティングプラットフォームを目指す」(藤井氏)