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“メルカリハイ”で社会貢献!? 利益100円以下の出品を繰り返す人々の実態調査
2019年12月5日 17:59
メルカリは5日、100円以下の利益でフリマアプリに出品する利用者の意識・実態調査の結果を発表した。同社では100円以下の利益で出品する利用者について、「お金を稼ぐだけではない目的があるのでは」という仮説を立て、今回のアンケートを実施した。
対象は、3回に1回は100円以下の利益でアプリに出品する「少額取引利用者(以下、少額取引者)」515名と、最低1,000円以上の利益を見込んでアプリに出品する「高額取引利用者(以下、高額取引者)」515名の計1,030名。いずれも12~59歳の男女で、調査機関は11月14日~15日。
解説を行なったのは世代・トレンド評論家の牛窪恵氏。牛窪氏は令和世代消費者とバブル世代消費者の心理を比較。自らもバブル世代である牛窪氏は「バブル時代はブランドものを人よりも早く、高い物をゲットしたい」という心理であったのに対し、令和では「物の価値よりも思い出など体験を重視する」と分析。震災などの影響で、物は失われるという意識が芽生え、ITの進化とは別のベクトルでフリマアプリ市場が伸びているという。
まず、今回のアンケートに先行して行なわれたフリマアプリ利用者2,115人を対象とした調査では、出品経験のある4人に1人が100円以下の利益の出品をした経験がったという。
「出品するという行為自体、ある程度手間がかかるものであるのに、思ったよりも少額出品者は多い」と牛窪氏。
そこで、「フリマアプリを利用する目的」を問う質問(複数回答可)では、その理由に注目。「不要品を処分する」という、当たり前な回答に続き、「捨てることがもったいない」が2番、「誰かの役に立つ」が9番にあるが、いずれも高額利用者と少額利用者ではその意識に差があると牛窪氏は説明する。
「捨てることがもったいない」と回答した少額取引者は62%、高額取引者は47%、「誰かの役に立つ」と回答したのは同17%、同5%といずれも大きな差があったという。
これらについて牛窪氏は「少額取引者は元々、捨てるのがもったいない、人の役に立ちたいという社会貢献欲求や環境欲求などが高い人たちであることが分かる。少額取引者は元々捨てることに罪悪感がある。そこから解放してくれるのがフリマアプリだ」とし、売れた瞬間の喜びによって、捨てるという「罪悪感」から解放されることが重要で、儲かったかどうかはあまり問題ではないのだそうだ。
「自分で売る」という行為そのものも重要。フリマアプリは自分で商品を用意し、自分で値段をつけて販売する、いわば小売業のようなもの。そうした経緯で商品が売れると「自分と同じ価値観を持った人がいる」、「自分の値付けが認められて売れる」、という行為が承認欲求の充足につながり、快感となる。そしてまた出品したくなる。これがいわゆる「メルカリハイ」状態だという。
実際、承認欲求が満たされたと感じるのは、SNS投稿にコメントが入ることよりもフリマアプリに出品した商品が売れることのほうが大きいという。
メルカリハイ状態になると、もっと物を売りたくなる気持ちが強まる。身の回りで売れるものを探すようになったり、売ることを前提に物を大事に使うようになった、というケースもあるという。
「メルカリハイ状態になると脳内で快楽物質のドーパミンが放出される。物が売れることで快楽が得られるという状態を学習し、同じ行為を繰り返すようになる」(牛窪氏)
少額取引をしている人ほど「もったいない」という意識が強いという。捨てるのがもったいないという意識は本来マイナスの心情だそうだが、物を誰かに売ることで「社会貢献」というプラス心情に変換してくれるのがフリマアプリ。物を売ってお金を儲けるよりも、やりとりそのものを楽しみ、その経験を重視する。これが令和世代の消費者心理ということだ。
牛窪氏は、自らもメルカリで出品経験のある自分としても、メルカリハイという精神状態は非常によく理解できるという。
なお、今回の調査対象となった少額取引者の63.3%が女性、36.7%が男性。年代としては20代(24.3%)、30代(35.1%)が最も多い。これは年齢層が高いほど高額商品を所持している傾向があるからだという。
会場には、実際にメルカリを利用している「少額取引者」だという主婦の三輪めぐみ氏が自らの体験談を披露。今までの総出品数は1093件、取引件数は951件だという。三輪氏は妊娠時の暇つぶしからメルカリを始めたそうで、元々店を経営していたが体調を崩して断念。しかし、メルカリで出品者となることで、店を経営する喜びと同じ感覚を得られるようになったという。この5年間で少しずつお金を稼ぎ、度々海外旅行にも行っているという。