ニュース

マスクをしても認証できる。パナソニックの顔認証技術API

パナソニックは25日、マスクなどで顔の一部が隠れていても認証可能な顔認証技術APIの提供を開始した。ディープラーニング(以下DL)を応用し、高い精度で認証可能。従量課金制のクラウドサービスで、B2B向けIoTサービス「μSockets(ミューソケッツ)」のマイクロサービスの一つとして提供される。

顔の部分的な形状を判断するDLと、顔全体を判断するDLを組み合わせる独自のアルゴリズムを採用。画像が暗い場合は全体の形を表す特徴と比較、マスクなどで遮蔽が多い場合は見えている部位から特徴を比較するアルゴリズムも備える。これらにより斜めの顔や、照明が暗い環境、サングラスなどで顔の一部が隠れている状態や、加齢による変化など、従来は認証が難しかったシーンに対応可能。カメラメーカーとしてやしなってきた画像補正技術なども活かされている。

登録された認証用の画像が、認証用としてふさわしいかを評価する品質判定技術も装備。顔が複数写っていたり、顔の一部が完全に画面外に出ている、笑っているなどという画像を自動的に検出して警告する。

同技術は2017年にNIST(米国立標準技術研究所)により世界最高水準と認定されていたが、現時点では当時に比べてさらにエラーが1/5に減少したという。

顔認証技術APIの特徴
認証用画像を自動的に品質チェックする

価格は、登録人数1人あたり5円、認証回数1回1円がベース。従業員200人、1人1日4回の認証回数、20営業日では17,000円になる。

同社では、物流業者のように両手が離せないような現場や、複数の拠点での入退管理、インターネット上でのなりすまし行為の防止などに利用できるとしている。

マスクをしていても認証が可能
勤怠状況を一覧で確認できる

顔認証技術の市場規模はグローバルで6,600億円。国内では310億円とされ、東京オリンピックをきっかけにオフィス・ビル等で倍増したという。

パナソニックは1992年より顔認証技術の研究を開始し、2008年にデジタルカメラ「LUMIX FX40」などに顔認証によるオートフォーカスを搭載。その後は監視カメラなどセキュリティ分野での採用が進んだ。

同社はこれまで、顔認証システムを空港の出入国管理や富士急ハイランドでの顔パス認証、ファミリーマートとの無人販売実証実験などを実施。自社のパナソニック浜離宮オフィスでも勤怠システムと連動した顔認証システムを導入している。

空港での入出国管理に利用
ファミリーマートとの無人販売実証実験も実施

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長(兼)イノベーションセンター 所長 江坂 忠晴氏は、今後の展開について「さらなる高速化、夜間、屋外対応などより高度な認証技術を提供したい。また、本人確認手続きの電子化「eKYC」が注目されており顔認証もその一つ。パートナー企業と連携してフィナンシャル事業にも進出したい」などと語った。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長(兼)イノベーションセンター 所長 江坂 忠晴氏(左)とマッチングエージェント 代表取締役社長 合田 武広氏

発表回には12月より本人認証の一つとして顔認証技術APIを導入するマッチングアプリ「タップル」を運営する株式会社マッチングエージェント 代表取締役社長 合田 武広氏も出席した。

タップルは、趣味をきっかけに出会いを広げるマッチングアプリで、20代~30代の利用者が多いという。本人確認をさらに強化することで安全性を強化することが導入の狙い。

マッチングアプリ「タップル」

現状では、ユーザートラブルによる通報のうち、なりすましや複数アカウントによる嫌がらせが全体の10%を締めるという。タップルはこれまで本人確認は年齢確認のみだったが、顔認証の導入によって0%を目指す。

なりすまし等による嫌がらせが全体の10%